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「如月の精進料理」 2017年2月

2月の行事といえば、節分と初午。節分は本来各季節の始まりの日(立春・立夏・立秋・立冬)の前日のことですが、いつしか立春の前の日だけ行事が残りました。豆まきをされた方も多かったかと思います。初午は関東ではあまりなじみがないかもしれません。伏見稲荷神社の御祭神である宇迦御霊神が稲荷山に降り立った日が初午だったことから、各地の稲荷神社で初午祭りが行われるようになりました。鎌倉にも佐助稲荷神社で初午大祭がありますね。初午詣でをすると農家は五穀豊穣、商家は商売繁盛のご利益があるといわれ、やがて様々な祈願の対象ともなりました。
そんなことで、今月は初午にちなみ、稲荷寿司とそれに添えての細巻、会津の郷土料理で具たくさんのこづゆ、旬のジジューシーな大根を使ったステーキ、節分にちなみ大豆の吹寄、出始めの菜花をぴりりとわさびを効かせ、新海苔と和え物にいたしました。

1.稲荷寿司と細巻、2.こづゆ、3.大根ステーキ 豆肉味噌添え、4.大豆の吹寄、5.菜花と新海苔の山葵和え


1.稲荷寿司と細巻
年中食べられてはいますが、初午には欠かせないの行事食のお稲荷さん。せっかくなので関西風に作りました。関西では狐の耳型をしており、関東では俵型が主ですね。三温糖で味に深みを出しています。使用する油揚げは中身がふかふかしているもののほうが使いやすいですよ。ガリのレシピも載せました。市販のものは添加物も多いですのでぜひ手作りしてください。日持ちもいたします。

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<稲荷寿司>
材料:油揚げ各1枚、A煮汁:出汁1・1/2C、砂糖50g、三温糖10g、醤油大2・1/2、B追い:三温糖大2、味醂大1
米3C、水690CC、炒りゴマ大1、打ち酢:酢60CC、砂糖大1、塩小1

1)油揚げはまな板において、箸を上下に転がします。こうするとうまく開いてくれます。

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2)さらに1/2に切り、輪の一面を切って、3分ほどゆででしっかり油抜きし、水気を切って、出汁にいれ、煮立ってきたらAの砂糖を加え5分程度煮てから醤油を加えます。砂糖の分子が大きいので、こうして時間差で調味料を入れるのです。中火で落し蓋をして5分煮て、さらにBの調味料を加えたら、火加減を強め、1,2分で火を止め、そのままできれば一晩おきましょう。

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3)米は洗ってザルに上げ、すし飯なので普段より少なめの水分量を15%ましにして、浸水10分程度で炊きます。10分蒸らしの時間を置いたら飯台にあけ、打ち酢をし、炒りゴマを刻んで混ぜます。
4)寿司飯は40g程度に軽くまとめ、1に包み込み、油揚げは折込ます。

<細巻>
材料:干瓢10g、海苔@1/2枚、寿司飯@80g、煮汁出汁1/2C,砂糖大3、醤油大2,みりん大1

1)干瓢はよく洗ってから塩少々でもんで、10分そのまま置きます。

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2)熱湯に1を入れて10分茹で、必ず指などでちぎれるかどうか、確認して柔らかくなったら、鍋に調味した出汁をいれて干瓢を煮汁が半分程度になるまで煮、汁ごと置いておきます。

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3)1/2に切った海苔を巻きすにおき、その上に向こう1cm空けて寿司飯80gを置きます。
4)センターに干瓢をおき、巻いて、6等分にして、1/2本分を一人前とします。

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<がり>
材料:ショウガ60g、甘酢:酢1/4C、砂糖大1・1/2,塩小1/5

1)ショウガは皮をスプーンでむき、繊維に沿って薄切りにします。

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2)熱湯で5分ほどゆでたら熱いうちに調味料を合わせた甘酢に漬け込みます。新生姜なら、下茹ではいりません。


2.こづゆ
会津の郷土料理こづゆ。初めて食べたときの衝撃が忘れられず、なにかにつけて作っています。まず、具だくさんであること、野菜や干し貝柱などからの素晴らしい出汁が出ること、食材のバランスがよくヘルシーであること、なにより特筆すべきことは、冷めないようこづゆ専門のお椀があり、何杯でもアツアツをお代わりしてくださいという気持ちが込められた料理であることです。今回は精進なので干し貝柱は入りませんが、精進でも十分美味しくいただけます。季節によって入る食材は微妙に変わるのも楽しいんです。

材料:昆布出汁+椎茸漬け地4C、醤油大1・1/2、酒大1、塩小1/3
糸こんにゃく100g、干し椎茸3枚、人参50g、里芋4個、銀杏各7,8個、キクラゲ2枚、山菜適宜

