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「葉月の精進料理」 2016年8月

立秋を過ぎてからがむしろ酷暑なので、八月はもっとも暦と違和感のある季節ですね。しかも最近の日本は真夏日の連続!亜熱帯かと思うようなスコールが頻発したり、台風で夏休みの計画がおじゃんになってしまった方もおいでかと思います。便利に走って、気がつけば地球温暖化やアレルギーなど、その代償をいろいろな形で背負うものですね。
たからの庭は途中から車が入れませんので、毎月15,6人分の食材と鍋釜をもって石段を登っていくのはなかなかしんどいのですが、たどりつけば、アスファルトの照り返しやエアコンの室外機の熱風とは無縁の心地よい風と草木が作ってくれた一杯の酸素で暑さを忘れます。そのご褒美があまりに素晴らしく、またありがたく来月も行くのが待ち遠しくて仕方ないのです。
さて、毎年8月は日本料理以外の精進料理をやっていますが、今年はビーガン風にしてみました。ビーガンとは完全菜食主義とでもいいましょうか...。ベジタリアンにはヨーグルトや蜂蜜くらいは食べているかたも多いですが、ビーガンは一切の動物性食品をとりません。でもニンニクなど、精進料理では御法度の部分はOKという、なかなか面白いですね。
今回はできる限り再現しましたが、白米だけは譲れずでした。なので、ビーガン"風"ということで...。

1.オリーブご飯、2.豆乳仕立てのヴィシソワーズ、3.グルテンミートのエスカベッシュ、4.ラタトウイユ、5.新丸十のクスクス和え


1.オリーブご飯
オリーブには悪玉コレステロールを減らすオレイン酸や老化防止に良いビタミンEが多く含まれています。バルなどではおつまみによく食べたりしますが、おうちではなぜかなかなか減らないってことないですか。そんな時にぜひこの炊き込みご飯を作ってみてください。ワインの〆飯なんかにもいいですよ。

材料:米3C、有機オリーブ(種抜き)塩漬け150g程度、野菜のスープストック720CC、オリーブオイル大2(好みで)

1)米はといでざるにあげておきます。
2)分量の野菜のスープストック(セロリや人参、玉葱などを塩少々でゆっくりと煮出したスープ)に1を15分程度浸し、沸騰するまで強火、その後中火で7分、さらに縦1/2にカットしたオリーブを加えて弱火にして3分、最後にまた強火に戻して10秒したら火を止め、10分蒸らします。

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3)10分たったら天地返しをしますが、その際好みでオリーブオイルを少々加えて召し上がってください。

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2.豆乳仕立てのヴィシソワーズ
ヴィシソワーズはジャガイモの冷製ポタージュ。誕生してからかれこれ100年です。この料理を考案したルイ・ディアさんも、まさか極東の島国、日本で豆乳で作られちゃうとは夢にも思っていなかったでしょうが、非常に後味が軽快で日本人好みの味です。なるべく粘りけのでないジャガイモでどうぞ。

材料:ジャガイモ3個(300g程度)、玉葱1/2個、オリーブオイル少々、野菜のスープストック2C、豆乳2C、塩小1、胡椒少々、万能ネギ1本

1)ジャガイモは薄くスライスし、ひたひたの水(分量外)で柔らかくなるまで煮ます。

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2)玉葱はスライスして、オリーブオイル少々で炒めて、1を加え、さらに野菜のスープストック(セロリや人参、玉葱などを塩少々でゆっくりと煮出したスープ)と豆乳を加え調味し一煮立ちさせます。豆乳は分離しやすいので気をつけてください。

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3)2をミキサーにかけ冷やして、食べるときに小口に切った万能ネギを散らします。

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3.グルテンミートのエスカベッシュ
グルテンミートは、小麦のグルテンから作った加工食品。乾燥のものを買っておけば、保存もきくし、いろいろと肉代わりに重宝しますよ。今回は地中海風の南蛮漬け、エスカベッシュにしました。食欲の落ちる夏には酸味がきいていて食欲増進になりますのでぴったりですよ。野菜もたくさんとれます。

材料:グルテンミート(乾燥)50g(つけ地:生姜・ニンニク少々、白ワイン・醤油各大2)、人参100g、玉葱1個、オリーブオイル適宜、生コリャンダー適宜
エスカベッシュ地:オリーブオイル・酢・白ワイン各1/4C、水25CC、アガベ小2、塩小1/3、クミン小1、胡椒適宜

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1)グルテンミートはぬるま湯で戻し、2度水を替えて軽く絞り、漬け地に10分つけます。

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2)玉葱はスライス、人参は千切りにしてオーリーブオイルで軽く炒め、そこにエスカベッシュの地の調味料を入れて一煮立ちさせます。

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3)1をしぼり、片栗粉をまぶしてあげます。

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4)2が熱いうちに3を加え、冷蔵庫で一晩寝かせます。熱いうちのほうが味が早くしみます。盛り付けて好みで生のコリャンダーをのせてください。

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4.ラタトウイユ
ラタトゥイユは、フランス南部の郷土料理で夏野菜の煮込み料理。煮るのでかさがへり、たくさん食べられていいですよね。ちょっと和風な隠し味にお味噌を入れました。煮てすぐにたべるより、少し置いてからの方が味がなじんで美味しいです。夏場の定番料理にしていただければと思います。

材料:茄子3本、ズッキーニ1本、パプリカ1個、玉葱1/2個、ニンニク1かけ、トマト2個、オリーブオイル大3程度、塩小1/2強、ローリエ1枚、味噌大1

1)茄子は1cmの輪切りにします。
2)ズッキーニは太いところは半月、ほかはそのまま1cmの輪切りにしておきます。
3)パプリカは1,2の大きさに合わせた乱切りにします。
4)玉葱は串切にしてから長さを1/2にします。

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5)ニンニクは皮をむいて薄くスライスしておきます。
6)トマトは軸だけ取って、くし切りにしておきます。
7)フライパンに油を敷き、ローリエを入れて2,3,4,1の順でそれぞれソテーし、バットにあけておきます。

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8)同じフライパンに油をたし、ニンニクを香りがでるまで炒め、先ほど炒めておいた野菜を入れ、さらにトマトを加え、中火で10分程度ふたをして煮て調味し、ふたを取ってさらに10分程度煮詰め、最後に味噌で味を調えます。

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5.新丸十(サツマイモ)のクスクス和え 
日本料理ではサツマイモのことを薩摩藩の紋にたとえて"丸十"といいます。8月になると新サツマイモが出始めますので、レモン煮にしたりされる方もいるかと思いますが、今回は甘いサツマイモに塩味をつけたクスクスの衣をまとわせ和え物にしてみました。クスクスは1mm程度の世界最小のパスタ。熱湯を注いだり、ゆでたりどちらでもあっという間に火が通り、クセもなく汁をよく吸うので、これからもっと日本でもクスクスの利用が増えて行くのではと思います。

材料:新丸十(200g程度)1本、クスクス1/2C、オリーブオイル大3程度、塩少々、アガベシロップ(好みで)

1)クスクスはボールに入れて熱湯をひたひたに注ぎ、ふたをして10分程度蒸らします。

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2)サツマイモは柔らかくなるまで蒸して皮付きのまま1cm角に切り、好みでアガベシロップ(リュウゼツランの樹液)で味を足します。

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3)1のクスクスにオリーブオイルを加えてほぐし、そこに2を入れて塩少々を加え味を調えます。

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レシピ&原稿:温石会 入江亮子
北鎌倉たからの庭<旬を楽しむ精進料理> 8月の献立より


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