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第21回 東京大学制作展 レポート vol,01

第21回 東京大学制作展 レポート vol,01
制作展テーマ「ああ言えば、こう言う。こう言えば、どう言う?」

会期日時  2019年11月14日(木)〜11月18日(月) 11-19時(入場無料)
場所 東京大学本郷キャンパス 工学部2号館 フォーラム+展示室+9階 92B
主催  東京大学大学院 情報学環・学際情報学府 

筆者は2017年から東京大学制作展に3年連続で作品を展示していた。今回、久しぶりに自分たちの作品を展示しない制作展にて次世代の可能性を感じながら作品に対しての感想をまとめ紹介する。
魅力あるメディアアート+インタラクションの作品があるので、お時間のある方は11月18日の会期までに是非足を運んで頂きたい。


・imaginary nature と呼吸感。

imaginary nature 

呼吸感。

どちらの作品も筧研究室の作品である。imaginary natureは左にある器の中に水の中にインクが浮いており、それを器の中にある箸を用いてかき混ぜると、右の水がプロジェクションされている器も同時に混ざるという水とインクとプロジェクションが融合された作品であった。
呼吸感。はテンセグリティ構造を用いて無機的な金属製の棒と紐が張力により引っ張り合いバランスを取っている。そして、有機的に揺らぎ、まるで無機物が生命体を持つ様に感じられる。
筧先生の研究室の作品には共通点があると解釈している。
「筧匂」と個人的に呼ばせて頂いているが、非生命体を揺らぎを付けること生命体に様に観せている。ほんの少しの光や動きが特徴である。それらが上手く混ざり合い作品全体に生命が宿り、まるで人工生命を感じられるのが筧先生の研究室の作品から感じられる。筧匂はこれからも様々な無機物に生命を宿すだろう。

・Sound Discovery

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音とVRが見事に融合したVR作品。
体験者はVR空間内で雨のシーンを体験する。その雨の空間内には位置により聞こえてくる雨の音が違う。自分が気に入った雨の音の場所にコントローラーを置き、なぜその雨の音が気に入ったのかを作者と議論し、最後に自分の雨のイメージに合う写真を選ぶのがこの作品である。
個人的に雨の日は作文力が上がる日なので窓辺からしとしとと感じる雨の感じが好きである。また、写真は窓辺に付いた水滴が好きなのでその写真を選びそこにシールを貼る。写真は20-30枚ほどあるが、体験者の方の雨のイメージがシールにより投票され可視化されているので、体験者の雨の嗜好がロードマッピングしているかの様に感じられた。


・心窓風景 ver.2



前回は縦に立て掛けられた作品だが、今回は天板を用いてテーブル式にした事で鑑賞者皆で手の形をシェアできるのが大きく変化したと感じた。自分たちで作った手の形に合わせて映像が下からプロジェクションされるのはなんとも美しい。中には2、3人で手の価値を星形に作る者もおり、ただ映像を形作るだけではなく、その場に居る鑑賞者と手の形を通じてインタラクションできるところが大きく進歩した。
心窓風景 ver.2は是非別な展示会にも出して欲しい力作です!

・もじーっ👀

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辞書に載ってない文字の意味を鑑賞者と一緒に辞典式に作り上げていく作品。
んがる とか”ん”から始まる言葉は、筆者の出身地である東北地方なら”んだか”とか”んだ”という口語があるので然程違和感は感じない。個人的に都会や地域によって感じ方が違うのだろうと感じた。”る”や”ぴ”など日常的に使用しない文字から考える文字もあり、日本語に複雑さの中に美しさを感じられた作品であった。


・スキンちっく


前、制作展にて展示されていた「えくす手」を連想させる作品。まるで自分の体がお化けやゾンビ化する様に感じるちょっと恐怖だけど楽しいVR体験です。
コントローラーで手の指までセンシングできる様になれば更にVR空間内で臨場感が湧くかもしれません。

参考作品 えくす手(小川奈美)


