使えば人生を変えるかもしれない、誰もがもっている「透明なチケット」
今日は、日経新聞連動企画「入社後いきなりテレワーク」というテーマに関連して、新人を取り巻く人間関係について書いてみたいと思います。
リモートは、部署の雰囲気が掴みにくい
企画のテーマ通り、今年の新人は入社後いきなりテレワーク。そんな今年の新人たちは「リモートネーティブ」と呼ばれているそうです。
私が新人の時の最初の仕事は職場にかかってくる電話の当番でしたが、今年の新人の最初の仕事はオンライン会議の設定、などでしょうか。時代の変化を感じます。
ところで、今振り返ればですが、電話当番は単なる雑用ではなく、新人が職場の雰囲気を掴む効果があったような気がしています。電話口で「○○社広報部の△△と申しますが、□□さんいますか?」と言われ、□□さんが誰だか分からずに必死に探して繋ぐ。そんなことを繰り返しているうちに、同じ部署の先輩方の顔と名前や、どんな会社のどんな仕事をしているのかが、少しずつわかっていったものです。
今はスマホがあるので職場に電話がかかる事はだいぶ減りましたし、リモート勤務を導入している私の部署にはそもそも人がいません。ですので、電話の取次はもちろん、みんなで行くランチや、ふとした会話もありません。新人が同じ職場の先輩方の人柄や仕事内容に触れる機会は、例年に比べて少なそうです。
それがすぐに大きな問題にはなりませんが、意識的に接点を持たないと、同じ部署なのに周りの先輩が何しているかほとんど分からない、という状況になってしまいそうです。
特に、広告会社のようなアイデアを考える仕事にとっては、誰がどんな仕事をしているのかを知っていることはとても重要です。「あの先輩はあの雑誌の編集長と仲が良い」「イベントについてすごく詳しいのはあの先輩」といった情報に、私自身も何度も救われてきました。職場内の「情報アンテナ」を作りにくいのが、今年の新人を取り巻く現実だと思います。
大学1年生に伝えたかった、気軽に相談する権利
では、もしも自分が上司だったら、新人にどんな声をかけるだろうか。そんなことを考えいた時に、ふと思い出した言葉があります。それは、私が以前、大学の同窓会で副会長をつとめていたときに、あるイベントで現役の大学1年生に送った言葉です。
当時、私は同窓会副会長として、大学1年生向けにキャリアに関するイベントを主催していました。1年生ですから、バリバリの就職活動イベントではなく、社会人の先輩たちと話してみよう!という気軽なイベントです。そのオープニングトークで私が話したのが「皆さんは、透明なチケットを持っている」という話でした。
同窓会の活動を続ける中で、いつももったいないなぁと思うことがありました。それは、就職活動のタイミングまで一度も卒業生と会う機会がない学生が多いことです。「来週エントリーシートの締め切りなんで、読んでください!」という出会いも決して悪くありません。しかし、その学生の「世の中を変える仕事がしたい。それができるのは広告会社だ」という想いの根本をよくよく聞いてみると、単純な情報不足による思い込みで、実は広告会社ではなかったかも・・・、なんてことが少なからずありました。とは言え、エントリーシートは来週締め切り。「もっと早くお会いしたかったです」と言われて、なんとも残念な気持ちになることが何度もありまました。
なので私は、何かに興味を持ったら、少なくとも同窓会に所属する卒業生は、1年生でも2年生でも、いつでも喜んで会うよ、ということを伝えたくて、次のような話をさせてもらいました。
「新人」の賞味期限はたった1年
私は、同じ話を新人にもしてあげたいな、と思います。
新人の1年間は、これから始まる長い社会人生活の中でも最も質問しやすい1年です。失敗が許される1年です。誰からも可愛がられる1年です。同じ部署のどんな先輩だって、違う部署の先輩だって、社長だって、会社を辞めて独立したあの有名人だって、新人が「ぜひお話聞きたいです」と真心を込めて丁寧に伝えれば、きっとむげに断らないはずです。そう、会社に入った瞬間に、誰もが透明なチケットを持っているのです。
それを使うかどうかは自分次第。でも、自分がチケットを持っていることを、覚えておいて欲しいのです。新人が真剣に仕事に向き合えば、必ずわからないことや困ったことが出てきます。その時に、誰かに少し聞けば瞬く間に解決することって、意外と多い気がします。1を聞いたら10返ってきて、解決以上のヒントがもらえることもあるでしょう。色々な人に素直に聞ける新人は、きっと成長も早いのではないかなと思います。
メールより電話で、電話よりZoomで、何度使っても色あせないそのチケットを、1年間使い倒してみてください。(ただし、質問するときは、最低限、ググったりはしてみてね)。私も、そんな新人の皆さんに「ちょっと相談があるんですけど」と気軽に連絡をもらえる先輩でありたいな、と思います。
ベテラン社員こそ、透明なチケットをつかうべき
最後に。そんな私や皆さんやベテラン社員には、透明なチケットはもう無いのでしょうか。そんなことはもちろんありません。期限も使用回数も制限がないチケットですから、今でもポケットに入っています。でも、そのチケットは自分より先輩にしか使えない、そんな思い込みがあるのかもしれません。本当は、後輩たちに、私たちが教えてもらうこともたくさんあるような気がしています。
先日、同じ会社のある後輩に、彼が行った講演会の評判がとても良く、またその内容が自分の仕事で必要だったので、恥を忍んで講演会の内容を教えてもらいたいと連絡しました。すると、普通なら送らないような講演会のスライドデータをそのまま送ってくれただけでなく、内容の細かい描写や事例など、本当に丁寧に教えてくれて、とても助けられました。
そもそも、なんで私は後輩に質問するのを恥ずかしいと思ったのでしょうか。それは、先輩の方が物知りでなくてはならない、という変なプライドからだと思います。しかし、実際には自分より若い世代の感覚や知識の方が、これからの未来を作るには大事に決まっています。私自身も、もっとチケットを使っていかないといけないな、と改めて感じました。
「情報アンテナ」が失われがちなリモート時代。新人達は、少し意識的に他の人たちに対して関わりを持つことが大事になりそうです。その時に思い出してほしいのが、新人だからこそ誰にでも気軽に声をかけてよい権利を持っている、ということです。「先輩方は忙しいかも」と尻込みしてしまうかもしれませんし、実際に忙しくて断られるかもしれません。ですので、時間をとってくれたらラッキーと、気軽な気持ちで挑戦してみてください。色々な人と話すことで生まれる情報アンテナは、いつか役にたつ時がきます。
※記事の内容の元となるアイデアをTwitterで投稿しています
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