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「文月の精進料理」 2017年7月

梅雨も明けきらぬうちから毎日うだる暑さで、7月ってこんなに暑かったかなーとアスファルトの照り返しに、室外機の熱風に、ばて気味で浄智寺の脇道を汗だくだくで上がって、やっとたからの庭に到着すれば、木陰は涼しく、よい風が吹く昭和な夏が待っていて、ほっといたします。どれだけ木々や土が、暑さから守ってくれていたのかとしみじみですね。

さて、夏のスタミナ食といえば鰻の蒲焼きですが、精進料理でも蒲焼き、ちゃんとございます。もちろん鰻ではなくて、豆腐をベースにしたものですが、本物と見まごうばかりのものです。"もどき"料理は精進料理の真骨頂!是非とも召し上がっていただきたく、今月のメインにしました。ほかには、食欲が落ちがちの時でも何杯でもお替わりしてしまう新生姜飯、青々しい冬瓜の汁、栄養価の高い長芋をたっぷり使った養老豆腐、ピーナッツバターで手軽に作れる和え物などをやりました。ぜひ毎日の献立の参考になさってください。


1.新生姜飯、2.冬瓜の吉野汁、3.蒲焼きもどき、4.養老豆腐、5.もやしと青梗菜の南京豆和え

1.新生姜飯
旬の新生姜をふんだんに使った炊き込みご飯です。正確には炊き込まず火を止めるや入れて余熱で生姜には火を通します。生姜は長く炊くと苦みなどが出やすいので、こんな風に炊きあがりで入れると香りも良くていいですよ。

材料:米3C、昆布出汁670cc、醤油大1・1/2、酒大2、塩少々、刻み新生姜大5

1)米は洗って笊に15分はあげておき、その後、調味料を入れて水加減し、さらに20分程度おいてから炊きます。

2)炊いている間に新生姜を刻みます。きれいに洗って泥などをおとし、皮付きのまま刻んでください。

3)ご飯がたきあがるやいなや刻んだ生姜を入れ、10分蒸してから天地返しをして、もりつけます。


2.冬瓜の吉野汁
冬瓜は、丸ごとなら冬までもつので冬瓜という名がついたそうです。固い蝋質の皮に守られていて、確かに日持ちはいいのですが、ひとたび切ってしまうと、中は水分が多いので3日と持ちません。カットしたものを買われたらすぐに調理してください。最近では三浦を中心に小ぶりの使い切りできる冬瓜が売られていて便利ですね。利尿効果もあり、水分の取り過ぎでむくみがちな夏に良い食材かと思います。
重曹を使って青々しく仕上げました。料理名の吉野汁の"吉野"とは葛(片栗粉でも)を使ってとろみがついた料理のことをいいます。奈良の吉野が葛の産地であることからつけられました。

材料:冬瓜各1個(4×3cm)、干椎茸4枚、卸生姜大1、重曹適宜
煮汁:椎茸の戻し汁+昆布だしで2C、塩小1弱、味醂大2、淡口醤油小1
吸い地:昆布出汁5C、淡口小2、塩小1弱、片栗粉大2(同量の水で割っておく)

1)冬瓜は皮を薄くむき、鹿の子に切れ目を入れて重曹を少しすり込ませ、米のとぎ汁で竹串が刺さるまで布巾蓋をしてで茹でます。だいたい15~20分くらいはかかります。そのあとは水にさらして、重曹臭さをぬいておきます。

2)干し椎茸は水で一晩戻しから、スライスしておきます。
3)さらしておいた冬瓜をを煮汁でゆっくり煮含めておきます。長く煮る必要はなく、数分煮たらあとはおいておけばOKです。味が含むのは冷めるときです。

