『しくじり漫画先生に学ぶ、正しい第2ラウンドの戦い方』①
「王道」で戦うな!
「面白いものを描ければ、それで良いという訳ではない。」という事実は、本当に衝撃でした。だけど、私が気づいていなかっただけで、この年齢になると、もうそんなフェーズは、とうに過ぎ去ってしまっていたんです。
私の20年もの“漫画空白期間”が、ここに来て仇になるとは思ってもいませんでした。
「何歳でも遅いなんてことはない」
「夢を叶えるのに年齢なんて関係ない」
巷に溢れたそんな気休めの言葉たちが、空しく頭をループし続けました。 もうどうしたって、その20年間の空白の時間を埋めることはできないのです。
「もしあの頃デビューできていれば、私の漫画たちは日の目を見ることができていたの?」
「あの頃に戻ることはできないの?」
どうしても取り返せない時間。 悔しくて悲しくて、どうしようもないけれど、だけど、そこにしがみついていてもしょうがない。
その年月の違う経験を、遠回りした時間を、どうにか武器に持ち替えて戦うしか、私たちにはないんです。
私も含め、第2ラウンド中の漫画家夢追い人たちって、みんなある一定のレベルの作品を描くことはできるんですよね。
長年描いてきたから絵も上手だし、お話の作り方、魅せ方もうまい。
だけど、キャリアを積んでいる同年代の作家たちに比べたら、純粋に「漫画の上手い下手い」で比べれば当然勝てる訳もなく、かと言って、駆け出しの若い作家たちのような伸びしろもない。そして、実績なんかすっ飛ばすくらいの、めちゃくちゃクオリティの高い作品を描ける訳でもない。(だから第2ラウンドに突入している訳で…)
そんな、言ってしまえば中途半端な私たちが、正面突破で大手出版社という大型船に乗れるチャンスはとても低いと思います。もうそこは、経験と実績を積んだキャリア組と、新しい感性と高い技術を持った新人たちでいっぱいなんです。
もちろん、可能性は0ではないし、実際、私と同じような年齢でデビューし、大手出版社で活躍している方も多くいらっしゃるようです。
もしかしたら、私が知らないだけで、やりようによっては全然可能性はあるのかもしれません。
ただ、「大手出版社」「メジャーな雑誌」に囚われてしまうと、自分で自分の可能性を狭めてしまうことになると思うのです。
それこそ0か100か、みたいな。
もし別の媒体であれば、活躍の場があるかもしれないのです。
なのに、場所を自分で決めつけることで可能性を消してしまうのであれば、本当に勿体ない。
「場所」は目的ではないはず。
じゃあ、私たちはどうすれば、この先も大好きな漫画を描き続けていけるのか?
その時、私は、最近出会ったとある漫画家さんの話を思い出しました。
彼は、商業誌ではなく、インターネットの無料漫画サイト上に作品を連載し、それで生計を立てているそうです。
聞くと、彼の漫画家仲間たちも、それぞれSNSや同人誌、さらには海外へ向けて作品を発信したりして、収入を得ているのだとか。
なかには、一旦は商業誌で活躍していたものの、原稿料に対しての実務量があまりに釣り合わず、活動の場をアンダーグラウンドに変更した人も居るそうです。
つまり、メジャーな雑誌で活動するよりも、一般的にはマイナーとされる世界の方で、高い収入を得ている人たちが沢山居るのです。
彼曰く、「毎月、自分に400円を支払ってくれるファンが1000人居れば、40万の収入でしょ?充分それで生計が立てられるんだよ」とのこと。
確かに、母数が数万、数十万人もある必要はなくて、つまり、漫画で収入を得るのが目的であるのなら、メジャーにこだわる必要は全くない訳です。
彼は言います。
さて、これは私の話ですが、これまでずっとアンダーグラウンドを走ってきた訳で(走らざるを得なかった…?)、なのに、今さらメジャーな人たちと同じ土俵に立とうとする必要が本当にあったのでしょうか?
「漫画を描き続けられればそれで良い」口ではそう言いながら、正直、「今、本気で追いかけなかったら、かつて憧れた場所にはもう届かないかもしれない。」という焦りがありました。
メジャーなところで活躍することが出来れば、自分がやってきた過去が全て、報われる気がしたのです。
だけど、私が漫画を描くのは、過去の雪辱を晴らす為ではないのです。
そして、長年アンダーグラウンドの世界に居たからこそ得たもの、私にしか描けない表現があるはずで、それが活かされるのは必ずしもメジャーな場所ではないのです。
こだわりを捨てさえすれば、今の時代、やりようはいくらでもありそうです。
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