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03_体験版 〝すがたをかえる大豆〟 手前みそ編

「おいしくなーれ、おいしくなーれ」
やさしく、激しく味噌団子を丸めている子どもたち。「うちの味噌」の話を聞かせてくれた地域の方々。「初めて味噌をつくりました」という先生。

神山町で食農教育を始めて7年目、ついに自分たちで育てた在来の大豆で味噌をつくる、という一つの夢が叶いました。うれしい光景。今回はその経緯や、3年生の国語科の教材「すがたをかえる大豆」について書いてみようと思います。

潰した大豆と 塩きり麹をよーく混ぜているところ。

今年、味噌づくりをすることになったのは、昨年度子どもたちが育てた「大豆」があったから。

年度も担任の先生も代わるなか「大豆」という生きた教材から学習が続いていくってとても素敵なことだと思います。「子どもたちが育てた大豆だから…(みんなで何かつくりたい)」と先生方がつぶやいていたのが印象的。改めて大豆を前に先生方と相談した結果、味噌づくりにチャレンジすることになりました。保護者でもあるチキータこと織田智佳さんが快くクッキングティーチャーを引き受けてくださったことは、とてもとても心強かった!

大豆を 「育てる、つくる、食べる、つなぐ」

主役は広野小学校の3年生2名、4年生5名、計7名の子どもたちと、担任の立石先生と久保先生。
強力な助っ人として織田さんと永野さん(保護者)、そして大豆の栽培でご協力いただいているファームティーチャーの門田さんに来ていただきました。当日の様子はNPOのInstagramに載せたのでそちらをご覧いただくとして。

今回の味噌づくりmemo

<用具>
・圧力鍋(3)…2kgの乾燥大豆を3分割して茹でました。
・ボウル/綿棒(人数分)…大豆を潰す用。
・樽(1)…10Lサイズ。
・厚手のビニル袋…作業時のシート。
他、ざる・大きなボウル・マッシャー・お玉など適宜。

<材料>
・乾燥大豆…2kg(昨年収穫し、保存しておいた神山大豆)
・白米麹…2kg(徳島市の自然農園マユコベさんから調達)
・海塩…1kg+α(最後に表面にかける用含む)

小学校で栽培している大豆は、ファームティーチャーの門田さんが毎年種をつないで栽培している在来の大豆です。神山で何十年も栽培されているので、わたしたちは「神山大豆」と呼んでいます。昨年は大豊作だったので学校内で種をつなぐこともできました。

昨年収穫して保存していた神山大豆(2kg)

種取りは時間も手間もかかるため離農とともに地域の種が失われているのが現状で、それは神山町だけの話ではありません。子どもたちが今すぐには理解できなくとも、自分たちで大豆を育て、食べ、翌年またその種をまく。その時間の流れを大豆への関わりを通して体感しているといいなと思うのです。

国語科 「すがたをかえる大豆」

恥ずかしながら、わたしが「枝豆と大豆が同じ種類の作物」だと知ったのは社会人になって2年目のときでした。自分の無知さにショックを受けた出来事だったのでよーく覚えています。子ども時代は田畑が遠い存在だったし、農業への興味も関心もまったくありませんでした。農業や山の木々、草花についてよく知る人たちが近くにいたにも関わらず。

「すがたをかえる大豆」は、光村図書の国語科(第3学年)に掲載されています。筆者の国分牧衛(まきえ)さんは子ども向けの執筆に積極的に関わってこられた思いをこんな風に話しています。

子どもに合わせた言葉や表現を選ぶのは大変です。しかし私はこれらの仕事に、強い危機意識を持って取り組んでいます。今の子どもたちの多くは食料の生産現場に触れることなく育っていて、スーパーに並んでいる食品を、どこかの工場で作られていると思っている場合も少なくありません。しかし加工食品も土や水、太陽などの力で育った作物が原料になっていますし、それらを栽培したり加工したりする人の働きがあって、はじめて私たちの口に入るのです。食べたものは私たちの体を作り、排出後も姿や形を変えながら地球の中で循環しています。日本の農業や地球環境が危機に直面している今、私は子どもたちに、こうしたことをぜひ知ってほしいのです。
「まなびのめ」研究者インタビュー/国分牧衛先生

すでに秋に収穫する神山大豆がすくすくと育っています。次はどんなことができるでしょう。その時々で子どもたちや先生方が「やってみたい!」と思ったことを近くでサポートできれば、とてもとてもうれしいです。そのための小さな種まきを続けていきます。

今年は1〜3年生が神山大豆を育てています(広野小学校)。
NPO法人まちの食農教育
2022年3月に母体であるフードハブ・プロジェクトの食農教育部門から独立。
毎年4月に学校へ出向いて先生たちに活動紹介をした後、希望される先生方と一緒に学年に応じた体験活動のプログラムをつくっています。

<参考> 

昨年 2021年度の大豆栽培の様子はこちら。

ちなみに、大豆栽培からの豆腐づくりは2017年度に実現しています(神領小学校)。この子たち、現在は中学2年生。

2019年度には小学生と高校生が一緒に豆腐づくりをしました。こちらは大豆の栽培があまりうまくいかなかったので、隣村のお豆腐職人さんに大豆を分けていただいて実施したプログラムでした。

授業のオープニングで流した「手前みそのうた」
味噌づくりの手順や分量がこの中に全部入っています!