入社15年目の私が大学院に通って良かった7つの理由と、その成果。
働きながら、大学院にも通っています。専門は経営学・マーケティングです。
そんな私の経歴を知ってか、「大学院に興味があるので話を聞きたい」という知り合い(社会人)の相談が増えています。
ニュースでも、社会人の学び直し(リカレント教育)としての大学院が注目を集めているようです。
私も、自分自身をアップデートする場として、大学院はとても良いと思っています。
そこで今日は、私がビジネスパーソンに大学院進学(特に、働きながら通う夜間ビジネススクール)をオススメする理由を紹介します。
自分が通っていた大学院の紹介
はじめに、私が通っていた大学院について簡単に紹介します。
私は、2017年に法政大学大学院 経営学研究科 マーケティングコースに入学し、2019年に修了。経営学修士(MBA)を取得しました(そしてそのまま博士課程に進みました)。
この学校の特徴は、卒業のために必ず全員「修士論文」を書くことです。
大学院によっては、学術論文ではなく「プロジェクトペーパー」と呼ばれる、論文よりもややカジュアルなレポートで卒業できるところもあります。
どちらが良いということはありませんが、私の通っていた大学院は修士論文が必須だったので、アカデミック色が強いのが特徴だと思います。
もちろん、講義もあります。マーケティングコースですので、マーケティングリサーチや製品開発などの授業を受けますが、その他にも組織論やファイナンスの授業なども受講可能です。
会社を定時で終えて急いで授業に向かうのは大変でしたが、自分のお金で学んでいるということもあって、どの授業もたくさんの刺激を受けました。
そんな大学院生活を振り返って、私が得られたものをご紹介します。
1.経験値が整理される
大学院では修士論文を書くために、大量の論文を読みます。私も、海外論文を中心に100本近くは読んだと思います。
そうすると、私が社会人15年間の中で「なんとなくこうだろうな」と感じている経験は大抵、過去に研究者によってフレーム化されていることがわかります。
そのような優れたフレームに出会うと、「そうそう、自分が思っていたのはそうことなんだよ!」と頭がすっきり整理されます。
例えば、有名な「マズローの欲求5段階説」というピラミッドをご存知の方も多いと思います。
私も、もともと知ってはいましたが、大学院の授業で英語の論文を読み、改めて1940年代にここまで心理が洞察されていてすごいな、と思いました(昔の英語なので読みにくかったけど・・・)。
人間の欲求は5段階に分かれており、低い次元が満たされると次の次元へと移っていく・・という説です。
みなさんも、このピラミッドの図を初めてみた時、「言われてみれば、そうかもしれない。自分が経験的に感じていたことがフレーム化されているな」と思った人も多いのではないでしょうか。
同じように、リーダーシップや、組織のあり方、消費者行動など、大学院ではたくさんの優れたフレームに出会います。
自分の仕事での経験が優れたフレームによってスッキリ整理ができるのは、大学院の面白いところです。
2.自分の知らなさ加減に驚く
同時に、「知らなかった!」と自分の無知を知る経験ができるのも、大学院の面白さです。
例えば、先ほど紹介した「マズローの欲求5段階説」は、その後の研究者による検証で、学術的には正確なものではないという結論が出ています。
しかし、その事実は意外と知られていません。私自身、プレゼンで「人間の欲求は5段階あるのである」とドヤ顔で話していた自分が恥ずかしいな、と思うわけです。
とはいえ、マズローの研究が無意味だったわけではありません。研究が広がるきっかけとなった重要な最初の「説」だったという事実は変わりません。
むしろ、その後の研究結果を知らなかった自分の知らなさ加減に驚く、そんな体験が大学院ではできるのです。
3.初めての経験に必死になる楽しさ
長く働いていると、仕事の勘所が掴めてきます。
新しい仕事の概要を聞いた瞬間に、「ああ、それならあの時の経験が使えるな」「あの人に頼めば大丈夫そうだな」など、先が読めてくるようになります。