4)吸い地をつくり、2)を入れてあたため、片栗粉でとろみをつけて、器に煮含めた冬瓜をもり、汁を張り、卸生姜を天盛りして召し上がってください。

3.蒲焼もどき
もどき料理の代表的な一品です。目をつぶって食せば、本当に蒲焼そのもの。いかに蒲焼きが甘辛いたれと粉山椒が味の中心になっているのかがわかります。牛蒡や干瓢をいれるレシピもありますが、今回は極力手間を省いた簡単バージョンです。

材料:木綿豆腐1・1/2丁、大和芋150g、海苔2枚、片栗粉大2~3、練り胡麻大2、塩少々
しし唐各1本、揚げ油適宜、粉山椒適宜
たれ:味醂・醤油・酒各大2、砂糖大1

1)豆腐はまな板などにはさみ、しっかり水切りをしておきます。
2)大和芋はすりおろします。豆腐の1/3の量が目安です。
3)豆腐を裏ごしし、そこに大和芋を加え、さらに片栗粉、練り胡麻、塩少々を入れ、よく混ぜ合わせます。緩ければ、片栗粉を適宜加えてください。フードプロセッサーなら豆腐は裏ごしせず、材料を全部入れてなめらかになるまでかけてください。

4)海苔1枚を3等分して3の生地を3~5mm程度の厚さに平らに伸ばし、フォークなどで鰻のようなすじをつけ、油で両面焼揚げます。

5)獅子唐はさっと洗ってしっかり水気をふいたら軸を切り、おや指で軽く穴をあけ、4と同じ油でさっと揚げます。

6)たれの材料を鍋に入れ、よく混ぜながら火にかけ、煮たってきたら4)をくぐらせ、5等分に切り分けます。

7)器に盛り付け、余ったたれを少しかけ、獅子唐を添え、粉山椒を振って召し上がってください。

4.養老豆腐(流し缶(中)1個分)
"養老"とは山芋を使った料理のことで、栄養価の高い山芋で長生きしてほしいという意味合いが込められています。ばて気味な夏にぜひ作ってください。ゼラチンを加えて、舌触りをなめらかにしました。

材料:おろし長芋360CC、寒天地:昆布出汁180CC、粉寒天2g、粉ゼラチン5g
旨出汁:出汁1/4C、味醂・醤油各大1
オクラ1本、本山葵適宜

1)粉寒天を昆布出汁で溶かし、沸騰後5分は煮詰めて、火を止めてからふやかしたゼラチンを入れて溶かします。

2)1の寒天地におろし長芋を加えよく混ぜたら、流し缶に入れて冷やし固めます。

3)オクラは塩づりして塩のついたまま茹でて、冷水にとって色止めしたら、縦1/2に切って種を取り除き、たたいておきます。面倒なら小口に切るだけでもけっこうです。

4)旨出汁の材料を鍋に入れ一煮立ちさせたら、冷ましておきます。
5)2)を器にあわせ6~8等分に切り分け、旨出汁をはり、天にオクラと本山葵を乗せます。


5.もやしと青梗菜の南京豆和え
身近などこにでも年中売っている野菜でも、和え衣を変えたりすることで季節感を出すことができます。今回はピーナッツのペーストを使いました。青味は青梗菜でなくても、絹さややインゲン、小松菜、法蓮草などでも美味しくできます。

材料:もやし1袋、青梗菜1把、塩少々、醤油少々
和え衣:ピーナッツバター(無糖)・砂糖各大1,味醂大1/2,醤油大1・1/2、酒小1

1)もやしは、洗ってさっと熱湯でゆで、ざるにあけ、塩少々をふっておきます。

2)青梗菜は5cm程度に切って、もやしと同様、さっと熱湯でゆで、ざるにとり、こちらには醤油少々をふっておきます。

3)和え衣の材料をボールに入れて混ぜたら、1/3ほど残して1と2とを和えて、盛り付けたら残っている衣を上から掛けます。こうすると味の強弱が出ます。またどちらの材料も水が出やすいので和えるときは、食べる直前に和えてください。

レシピ&原稿:温石会 入江亮子
(北鎌倉たからの庭<旬を楽しむ精進料理> 7月の献立より)


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