・analogVJ


今までピアノVRを制作していた作者が、デジタルから一気にアナログ思考に変換した作品。以前8mm映写機を展示していた作者とコラボし、映写機とオーバーヘッドプロジェクターを用いて色の付いた透過紙やコップや印刷された白黒シートを歯車の先端に付いたストッパーに挟み込み、それをプロジェクターを通じてプロジェクションする。室内にはクラブミュージックが流れ、ノリノリでダンスをしながら歯車を回すことによって自らVJ映像をコントロールできる。このシステムを用いることで、今までに無いダンスシーンが想像できると確信している。


・たんぽぽの綿毛たらしめること


息を吹きかけると影になった部分からたんぽぽの綿毛が飛び出す作品。前回はたんぽぽのゆらぎを鑑賞する作品であったが、綿毛が陰で登場しインタラクション性が向上した事で、よりたんぽぽ感が感じられる温かい作品であった。

・ikiiki


個人的に今回の制作展の中で好きな作品です。
天板の上にある風車に息を吹きかけると、床に置いてある風車が回るというシステム。この時は床の風車が全て回っていたが、クルクル回る大量の風車がなんとも美しいのだ。
個人的な事だが、作者が韓国出身との事で韓国で見た素敵なバラの作品に似ていると思った。2016年の冬にソウルを訪問したが、夜10時にソウル美術館の近くを通ると辺り一面に白いレプリカの薔薇が美術館の庭に広がっていたのだ。
この風車はその光景を思い出させてくれた。韓国の方の持っている美的センスはどこかで共通しているのかもしれない。

・距離の問い・時間の問い


制作展に訪問し始め9年目、そして作品展示3年関わったが、距離の問い・時間の問いほど何かを問いかけるのが強かった作品は今までに無い。むしろ、距離の問い・時間の問いほど強烈に考え込ませる作品はあっただろうか?

距離の問いは情報化グローバル社会に置いて世界の人々から「 」について説いたインタビューが6枚のディスプレイに並べられ、それぞてのインタビュー内容をじっくりと聞く作品であった。それぞれの国の方の意見を聞き、「 」とは何かを考えるが、勝手に平和を連想するものかと思ったが、空間の中にある「答え」の本を見つけ開いてみると謎は深まるばかりだ。
「 」は世界にとって大切なものなのに、その問い対しての答えは恐らく鑑賞者によって違うのかもしれない。

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時間の問いは1960年代後半に東京大学の中で勃発した安田講堂を占領した学生運動を、安田講堂の内側から撮影した映像を元に構成され、そして問いていた。
正直、筆者はその映像はあまりに悲惨で恐怖を感じ途中で鑑賞をやめた。それは大好きな東京大学での悲惨な出来事を見たく無いからだ。そこにある映像はまるで別世界だったのだ。
しかし、安田講堂から見える庭や建物は当時の映像と変化はなく、この出来事は現実だったことに気付かされる。
私にとってはその映像は別世界Another Worldであった。その昔にあった現実を信じたくない自分と、現在も変わらない現実が融合し、思考が混在した作品であった。

ここまで問いかける作品は制作展の中には今までなかった。鑑賞する際はじっくりと時間をかけて考え、そして答えの無い問いに自分自身を照らし合わせて頂きたい。


・Meltal


制作展で水が使用された作品が出るのは2年ぶり。Meltal
はディスプレイの表面に上から水を流し、水の流れによってディスプレイに映し出された映像が水により滲む作品であった。
印刷されたイラストが水により濡れて滲むが、それをディスプレイで行うのはとても美しい現象であった。水が流れた後mpディスプレイに映し出された映像が滲む様子は、ディスプレイの中にある微妙な色合いを醸し出し、まるでAIが滲みを生成したかの様に感じるくらい美しい現象であった。
しかし、案の定浸水しディスプレイが壊れる現象が起こったので防水ディスプレイで再チャレンジして欲しい。
個人的にはこの作品は街中にある人工的な滝や噴水にデジタル応用し、新感覚のデジタルサイネージが作り出せると期待している。

今回の制作展は夏休み毎週メンバーが自主的に集まり作品作りをしていたのもありクオリティが非常に高い。その反面、綺麗すぎる作品が多くなったのと個性を発揮している作品の二極化が進んだ印象があった。

以上作品紹介でした。vol,02 に続く

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