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東大女子率20%の壁をなぜ突破できないのか

「色んな国のトップの大学では男女比が5:5なのに、なんで日本トップの東京大学は女子が20%しかいないの?日本の女性はバカなの?」

私が大学時代に多国籍の大学生と一緒にお昼を食べていたときに聞かれた質問です。

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確かに、世界の大学ランキングのtop10と、アジア圏の東京大学よりランクが高い大学の女子率を並べて見てみると東大の女子率の低さが異様に目立ちます。

「違う、学力に男女差はない!ただ社会から寄せられる期待値の差が東京大学の女子率に表れているだけ!」
それが当時の私の答えでした。

でも、本当でしょうか?

2018年に医学部不正入試問題が発覚したからなのか、今まで公表されてこなかった東京大学の男女別の合格率が今年、確認できるようになりました。それを見るとなんと、女子の合格率の方が低かったのです*。

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*本来は数年分のデータを見て有意差があるかどうか確認する必要があるのですが、現状公開されているデータが2年分しかないのでこのデータを元に論じます。
https://juken.y-sapix.com/todai/todai-nyushi/
https://www.koukouseishinbun.jp/articles/-/6089
なお理三に限っては、医学部の不正入試問題を受けて男女の合格率の違いが検証されています。結果は過去6年の合格率は大差なし(男子の合格率/女子の合格率=1.03)でした。ただ、理三女子は東大女子全体の5%に満たないので、これだけでは東大全体で有意差がないとまでは断定できないです。

なんで合格率が低いことに驚いているかというと、元々私の頭の中ではこのような状態を想定していたからです。

”日本の男女の学力分布は同一。女子の方がより東大を受けるハードルが高いため、学力上位の上澄み層しか東京大学を受験しない。つまり、志願者は少なくても、志願者に占める合格率は男子の合格率より高い。”

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しかし、「女子の合格率の方が高いわけではない」ということは、上記の想定が覆り、下記二つの可能性が考えられます。
1. 男女の学力分布は等しく、東大を受ける学力に達している人数に男女差はない。ただ、実際に東大を受けられる/受けようと思う女性が少ない。
2. 男女の学力分布は等しくない。東大を受ける学力に達している女性が男性よりもそもそも少ない。

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もし仮説2. が正しいとなると、冒頭の、私が必死に留学生に反論した「日本人女性はバカじゃない、男女に学力差はない」という主張が、覆されてしまいます。(それはあまりにもショック)

では、疑惑の「高校三年生時点で、男女の学力分布は等しいのか、等しくないのか?」...これについては残念ながら、わかりませんでした。高校生向けに行われている学力テストの中で男女差に着目している調査結果が見つけられませんでした。(そういう情報あったら教えてください!)

ただし参照できそうな情報として、15歳時点での学力を調査するOECDのPISAがありました。結果としては、読解力:女子が20ポイント以上得意、数学力:男子が10ポイント程度得意、科学力:女子が若干得意。凸凹があるものの総合得点を取れば女子の方が学力が高いです。

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https://www.oecd-ilibrary.org//sites/f56f8c26-en/index.html?itemId=/content/component/f56f8c26-en#fig-II.7.3
Where All Students Can Succeed, OECD Publishing, Paris, https://doi.org/10.1787/f56f8c26-en.

少なくとも義務教育終了時点では、若干高い女子の学力。
大学受験生の学力 = [ポテンシャル] × [教育機会] × [期待値・モチベーション]
と仮定すると、[ポテンシャル]は同等だと見なすことができます。では[教育機会]と[期待値・モチベーション]の因子によって、高校三年間の間にどんな逆転現象が起きているのでしょうか?

教育機会に男女差がある説の検証

2020年の東京大学の合格者数のランキング(サイト1参照)から、トップ32校を抽出しました。この32校で東大合格者全体の50%を輩出しています。

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この32校の卒業生数から在籍生徒数の男女別に集計すると、男子6,234人、女子2,848人となりました(共学については、男女比は1:1と仮定)。つまりどういうことかというと、「東大合格者を多く輩出している高校は、男子校の比率が高い」、「とある親が『子どもを東大に入れたいから、東大合格者数の多いトップ32校のどこかに入れたい』と思ったら、息子の受け皿は6,234人分あるけど、娘の受け皿は2,848人分しかない(その差二倍以上!)」ということです。

日本の教育機会は男女間で平等と言えないのかもしれません。
日本で教育機会に男女差がある可能性については今まで考えを巡らしたことがなく、個人的には衝撃でした。

期待値・モチベーションに男女差がある説の検証

こちらが冒頭で私が留学生に力説したときに念頭にあった説です。これについては多様なエビデンスがあります。箇条書きにすると:

そもそも親が大学進学を期待する度合いが、娘よりも息子の方が高い。連動して本人の希望としても大学進学を希望する割合が女性より男性の方が高い。
大学への進学率は、女子48.2%、男子55.6%
男女共に低所得層において子供が進学せず就業する割合が高くなるが、とりわけ女子の教育機会が親の所得により大きな影響を受ける。(高等教育への公的支出が国際比較で小さいことも、この状況を助長していると考えられる)
男性は大学に行くと賃金が上がるが、女性は大学に行ってもあまり賃金が上がらない

大学への入り口の段階で教育格差や親からの期待値・投資で男女格差があることに加え、それらのハードルを乗り越えて無事大学を卒業できても女性は賃金面で男性と同じメリットを享受できない現実が浮かび上がってきます。

日本で女子教育が拡充しないのは、日本の女性が先進国の中で相対的に最低レベルの教育水準であり、男女間の賃金格差が発生してしまうということと、男女間の賃金格差が大きいために女性の勉強する意欲をそぎ落としてしまう、という鶏と卵の関係にある。
女子教育が世界を救うより

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入り口も出口も、気が重くなるほど課題は盛り沢山。でもそんな現実は直視して、できることから手を打ちたい。息子のポテンシャルも娘のポテンシャルもどっちも最大限に発揮できる機会が用意されている、そんな社会にしていきたいです。

問題だけ発見して打ち手がまだ浮かばないのが悲しいですが、取り急ぎ、一個人としては、一大卒女性として賃金を減らさない(仕事を続けることを諦めない)という形で統計上の数字に貢献し続けることを試みます。(あまりにささやかな貢献...)

良い打ち手が思い付く方のご意見はぜひお伺いしたいです。

マララさんのお父さんは、「どうやって娘を育てたか」と訊かれて、「娘の翼を折らないようにしてきた」と答えました。
平成31年度東京大学学部入学式 祝辞より

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