見出し画像

上半身を中心とした筋バランス不良に対して効果的なトレーニングはこれだ!

こんばんは。今日も訪れていただき、ありがとうございます!

今日は少しマニアックな話にはなりますが、上位交差症候群の話になります。
いわゆる、ヤンダ先生の提唱したマッスルインバランスの問題に関してのものになります。

この記事は、いつものような研究方法、結果にフォーカスしたものではなく、何をしたかというところにフォーカスしてみたいと思います。

トレーニング方法の一つとして、取り入れていただけたらと思います。


抄読論文


Seidi F, Bayattork M, et al.
Comprehensive corrective exercise program improves alignment, muscle activation and movement pattern of men with upper crossed syndrome: randomized controlled trial.
Sci Rep. 2020 Nov 26;10(1):20688.
PMID: 33244045; PubMed. DOI: 10.1038/s41598-020-77571-4.
包括的な矯正運動プログラムが上部交差症候群を持つ男性のアライメント、筋活動、および運動パターンを改善する:無作為化比較試験
Free access

【上位交差症候群は】

上位交差症候群(Upper Crossed Syndrome;UCS)は、異常な姿勢として特定されており、特に、首、体幹、肩甲骨の筋における特定の変化した筋活動パターンと運動パターン、姿勢の逸脱(肩の前方変移、脊柱の後彎など)が特徴とされています。
→ヤンダアプローチで有名なヤンダ先生が提唱した症候群で、同様に下肢帯を中心とした、下位交差症候群も存在します。

異常な姿勢を修正するために、セラピストは運動学、生理学的アプローチを行います。しかし、実践的な効果の証明は満たされていないことが多いです。

そこで、本研究では、UCSの姿勢の問題に焦点を当て、それを修正するための運動介入の結果を明らかにすることを目的としています。

【方法】

18歳から28歳のUCSを持つ24人の男性を対象としました。
UCSの基準には、肩甲骨の位置とリズム異常、角の胸椎後彎、頭部前方変移、肩の前方変移が含まれます。

ランダム化により、介入群、対照群が割り当てられました。

介入群は修正運動プログラム(Comprehensive Corrective Exercise Program;CCEP)を行いました。

アウトカムには、筋電図により僧帽筋(上部、中部、下部)、前鋸筋を測定した。
また、前方頭部角度(FHA)、前方肩角度(FSA)、胸椎後彎角(TKA)が測定された。
また、運動パターンとして、肩甲骨の異常(SDT)を測定した。

【結果】

○アライメント
 介入群でFHA、FSA、TKAがそれぞれ有意に改善した。
 つまり、上位交差症候群のアライメント異常が軽減した。
○筋活動
 介入群では、筋電図で測定した、僧帽筋、前鋸筋の収縮パターンが変化し、活性化する方向に見られた。
 また、各筋の相互作用を示す、収縮割合が改善された。
 つまり、過剰に働いていたところは軽減し、抑制されていた筋は活動的になった。
○運動パターン
 肩甲骨の異常の評価において介入群で改善が見られた。

【考察】

肩甲骨はUCSにおけるキーストーンとなっており、肩甲骨安定筋の活性化バランスが改善されることによって、UCSの改善が図れた。

CCEPの効果は、運動の認知的側面に重点を置くことによる、神経筋リハビリテーションの一形態として説明されています。
運動中の筋収縮に対する意識的な焦点と運動行動に対する認知の変容は適切な筋活動パターンを再学習する上で、重要な役割を果たす可能性があります。

【CCEPプログラム】


CCEPは上図のように、2週間の初期段階のエクササイズ、5週間の改善段階のエクササイズ、それ以降の維持段階のエクササイズに分かれています。
ここでは主に、初期段階と改善段階のエクササイズを紹介します。

エクササイズ1〜5が初期段階のエクササイズで、1から始めて、徐々に5への実施を広げていきます。

エクササイズ6〜13は改善段階のエクササイズで、これらも6から始めて、徐々に13まで移行していきます。

段階を追うごとに、一つずつやっていくのではなく、同時進行でエクササイズを積み重ねていく意識で行なっていきます。



初期段階のエクササイズは上記の2つになっており、肩甲骨の筋に認知的な焦点を当てていることが特徴で、被験者には肩甲骨の位置と動きを正常化するために、活動性の低い筋を等尺性に収縮させ、活動性の高い筋を弛緩させるように指示する。

初期段階での静的な状態で筋バランスを回復させた後、さまざまなトレーニングポジションで上肢の動きを追加していく。
これが改善期の目標となる。

これらの活動により、筋バランスを改善し、不安定化での安定化を図ることができる。

【どのように活用するか】

本研究は結果は明確すぎるほど良くなっている。
当然であるが、僧帽筋や前鋸筋を含めたエクササイズが展開されているため、そこに対して筋機能が向上するのは当たり前といえば当たり前である。

私もヤンダアプローチの信者であるため、気持ちはわかるが、この上位交差症候群という概念を改善するためのアプローチを研究として、当てはめたということには評価すべきである。

今回は筋電図を用いて主に表現している。
しかし、筋電図の結果から、筋バランスが整ったというには非常に難しい。今回の結果も解釈するのは非常に非常に難しい😅

それでもそれを形としてチャレンジしていることには評価に値するし、ヤンダアプローチの考えを知り、治療方法も具体的に示しているところには賞賛に値すると思う(上から目線ですいません…😅)

このプログラムは非常によく考えられており、実践に適応できるものと思われる。

ただ、ただ、ただ、気をつけなければならないのは、このプログラムを行なっている際には常に理学療法士が適切な筋活動が生じているかということをチェックしていかなければならない。
8週間のプログラムの間に、このチェックをしっかり行い、実行に移せることがわかったら、維持期としてセルフエクササイズのプログラムに移行すべきであろう。

ということは、エクササイズの形ではあるものの、理学療法士のスキルは大きく影響するプログラムであることは間違いない。

ヤンダアプローチはそこが難しく、概念化しにくいところではあるが、だからこそ面白いし、理学療法士の活躍する場面を作り出せる大きなチャンスでもあると思う。

今日はこんな感じで、少し熱くなってしまいましたが、長々と最後まで読んでいただきありがとうございました!


↓関連記事


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?