湯(スープ)を考える。

台湾の湯(スープ)がとても好きです。薄味だけどしみじみ美味しいスープ。滞在中体調が崩れそうになったとき、何度助けられたかわかりません。

食事にスープというのは、とても大切な存在らしく、食堂などで頼まずにいると、必ず「湯呢!?(スープは!?)」と聞かれるほど。食事中にお茶を飲む習慣のない国(もっとも、持ち込んだドリンク類を飲みながら食べる人も多いのですが)ですから、スープが水分補給の役割を果たしているのかなとか、あるいは、料理の油を熱いスープで洗い流すのかなとか、自分の経験と想像で考えを巡らしたりしているのですが、とにかくとても美味しくて、旅行者である私にとっても欠かせないのが湯(スープ)。

日本にも汁物はありますが、何が違うのかなぁというのは、私の大きなテーマになっています。日本の汁物と比べると、塩は極めて控えめ。なのにドカンとインパクトのある美味しさ。舌で味わうというより、身体全体で受け止めるような迫力があるのです。

背景にあるのは、おそらくは中医学、日本でいう漢方の「煎じ薬」の存在ではないかなと考えています。食材(あるいは薬材)の有効成分をすべて煮出して摂取しようというのが煎じ薬。スープに溶け込んでいるのは、ですからなるほど、「旨味」のみにあらず、「丸ごと全部」。そう考えれば、身体にダイレクトに響く美味しさというのも納得できる気がします。

日本の汁物が「出汁」と「具材」の出合い物として構成されるのに大して、食物そのもの、その全体をまるごといただこうという煎じ薬、あるいは「羹(あつもの)」という概念を土台とする「湯」。
例えば薬膳的な目的でいただくスープの場合だと、塩を入れない、あるいは入れるとしても食べる直前で、調理の最中には加えない、という方法が見られます。塩が入ると有効成分の抽出が阻害されるからという理由なのですが、それもまた、一般的なスープの塩味の薄さに繋がる背景なのかなと考えられそうです。
奥深い湯(スープ)の世界。
この滋味深さを日常に取り込むべく、研究と解釈を「美味しく」続ける毎日です。

※私の活動のベースから、「台湾の」と書きますが、中華圏あるいは地理的歴史的に近い文化圏もグラデーション的に含むのは大前提です。

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