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(再会万歳)傷跡②

あらすじ
友人と久々に再会したはいいものの、8キロも散歩するのはやはり嫌だ

1 主犯は誰だ

僕たちは線路沿いを歩いていました。家までは役8キロの道のりです。

やっていることが無意味で馬鹿なことだと最も痛感するのは、隣を電車が通過する時です。今までの散歩は、一応終電がなくなったという体で開催されることが多く、サイコパスもまた、いかに終電を逃させて散歩に誘うかにやっけになっていました。

しかし最早その前提は崩れ、電車がまだ走っているのに僕たちは歩いているのです。

意味不明です。

僕たちは絶えず主犯は誰かという犯人探しを始めました。となると、真っ先に容疑をかけられるのはサイコパスです。
確かに、今回のサイコパスは普段とは違い、散歩から逆算して遊びを企ていた明らかな言動はありません。
しかし、と僕とデブは主張します。

ついに、サイコパスの存在自体が、散歩を誘発するものになっているのではないか。

例えば、武道を極めた者は強者のオーラが出ると言いますし、魔性の女はフェロモンが出ていると表現されたりもします。そんな奴らと同じように、散歩をしすぎた愚か者からは、人々を散歩に縛りつける魔力が滲み出るのです。

僕とデブは、サイコパスの反対意見を受け流し、主犯をサイコパスとしました。

2 ラーメン

大体3分の2くらい歩いたところで小休憩を挟みました。流石に休憩なしで8キロを歩けるほど、僕たちは体力があるわけでも若いわけでもありません。

僕は辛い豚骨ラーメンを頼みました

深夜のラーメンの破壊力たるや、言うまでもなく最高ですよね。

といっても、デブはラーメンを食べにきたのか水を飲みのきたのかわからないくらいに水をガブ飲みしていました。それはもう、水に金を払った方がいいだろ、と思う程に。

3 犯罪者

デブは暑がっていました。それはデブだから新陳代謝が激しいという理由だけでなく、彼がここ数ヶ月を、北の大地の生ぬるい快適な涼しさの中で過ごしてきたからでした。

完全に暑さに対するしぶとさを失い、暑い暑いと連呼する情けない男に成り下がっていました。

それだけならまだしも、彼は少しでも暑さを和らげようと、トップスの袖を限界までめくり、ズボンの裾も太ももが現れるくらいに巻き上げ始めたのです。

これはもう、犯罪です。

別に鍛えているわけではないおじさんの生足ほど見ていてげんなりするものはありません。今すぐ露出狂として警察に送り出して射殺してもらおうかと本気で考えた程です。

本人は少し涼しくなったとヘラヘラしていましたが、歩いている道がもし人が多い繁華街だったら、僕とサイコパスは確実にデブから距離を置いて無関係を装っていたでしょう。

やっぱりこう人間というのは環境に対応する生物なので、寒いところから暑いところに行った場合はそこに対応するのは自然なのでしょうか、対応の結果この時のデブのようにおぞましいモンスターが生まれるのなら、対応能力なんてものは人類にとっていらないものだったと言わざるを得ませんね。

さて、なんだかんだ言っても僕たちは伊達に散歩を毎度しているわけではないので、3分の2くらいまでは正直元気でした。

が、残り3分の1が死ぬほど長いのです。

続く


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