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映画感想『ベイビーわるきゅーれ』


殺し屋という存在に対して、普通の人間ではないという印象を持っています。
なにせ、同じ種族を殺すことを、恨みとか怒りではなく、仕事としてやっている人たちですから、そして人を殺すことは現代の価値観においてやってはいけないことですから、それでもやっている人は、普通の人では務まらないと思うんです。
というわけで、僕は想像するわけです。殺し屋には、殺さなければならない事情があるのだ。殺し屋には、銃を撃つことがやめられない一緒病的な生まれつきの性があるのだ。なんて。

この映画は、いやいや、殺し屋だって普通の職業ですよ、普通の人ですよ、という主張を全面的に押し出して作られている気がして、僕の殺し屋のイメージに沿わない方面から攻撃を仕掛けられ、かなり楽しめました。
普通の生活が展開されるので、殺し屋の女子高生二人は、普通に寝て起きて、ゲームをして、バイトに行ったり、バイトをやめたり、殺しの仕事をしたりします。あまりにも自然に淡々と殺しの仕事に行くのは、僕があまりにも自然に学校や仕事に行くのと同じです。が、やっぱり見ていく中で、「殺し」のインパクトが日常においては異質で、大きくて、目立ちます。そう思った時には既に、見入っていて、作品の虜になっています。

ここまで日常の中に普通に殺し屋を落とし込んだことがまず驚きで、次に、殺し屋の仕事が日常にあるからこそ際立つ殺しの異質さが映画の面白みに直結しているのが、魔法のようだ、という感覚です。

キャラクター造形も、製作陣の手腕が光っていましたね。他の作品にいそうなんだけど、いないキャラ。いたとしても今作の方が魅力的に映るキャラばかりでした。主人公の二人は言うまでもなく、自然でしたね。殺しをやるぞという意気込みが感じられず、毎日を楽しく生きたり、自分の将来を考えること、ゲームをすることの方に興味関心がある演技が、とても癖になります。ダラダラした態度が逆にかっこいいのは最早ずるいです。

また、登場時間は短いですが、ラバーガールの二人がいい味を出していました。序盤にこいつらが出てくるせいで、作品の温度感が、シュール路線に半分決まりかけたくらいに、二人の影響力が強かったと思います。この映画の最も肝となる鍵がこの二人の存在だったかもわかりません。

敵も、ヤクザのボスと戦う展開に見せかけて、中盤で殺してしまう荒い展開。明らかに強そうな雰囲気を醸し出させておいて、一瞬でぶち殺される敵。など、定石通りにはいかせないぞ、という捻くれ心があって、素敵でした。僕はそういう捻くれ心が好きなんです。

続編も出たらしいですね。観ます。
3作目も決まっているらしいですね。こちらもぜひ観たいです。

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