なぜ人々はフェイクニュース・陰謀論に騙されるのか

新型コロナウイルスが蔓延し始めると、どこからともなく、「裏で政府やビルゲイツが悪だくみしている」との噂が出てきた。

ワクチンは、日本政府の人口削減政策だと信じ込んでいる人もいる。

ロシアの侵攻も裏があるとか、安倍元首相の銃撃が自作自演だと噂する人がいる。

こうした陰謀論を信じ込む人は言います。
「どうして嘘だと言い切れるんだ。裏で何かが行われていたら、表に話は出てこないし、メディアも専門家も買収されているかもしれないだろ」

たしかに、もっともらしく聞こえるかもしれません。

ところが大きな欠陥として、陰謀論を唱える人ほど根拠を持たず、主観的であり、そして、世界がシンプルだと誤解しているという側面があります。

たとえば、陰謀論者は、政府を、多数の人たちが集まっている機関ではなく、一人の人間のように錯覚して、簡単にあれこれ悪さをするとよく考えます。

しかし、世界は、残念ながら非常に複雑です。


陰謀論には特徴があります。
1つには、誰にでも理解しやすい「わかりやすい話」を広めること。
わかりやすい話は、簡単に大勢の人の関心を引くことができます。そして、簡単に「裏の真実」を知ったような気分になれるわけです。
その人たちにとって、新型コロナウイルスについて知るためには、RNAやセントラルドグマ、統計学について学ぶ必要はなくなります。コロナが政府の陰謀だから、という一言で理解をしたと錯覚できるからです。

政府がさも一人の悪者で、いつも悪巧みをして簡単に何でもできると誤解すると、著名な疫学の専門家の集団の意見に基づいた公的機関ではなく、疫学については何も知らないユーチューバーの意見をうのみにしてしまいます。
すでにそうした人たちは少なからずおり、非常に懸念されます。

しかし、現実は、それほどシンプルではありません。百歩譲って、どうすれば政府がそれほどの悪事をはたらくことができるか、その方法を考えてみるといいかもしれません。
もしあなたが政府の中枢にいる一人で、邪悪な計画を思いついたとします。その計画は、人工で致死的なウイルスをばら撒くとか、致死的なワクチンを全国民に打たせるといったものです。
それを実行するためには、膨大な人数の協力者が必要となります。ナノテクノロジーに精通した実績のある生物工学研究員、財政を管轄する数多くの職員、設備の充実した研究所を所持する団体の人たち…。
様々な研究にまつわるあらゆる分野の専門家が必要で、動物実験や人間での臨床実験までを踏まえて、それらすべてにかかる膨大な支出を捻出して、誰にもバレないように研究を終える。
そして最終的には、世界中の疫学の研究者に徹底的に調べられても問題のないように取り計らう。

はたして、そんなことが可能でしょうか。膨大な数の人たち全員に協力を強制し、口止めをするわけです。
そもそも、それほどの手間暇をかけてまでも実行するメリットは何でしょうか。

嘘を見破るために

陰謀論・フェイクニュースは、身近なものであり、ものによっては真偽の判断が難しいケースもあります。
そのため、最後に、嘘に引っかからないための2つの指針を共有します。

①「わかりやすい話」には細心の注意を払う
②公的機関の情報を参照する

以上を念頭に置けば、いくら印象的で引き付けられる話を耳にしたとしても簡単に鵜吞みにすることはなくなります。
情報過多の時代。せっかくなら、情報を味方につけたいものです。




【筆者の詳細について】

―加藤将馬:著者、講演家、幸福学&ビッグヒストリー研究家

・加藤将馬のウェブサイトはこちら

【著書の紹介】

宇宙と人類、138億年ものがたり ―ビッグヒストリーで語る 宇宙のはじまりから人間の未来―

紙の書籍:1260円→電子書籍版:0円(変更の可能性あり)


本書は、宇宙と人類の歩みを考察する一冊です。
「宇宙が生まれた頃はどのような姿だったのか?」「なぜ19万年間も狩りをしていた人間は、今では宇宙進出を始めているのか?」「気候変動やAIなど、これからの人間社会はどうなってしまうのか?」といった大きな問いについて説明します。
 そして、本書の最大のテーマは、「人間は文明を発達させて地球の覇者となったのにもかかわらず、なぜ世界には数多くの自殺者がいて、不幸が消えていないのか」というものです。
 138億年にわたる壮大な物語を堪能していただくと同時に、人間社会のあり方にまで思考を巡らせてもらうことを本書では目的としています。そして、私がなぜ本書を書き、ビッグヒストリーを通じて何を伝えたいのか。ぜひ、最後まで見届けていただけると幸いです。

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