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小さな工務店が取り組む理想の組織への挑戦④ 〜責任を負わない組織〜

令和3年4月15日晴れ

今日は私が代表を務めるつむぎ建築舎の工務部(社員大工たちとの)会議と勉強会でした。6年後の事業承継への取り組みを本格化させるにあたり、会議の仕切りをリーダー格のメンバーに譲り、私は建築技術的な面でのレクチャーを担当して、今回は建築設計における現場実務者の役割を改めて整理し、構造図のチェックを行う宿題を全員に課しました。施工図、詳細収まり図は大工が描くべきと言うのが私の持論で、設計段階で大工が関与するのが私たちのような大工工務店の価値の一つだと思っています。事業承継の取り組みでは経営の前にスキルの移転をまずは行ってしまいたいと思っています。今日は事業承継の準備の一環である、私が目指している組織論のまとめについて書き進めたいと思います。

理想の組織5つの条件
①組織の存在価値が認められ、自社独自の市場(マーケット)を持ち外部環境に左右されずに経営が持続できる。
②組織に在籍しているメンバーがやりがいと満足を感じそこで働くことが自己実現の場になっている。
③組織の存在目的がメンバー間で共有され、その実現のために全員一丸となって事業を行っている。
④管理命令型の属人的なリーダーシップで組織が成り立つのではなく、メンバー間での合意形成で組織が運営されていく。
⑤メンバーの成長と新陳代謝が滞りなく起こり世代を超えて事業が継続されていく。

管理命令、属人的リーダーシップからの脱却

理想の組織への挑戦というテーマでこれまで書き進めて来ました。今日は4番目の管理命令型の属人的なリーダーシップで成り立つ組織からの脱却と、企業は人なりの大原則に帰着すべくメンバー間での合意形成で組織が運営されていく為に必要なことについてまとめてみます。私は大工上がりの工務店創業者で、創業当初は今考えると穴があったら入りたいくらい恥ずかしい組織運営(とも言えない経営)をしていました。その頃はトップダウン型経営どころか、お山の大将的と言うか軍隊式に近いような独善的な運営を行なっており、多くの職人が入社しては次々と辞めていくのが日常で、去るものは追わず、とかカッコつけてましたが、実際は私の(無理を押し通す)やり方ついてこれない奴は切り捨てる非情な考え方がその根底にあった事は否めません。それは常に先が全く見えない不安と、いつ仕事が暇になって事業がダメになるかも知れないので、目の前の事を全力で行なって少しでも未来に備えたいとの想いからで、職人達の収入を確保してやりたいと、職人を抱えるお山の大将の責任を全うしなければならない義務感からでしたが、結果から見ると、守るべき者達を次々と切り捨てて来たわけで、本末転倒も甚だしい悪行の数々です。その当時、私から離れていった職人達には今も申し訳ないことをしたと負い目を感じています。
それから20年が経ち、私も自分の至らなさ、問題の多さに流石に気がつき、出来るだけ、ではありますが改善するように心掛けて来ました。現在、こんな私に何とかついて来てくれたメンバーには出来るだけ、いい環境で楽しくやりがいを持って働いてもらい、自己実現と他者貢献の場としての組織を皆で協力して作り上げ、持続可能な未来を担ってもらいたいと思っています。

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目指すのは責任を負わなくて良い組織

私が独善的とも言えるキツイリーダーシップを発揮し続けた原動力を一言で集約すると「責任」だと思っています。従業員、その家族、そして協力業者さんに安定した仕事を提供して彼らの暮らしを守らなければならない、ただその一点に意識を集中して、工事にまつわる品質や金額、そして工期など、顧客の信頼を得る事に執着し力ずくでも目標を達成しなければならないとそれ以外のことを切り捨てました。先日、初めて参加させていただいた「自然経営とは?」をテーマにしたダイアログで「責任」が話題にのぼり、自主性、主体性に任せた組織で責任はどうなるか?についての意見が交わされました。その際、参加者の一人の女性が、「責任というのは「威厳ある称号」だと思っていたけど、「精神的負債」だあることに気づいた。」と述べられており、全くその通りだとその当時のことを思い出してしまいました。ちなみに、私は責任とはWikipediaに書かれている「何かが起きた時、それに対して応答、対処する義務の事。」が最も自分の感覚に近いと思っていまて、義務とは精神的負債なのだと改めて気づかされました。私としては長年、押しつぶされそうなプレッシャーを感じながら責任というリーダーシップを取り続けてきた訳ですが、プライベートどころかそれは家庭を顧みることもなく、休みもなく24時間365日働き続ける結果になりました。もちろん、好きでやってきたので、後悔はありませんが、苦しい事も少なからずありました。そんな自分の経験則を鑑みて、事業承継と言う名の責任の押し付けは絶対にしたくないと思っていて、後継者を誰か一人に指名して引き継ぐのを躊躇した理由の一つでもあります。

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絶対的に安全な場

先日の自然経営のダイアログの中で組織の構成メンバーの意識変容によって組織が変容していく様を色分けした階層理論で、オレンジ組織(目標達成重視のよくある組織)では必須の「責任」という概念が、意識変容が進んだティール組織では消滅する、という前提条件が示されました。責任だけで組織を引っ張ってきた私にとっては言葉では理解できても腹落ちする所まではまだ行きつけていないのが正直な所なのですが、苦しい思いをしながら責任を全うする組織よりも、楽しく、自由に目指す貢献を果たす組織の方が素敵なのは当然ですし、出来ることならばスタッフにはそのような環境で働いてもらいたいと思います。もちろん、これば私のリーダーシップで実現するものではなく、私の考える組織の存在価値と在籍しているスタッフが思うそれをすり合わせ、お互いを尊重しながら実現したい世界観を共有する所から始まると思っています。同じ理想の世界観を持ち、主体性と自主性を発揮することで、目指す存在価値を生み出せる組織になれば最高です。
ここで必要なのは組織に関わるメンバーの意識の変容であり、それが組織自体の変容に繋がります。現在、株式会社四方継では、Anber(軍隊式)を脱してOrenge(目標達成型)からGreen(多元的)な組織へと移行しようと様々な取り組みを行っています。そこでまず、皆で手にいれるべきは事業所とそこでの人間関係を「絶対的安全な場」にする事だと思っています。これは、代表である私はもちろんですが、他のメンバーも実力やスキルに合わせて安全な場の提供をしたいと思ってくれる意識変容が起こり、そんなスタッフが増える事で時間をかけながらも実現していくのではないかと思っています。手前味噌で恐縮ですが、メンバーそれぞれ個性はありながらも良い人ばかりなので、コミュニケーションのあり方を少しずつ変える事で、進んでいくのではないかと期待しています。6年後の事業承継までに、安全な場で活発な話し合いが行われ、全員がその合意を尊重する組織になれば、安心してあとを任せることが出来ると思うのです。

◆四方良しの世界を作る株式会社四方継のHP:
https://sihoutugi.com
◆一般社団法人職人起業塾のオフィシャルサイト:
https://www.shokunin-kigyoujyuku.com
職人育成、人事制度改革についての相談はこちら→
https://www.shokunin-kigyoujyuku.com/application/contact/

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