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経営理念なんかいらんねん。は本当か?

昨日の深夜、とある現在社内制度絶賛改革中の若手経営者からメッセージが来ました。創立10周年を機に経営理念とミッションと行動指針を考え直したとのことで、どうですか?と意見を求められました。遅くまで頑張ってるなー。と関心しつつ、実は私、現在は経営理念なんか要らんねん派に属しておりまして、行動指針とか全く策定しておりません。コメントしづらい立ち位置なのですが、一生懸命考えられたのが伝わって来たので、「頑張ってますねー。熱い想いは伝わりましたよ。理念の見直しはスタッフさんの動機の再設定の絶好の機会なので、皆と共有出来るかをテーマに話し合ってみられるのをお勧めします。」と返しておきました。きっと、社員さん達と練り上げてシンプルでカッコいい理念を作られると思います。

経営理念至上主義の崩壊

数年前までは私も経営理念至上主義で事業の目的は理念の実現だと一点の曇りも無く信じ切っておりました。それが50歳を過ぎた頃から事業承継について考え始め、60歳には完全に経営から手を引こうと決めた時から組織論について学び直す必要を感じて、有名なU理論やティール組織やホラクラシー型、そしてベストセラーになったティールを超えると帯に書かれていた自然経営等を学び始めました。一昨年は東京での自然経営のコミュニティに参加しており、その際に一番初めに衝撃を受けたのが、講師の一人で最近は経営実践研究会のアドバイザーとしても懇意にしてもらっている武井さんが口にされた一言で「経営理念は必要ありません。」との言葉でした。その時の私の反応は「えっ、事業の目的はどうなるの?」とちょっとした混乱状態で、組織に対する理論構築が足元から崩れる感覚を覚えました。

自然経営

理念経営の強さ

そういえば、と思い出したのは、10年以上前にとある勉強会で一緒だった長崎県No. 1リフォーム会社の社長が「リフォーム屋に経営理念なんか要らんねん」と売り上げ利益至上主義で経営されていたことです。しかし、その経営者は非常に勉強熱心な方で、その後、理念経営に特化した研修コミュニティに入られて、全国的に有名になる位に熱心に学ばれ、理念構築後は即戦力の中途採用から理念の共有がしやすい新卒採用に踏みきって人材育成と社風の改革に取り組まれました。業績も順調に伸ばされて今では理念経営のトップランナーとしてつとに有名です。傍目に見ていた私はなんの為に事業を行うのか?との問いを立て、その答えである理念構築とその浸透こそが会社を強くするのだと確信を持ちましたし、自社でも毎年、目的こそ全てだと言い続けて来ました。ただ、俯瞰して考えると(良いとか悪いとかでは無く)経営理念を経営者が決めてトップダウンで浸透するのは会社の業績を上げる手法の一つと捉える事も出来ます。

理念と経営

誰の為の事業?誰の為の組織?

そんな私が組織論を改めて学び直して浮かんできたのは「事業は誰の事業か?」「組織は誰のための組織か?」との二つの問いです。要するに、事業所の本体は何処にあるのか?と考えた時、それまでは自分がゼロから起こした事業であり全ての決定を下してきましたが、事業を次世代に承継するフェーズに入った事でそれは持続性のない一時的なもので、私が事業の本体であっては継続することはない事に気が付きました。事業はそれを行うスタッフのものであり、それを必要としてくれる地域の人達のものであるべきで、組織は組織を構成する者達のものであり、私が独断で決めて進めるものではないと気が付きました。なので、経営者がこねくり回して策定し、押し付ける経営理念も行動指針も必要無く、もし作るなら組織を構成するスタッフ全員の共通言語としての価値観を表す程度で良いと腹に落ちました。

皆が良くなったらいいな

なので、私達が創業20周年を機に社名を変更してまで取り組んだ2年前のリブランディングでは徹底的にスタッフからどんな仕事をしたいか、どんな世界にして次世代に引き継いぎたいかを繰り返し聴き返し、それを集約して私達が目指す価値観を端的な言葉にまとめました。それが株式会社四方継の社名の由来になっている「四方良しの世界を実現する」との在り方です。ありきたりで、当たり前過ぎますが、スタッフの全員誰もが自分だけ良ければ良いとは思っておらず、一緒に働く仲間や取引先、地域の顧客や環境に対しても良い状態、良い関係を保ちたいと心から想って業務に向き合ってくれるだけで、他の細かな事はどーでも良くて、みんなが幸せになる道を選択する。と共通認識を持ってくれるだけで十分だと思いました。経営理念と言うほどのものではありませんし、行動指針など無くて、あるのは価値観と在り方だけです。

ある無しよりもプロセス

私の場合は結論として経営理念は必要無いし、行動指針やクレド、社訓なども策定するだけ時間の無駄だと思っていますが、決してそんな考え方を人に押し付けるつもりもありませんし、事業経営、組織づくりにおける正解だとも思っていません。それぞれの事業所には独自の文化がありますし、業種や業態によって目的や目標も変わります。ただ、上述したように、経営理念が従業員に強制的に行動を促すツールになってしまうのだけは避けるべきだと思っており、混迷を深めるこれからの時代を乗り越える為には組織を構成する全ての人に才能を発揮してもらう必要があると思います。経営理念を策定してもしなくても、事業所の存在意義についてスタッフと対話して理解を深め、受け入れるプロセスを大切にすれば、それ自体がきっと良い効果を生み出すと思うのです。
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タレンティズム(才能主義)に準拠した研修を行っています!

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