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入社15年目の私が大学院に通って良かった7つの理由と、その成果。

働きながら、大学院にも通っています。専門は経営学・マーケティングです。

そんな私の経歴を知ってか、「大学院に興味があるので話を聞きたい」という知り合い(社会人)の相談が増えています。

ニュースでも、社会人の学び直し(リカレント教育)としての大学院が注目を集めているようです。

新型コロナの影響で勤務先の業績が悪化したり業務が変わったりして、不安を覚えた社会人は少なくない。独立行政法人「労働政策研究・研修機構」が8月、民間企業で働く約4千人に実施した調査では4割が「雇用や収入に影響があった」と回答。(中略)

ビジネススクールなどを運営する「グロービス」(東京・千代田)は9月1日時点で動画学習サービスを受講する会員数が14万人を超え、5万9千人だった2月からほぼ倍増した。20代の利用者が増えたほか、従来多かった営業に加えて労務や販売など幅広い職種の会社員が受講し始めた。

私も、自分自身をアップデートする場として、大学院はとても良いと思っています。

そこで今日は、私がビジネスパーソンに大学院進学(特に、働きながら通う夜間ビジネススクール)をオススメする理由を紹介します。

自分が通っていた大学院の紹介

はじめに、私が通っていた大学院について簡単に紹介します。

私は、2017年に法政大学大学院 経営学研究科 マーケティングコースに入学し、2019年に修了。経営学修士(MBA)を取得しました(そしてそのまま博士課程に進みました)。

この学校の特徴は、卒業のために必ず全員「修士論文」を書くことです。

大学院によっては、学術論文ではなく「プロジェクトペーパー」と呼ばれる、論文よりもややカジュアルなレポートで卒業できるところもあります。

どちらが良いということはありませんが、私の通っていた大学院は修士論文が必須だったので、アカデミック色が強いのが特徴だと思います。

もちろん、講義もあります。マーケティングコースですので、マーケティングリサーチや製品開発などの授業を受けますが、その他にも組織論やファイナンスの授業なども受講可能です。

会社を定時で終えて急いで授業に向かうのは大変でしたが、自分のお金で学んでいるということもあって、どの授業もたくさんの刺激を受けました。

そんな大学院生活を振り返って、私が得られたものをご紹介します。

1.経験値が整理される

大学院では修士論文を書くために、大量の論文を読みます。私も、海外論文を中心に100本近くは読んだと思います。

そうすると、私が社会人15年間の中で「なんとなくこうだろうな」と感じている経験は大抵、過去に研究者によってフレーム化されていることがわかります。

そのような優れたフレームに出会うと、「そうそう、自分が思っていたのはそうことなんだよ!」と頭がすっきり整理されます。

例えば、有名な「マズローの欲求5段階説」というピラミッドをご存知の方も多いと思います。

私も、もともと知ってはいましたが、大学院の授業で英語の論文を読み、改めて1940年代にここまで心理が洞察されていてすごいな、と思いました(昔の英語なので読みにくかったけど・・・)。

人間の欲求は5段階に分かれており、低い次元が満たされると次の次元へと移っていく・・という説です。

プレゼンテーション1

みなさんも、このピラミッドの図を初めてみた時、「言われてみれば、そうかもしれない。自分が経験的に感じていたことがフレーム化されているな」と思った人も多いのではないでしょうか。

同じように、リーダーシップや、組織のあり方、消費者行動など、大学院ではたくさんの優れたフレームに出会います。

自分の仕事での経験が優れたフレームによってスッキリ整理ができるのは、大学院の面白いところです。


2.自分の知らなさ加減に驚く

同時に、「知らなかった!」と自分の無知を知る経験ができるのも、大学院の面白さです。

例えば、先ほど紹介した「マズローの欲求5段階説」は、その後の研究者による検証で、学術的には正確なものではないという結論が出ています。

しかし、その事実は意外と知られていません。私自身、プレゼンで「人間の欲求は5段階あるのである」とドヤ顔で話していた自分が恥ずかしいな、と思うわけです。

とはいえ、マズローの研究が無意味だったわけではありません。研究が広がるきっかけとなった重要な最初の「説」だったという事実は変わりません。

むしろ、その後の研究結果を知らなかった自分の知らなさ加減に驚く、そんな体験が大学院ではできるのです。


3.初めての経験に必死になる楽しさ

長く働いていると、仕事の勘所が掴めてきます。

新しい仕事の概要を聞いた瞬間に、「ああ、それならあの時の経験が使えるな」「あの人に頼めば大丈夫そうだな」など、先が読めてくるようになります。

ところが、大学院で取り組む学術的な論文は、全く書いたことがないし、なんなら読んだことも無い。しかも、書き方に独特な作法があって、簡単には書けません(少なくとも私には難しかったです)。