1)干ししいたけを浸して一晩おいておきます。干し椎茸は5度で5時間が基本です。絶対にお湯などで戻さないこと。うまみ成分のグアニル酸が全然違ってきます。
2)きくらげは水かぬるま湯で戻し、さっとゆがいて食べやすい大きさに切っておきます。
3)人参は2mmくらいの厚さにスライスし、イチョウに切っておきます。
4)里芋は皮をむき、3mmくらいの厚さにスライスしておきます。大きなものは半月に切ってください。
5)糸こんにゃくはゆがいて、食べやすい長さに切っておきます。
6)山菜は茹でてアクをぬき、食べやすい大きさに切っておきます。塩漬けなら、水で塩をぬいてから使ってください。

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7)銀杏はからをむき、ゆでて薄皮をとって、縦1/2に切っておきます。

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8)出汁に人参と里芋を入れて火にかけ、小煮立ちしてきたらアクを引き、ゆでたきくらげ、糸こんにゃく、山菜を加えて調味し、豆麩を入れて1,2分煮て、盛り付けます。豆麩は福島のアンネナショップで購入できます。

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3.大根ステーキ 豆肉味噌添え
寒い時期の大根はとってもジューシーで美味しいですね。火を入れると辛味が甘味に変わります。この肉みそは大豆でできたお肉で作りました。作り置きしておくと便利ですよ。大根も薄めに切って先に下茹でしておくと調理時間が短くて済みますし、その分油の酸化も少ないです。

材料:大根@2cm、グルテンミート1缶(250g)、ごま油適宜、赤味噌大1,みりん大2,砂糖大1,醤油小1~2(グルテンミートの塩加減で調整)きざみ生姜少々、粉山椒適宜

1)大根は皮をむき、1cm程度の厚さに切って米のとぎ汁で10分程度ゆでて、水で洗っておきます。

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2)グルテンミートと生姜を鍋に入れ、火にかけて、調味し、肉味噌を作っておきます。グルテンミートには薄味が付いていますので、その味をみて、調味料は加減してください。缶詰のほか、乾燥タイプもあります。

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3)1の大根を拭いて、油を敷いたフライパンで両面こんがりと焼き、器に盛り付けたら肉味噌をそえて、粉山椒をふって召し上がってください。


4.大豆の吹寄
大豆の吹寄は、日本料理の定番中の定番。冷めても美味しく、ぜひ覚えていただきたい一品です。このレシピは私も師匠に教えていただいたときの日を昨日のことのように覚えています。大きさをそろえること、別々に煮るのがポイントです。

材料:大豆1・1/3C、重曹小1/2、昆布10cm
大豆と昆布の調味料:砂糖大7、淡口大2、味醂・酒各大1
人参150g、蓮根80g(酢水)、蒟蒻1/2枚
野菜の調味料:砂糖大7、淡口大1/2、醤油大1・1/2、味醂大1

1)大豆は洗って鍋に入れて、重曹をいれてたっぷりの水を張って一晩おきます。水の分量はゆでたら捨ててしまうので気にしなくて大丈夫です。
2)1の大豆を火にかけ沸騰したら弱火にしてやわらかくなるまで、刺し水をしつつゆでていきます。大体1時間はみてください。
3)2がやわらかくなったら、茹で汁をすて、新しい水を張ってゆがき、湯はすてます。このゆでる作業は重曹を抜くためのものです。
4)3に1cm四方に切った昆布を入れてひたひたの水をはり、煮ていきます。昆布が柔らかくなったら、砂糖を数回に分けて加え、数分置いてほかの調味料も入れてコトコトとほぼ煮汁がなくなるまで炊きます。

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5)人参、蒟蒻は1cm四方のさいの目に切って、蒟蒻だけゆがき、蓮根は皮をむいて銀杏きりにして酢水にさらして笊にあげておきます。
6)5を鍋に入れてひたひたの水で煮ていきます。途中あくがでたら取っておきましょう。

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7)野菜が柔らかくなったら、砂糖を数回にわけて入れて、数分置いてほかの調味料も加え、10分程度煮て火を止め、冷めたら大豆と昆布を加えて盛り付けます。

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5.菜花と新海苔の山葵和え 
出始めの菜花と新海苔でささっと作れる和え物です。彩りもよく、箸休めなどに良いですよ。菜花は茹ですぎに注意です。太い部分は切って先に湯に投入するといいかと思います。

材料:菜花1わ、塩少々、青さのり適宜、和え衣:出汁大1,醤油大1、ねり山葵小1弱

1)菜花は水に1時間つけて水上げしてからゆでて水にとり、色止めします。

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2)出汁と醤油、山葵をボールに入れて和え衣を作り、2~3cmに切った菜花と新海苔を入れて混ぜ合わせます。脱水してべちゃべちゃになるので、必ず食べる直前に和えてくださいね。

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レシピ&原稿:温石会 入江亮子
(北鎌倉たからの庭<旬を楽しむ精進料理> 2月の献立より)

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