食育の「文系」「理系」
現在の食育には何となく「文系」イメージがあります。
「家族団らんの食事がよい」
「子どもには母親の手作り料理を 食べさせるべきだ」
「日本人なら国産のものを食べよう」
といった情緒的な側面があるからです。
実際には、
「家族団らん」といっても…
現代の社会で家族団らんは、なかなか難しくなってきています。
「母親の手作り」といっても…
そうした役割を母親(女性)に押しつけるのは古い考え方だ、という人が増えています。
「国産」といっても…
一般には国産の食べもののほうが値段が高く、口では国産を食べようと言いながら、安いものを買っている人が多いのも事実。
つまり食育で主張されることのなかには、情緒的な=非合理的なこともけっこうあります。
かといって、あっけらかんと
家族団らんは非現実的だ
家庭料理には価値がない
国産にこだわるのは無意味だ
とも言い切れません。
かくいう筆者も、自分の子どもには
「家族団らんは非現実的だ」
「家庭料理には価値がない」
「国産にこだわるのは無意味だ」
と考えるような合理一辺倒の大人にはなってほしくありません。
いずれにせよ、食育にはこうした情緒的な側面があるため、「文系」のイメージがあることは確かです。
「理系」の人はそんな食育に対して、あまり好意や関心を持たないかもしれません。
いっぽう、このところ「理系」の人が夢中になっている食の分野があります。
フードテックの分野です。
フードテックは
Food(食)
Technology(テクノロジー)の Tech
を組合せてできた造語。
「科学の知識や技術を食に応用する」という意味になります。
IT技術から生まれた調理ロボット
料理レシピを創造するAI
医学・生物学・栄養学などを応用した食事法
バイオテクノロジーを使った植物肉(代替肉)・昆虫食・培養肉
分子ガストロノミー(分子料理学)
などを指します。
食育総研に対しても、理系の人たちから「フードテックについて学びたい」という問合せが来るようになりました。
なのでフードテックの検定を初心者向けに作ってみました。
https://www.shokuikubz.com/food-tech-kentei/
グルメ系の雑誌でフードテックが特集されることもあります。
食の展示会のなかにもフードテックをテーマにしたものが登場しています。
スペインではフードテックの学校が設立されています。
フードテック花盛りという感じです。
「文系」的な食育と「理系」的なフードテックは、いまは別々の存在です。
敵対しているわけではないが、おたがい「対岸の火事」みたいになっています。
だがいつまでもそうではないでしょう。
日常生活にフードテックが入ってくると食育も変わるはず。
想像してみましょう。
調理ロボットが電子レンジの値段で買えるようになり、どこの家にもあるようになったら。
その調理ロボットが世界中の有名料理店の料理だけでなく、おばあちゃんの手作り料理をも再現してくれるようになったら。
その調理ロボットが細かな体調に応じた食事レシピを提案してくれるようになったら。
さらに、食品ロスを防ぐような料理も提供してくれるようになったら。
などなど。
そんなことになれば、食に対する考え方も大きく変わります。
食に対する考え方が変われば食育のありかたも変わってくるでしょう。
どう変わるかはまだ予測がつきませんが、文系と理系がうまく融合してくれるとよいなと思っています。
理系むきです。
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