ところが、大学院で取り組む学術的な論文は、全く書いたことがないし、なんなら読んだことも無い。しかも、書き方に独特な作法があって、簡単には書けません(少なくとも私には難しかったです)。
過去の経験が通用しない新しい経験をするのは、結構楽しいものです。
スポーツでもなんでもそうですが、大人になってから新しいことを始めると、必死になるので、細胞が活性化する気がします。
4.世界とつながる
指導教官にもよりますが、私の先生は「論文は基本的に英語のものを読む」という方針でした。
というのも、私が研究対象としている「ユーザー・イノベーション」という分野は、主に海外で研究が進んでいるからです。
また、年に1回、ユーザー・イノベーションの研究者達が集まる国際学会にも参加しました。
1回目はアメリカ・ニューヨーク大学。都会のど真ん中のかっこいいキャンパスでした。
2回目はオランダのユトレヒト大学。歴史ある美しい街並みで、学会でもなければなかなか来ない場所でした。
世界の研究者と、論文を通じて対話したり、学会で実際に会って話せる。
そんな経験も、大学院の一つの醍醐味かもしれません。
▲国際学会で、がんばって英語でプレゼンしているところ
5.論理的に考える力
会社で作る資料やプレゼンは、発表者のセンスや経験、熱い想いがその成果を左右します。
一方で、学術的な論文は、個人のセンスや経験もさることながら、過去の研究や調査データに裏付けされた事実を元に、論理的に組み立てていく力が求められます。
例えば、「高級ブランドを買うときに、フリマアプリで売ることを前提に考えている若者が増えている」という話を論文に書きたいとします。
そのためには・・
● 高級ブランドの買い物に関する過去の研究(10,000件ぐらいありそう)
● CtoC(個人間取引)に関する過去の研究(最近増えていそう)
に関する英語の論文をたくさん読んだ上で、
●どこまでが、既に分かっているのか
●どこが、まだ分かっていないのか
を整理した上で、
●なので、自分はこれを調べます
と、研究テーマを導きだします。
私の体感では、論文を書く時間の半分ぐらいは、この「過去の研究の整理」に使われます。
このように、自分が調べたいことに関する過去の研究を整理して、理論的にストーリーを作る力が鍛えられるのです。
6.批判される経験
しかし、そんな簡単に理論的なストーリーは描けません。
無理やりこじつけたストーリーをゼミで発表すると、指導教官や先輩から容赦無く批判されます。
人格ではなく、あくまで自分が書いてきた内容に対する批判なのですが、それでも結構ショックを受けます。
私も「結論が全然面白く無い」とか「話の流れが矛盾している」と言われたことも数知れず。
会社で長く働いているとダメ出しされる機会も減ってきますので、悲しい反面、嬉しい緊張感を感じることができます。
7.新しい人たちとの出会い
最後の、そして最大の価値は、出会いです。
例えば、大学院の同級生達や、研究室の先輩・後輩。
年齢も職業もバラバラですが、論文執筆に苦しんだ「同じ釜の飯を食った仲間」として、今でも仲良くしています。
指導教官の先生や、研究者の方々。
私の指導教官は、私と同じく元々は企業で働いていました。ですので、先生からは、研究と実務
を行き来する大切さを教えてもらいました。
研究者のみなさんとも、企業で働く岡田ではなく、研究者としての岡田として、話せるようになってきました。
会社を変えずに、転職を経験できる、とも言えるのかもしれません
コンフォートゾーンから出る
自分を成長させるには、コンフォートゾーン(快適な環境)から出るのが重要だ、と言われます。
今振り返ると、私にとって大学院は、まさにコンフォートゾーンを出るための第一歩でした。
とはいえ、まだまだこれが第一歩。
この旅がどこにつながっているのかわかりませんが、これからも研究と実務を行き来しながら、新しい価値を作り出していきたいと思います。
※Twitterでも、大学院や学会に関する投稿もたまにしています。
記事が面白いと思ったら、「スキ」(❤️)をお願いします!ログインしていなくても「スキ」を押すことができます。