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映画感想『すずめの戸締り』

ネットフリックスにて配信されていたので見てみました。

ネタバレ気にせず。


日本縦断物語でしたね。行く先々での出会いがテンポよく、温かく描かれていて、ロードトリップものとして楽しんでいる自分がいました。人の暖かさというか、まだまだ人の世も捨てたもんじゃないぞ、という気持ちがしてきて、もしこのロードトリップが劣悪なものだったならば、ミミズに地球ごと踏みつぶされていいとさえ思ったかもしれません。
中でも、どうせ皆言っているのでしょうが、芹沢さんよかったですね。何か裏がありそうでない、ただの良い人でした。あの人がいたおかげで、話は進むし、移動も進むし、作品がコミカルになってくるしで、芹沢さんなしでこの物語は成り立たなかったでしょう。有能すぎる人物です。

さて、肝心の扉の方の話ですが、オブラートに包むことなく東日本大震災でしたね。地震の描写や、打ち上げられた船があったり、3.11という数字まで出ていて、あからさまでした。これらを見て、当然思う今作のテーマは、東日本大震災の記憶を忘れないことと、前を向いて歩き出そう、ということですかね。すすめもまた、未来の自分、つまり今を生きている人々によって助けられたように、この映画を観た僕たちが、今も尚苦しんでいる被災者の方々の支えになろう、というような、前向きなメッセージでしょうか。

しかし、あまりに限定的すぎる気もしました。災害というテーマで作品を作ってもよかったと思います。そちらの方が、観客が自分にとっての災害を考えます。あからさまに東日本大震災を全面に出し過ぎて、観客が考える余白を残していないことは、この作品が、ということではなく、創作物全てに関わる問題として僕は考えているのですが、ドキュメンタリーでいいではないかと思ってしまいます。いやドキュメンタリーの方がむしろ、正確で、伝えたいことがはっきりとしています。実際この映画では、東日本大震災で苦しんでいる当事者たちのことにはほぼ触れませんし(すずめやすずめの母はそうなのですかね?)、あくまでエンタメの、大衆娯楽の作品として登場しています。
極端な見方なのはわかっていますが、東日本大震災はエンタメ要素なのか、とも捉えられかねない扱い方だと、思ってしまう自分がいます。

単純にエンタメ作品を楽しむことのノイズになっていないのか、あるいは、テーマを感じ取ろうとしている人にとっては、エンタメ性こそがノイズになっていないのか……どういう見方をすればいいのか、少し迷う瞬間もありました。

本編には直接的に関わってはこないけれども、明らかに東日本大震災の要素を各所に散りばめた本当の意図が、ぜひ知りたいものです。まぁもちろん、今作はすずめの内的な物語ではあるため、潜在意識に震災があるから、という理由で納得できそうでもありますが。


さて、この前天気の子を観たのですが、今作の方が、全員声があっていたような気がしますね。すぐに作品の中に入り込めましたし、それからやっぱり明るい天気は美しいですね。空の色とか、木々の緑とか、とても美しく描かれていました。

最後にまた芹沢さんの話になってしまうのですが、歌謡曲ドライブ、いいですよねぇ。


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