過去の経験が通用しない新しい経験をするのは、結構楽しいものです。

スポーツでもなんでもそうですが、大人になってから新しいことを始めると、必死になるので、細胞が活性化する気がします。

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4.世界とつながる

指導教官にもよりますが、私の先生は「論文は基本的に英語のものを読む」という方針でした。

というのも、私が研究対象としている「ユーザー・イノベーション」という分野は、主に海外で研究が進んでいるからです。

また、年に1回、ユーザー・イノベーションの研究者達が集まる国際学会にも参加しました。

1回目はアメリカ・ニューヨーク大学。都会のど真ん中のかっこいいキャンパスでした。

2回目はオランダのユトレヒト大学。歴史ある美しい街並みで、学会でもなければなかなか来ない場所でした。

世界の研究者と、論文を通じて対話したり、学会で実際に会って話せる。

そんな経験も、大学院の一つの醍醐味かもしれません。

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▲国際学会で、がんばって英語でプレゼンしているところ


5.論理的に考える力

会社で作る資料やプレゼンは、発表者のセンスや経験、熱い想いがその成果を左右します。

一方で、学術的な論文は、個人のセンスや経験もさることながら、過去の研究や調査データに裏付けされた事実を元に、論理的に組み立てていく力が求められます。

例えば、「高級ブランドを買うときに、フリマアプリで売ることを前提に考えている若者が増えている」という話を論文に書きたいとします。

そのためには・・

● 高級ブランドの買い物に関する過去の研究(10,000件ぐらいありそう)
● CtoC(個人間取引)に関する過去の研究(最近増えていそう)

に関する英語の論文をたくさん読んだ上で、

●どこまでが、既に分かっているのか
●どこが、まだ分かっていないのか

を整理した上で、

●なので、自分はこれを調べます

と、研究テーマを導きだします。

私の体感では、論文を書く時間の半分ぐらいは、この「過去の研究の整理」に使われます。

このように、自分が調べたいことに関する過去の研究を整理して、理論的にストーリーを作る力が鍛えられるのです。


6.批判される経験

しかし、そんな簡単に理論的なストーリーは描けません。

無理やりこじつけたストーリーをゼミで発表すると、指導教官や先輩から容赦無く批判されます。

人格ではなく、あくまで自分が書いてきた内容に対する批判なのですが、それでも結構ショックを受けます。

私も「結論が全然面白く無い」とか「話の流れが矛盾している」と言われたことも数知れず。

会社で長く働いているとダメ出しされる機会も減ってきますので、悲しい反面、嬉しい緊張感を感じることができます。


7.新しい人たちとの出会い

最後の、そして最大の価値は、出会いです。

例えば、大学院の同級生達や、研究室の先輩・後輩。
年齢も職業もバラバラですが、論文執筆に苦しんだ「同じ釜の飯を食った仲間」として、今でも仲良くしています。

指導教官の先生や、研究者の方々。

私の指導教官は、私と同じく元々は企業で働いていました。ですので、先生からは、研究と実務
を行き来する大切さを教えてもらいました。

研究者のみなさんとも、企業で働く岡田ではなく、研究者としての岡田として、話せるようになってきました。

会社を変えずに、転職を経験できる、とも言えるのかもしれません

コンフォートゾーンから出る

自分を成長させるには、コンフォートゾーン(快適な環境)から出るのが重要だ、と言われます。

今振り返ると、私にとって大学院は、まさにコンフォートゾーンを出るための第一歩でした。

とはいえ、まだまだこれが第一歩。

この旅がどこにつながっているのかわかりませんが、これからも研究と実務を行き来しながら、新しい価値を作り出していきたいと思います。

※Twitterでも、大学院や学会に関する投稿もたまにしています。


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