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地球建築家10-3 アルネ・ヤコブセン

ヤコブセンのやばいディテール

ヤコブセンのディデール(建築の細部)はもの凄い。

早速見ていただきたい。

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 (写真は「ヤコブセンの建築とデザイン/TOTO出版」から引用)

これはイギリス、オックスフォード、「セント・キャサリンズ・カレッジ」の大食堂である。

梁がガラスから突き出ててしまっている。

梁とは上部の床や屋根を支えるための水平の構造物である。

こんなことを日本でやろうとしたら、きっとゼネコンの現場監督は顔を青ざめてこう言うだろう。「雨がもったら誰が責任を取るんですか」、「ガラスが割れて人が怪我をしたらどうするんですか」。

確かにその通りである。なにかをやるには必ず責任が伴うのだ。

こんなことをやる彼の勇気と、周りを説得する人間力に脱帽である。

梁を突き出した理由は色々あったとは思うが、一番の理由はやはり外観がかっこよくなるからだろう。その結果生まれた立面がこれである。

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 (写真は「ヤコブセンの建築とデザイン/TOTO出版」から引用)

このディテールは建物全体に貫かれている。

建築デザインは「統一性」が重要である。統一性のあるデザインはスカッと心地良く、胸に響いてくる。

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優れたディテールとは、その建物がどんな「人格」や「性格」であるかをよく表している。ディテールと、建物全体が互いに及ぼしあっているのだ。

どちらが欠けても成立しない、表裏一体の関係なのである。

もしもこのディテールがなかったら、この建物は全くの別ものになっていただろう。

少しわかりづらい説明になってしまったが、この梁を見るとそのことが少しばかりご理解頂けるのではないだろうか。

しかし、ディテールにちまちまとこだわることが、世の中にどれだけ役に立っているかと考える人がほとんどだと思う。

しかし、役に立つものばかりが全てではない。それに、私たちは「役に立つものこそ最高」という思考に毒されているように感じる。

今、コクヨの100円のメモ帳よりもモレスキンの2000円のメモ帳の方が売れているように「役立つもの」から「意味のあるもの」に価値観がシフトしているようだ。

文明が成熟期に入ると、人々は精神の充足を求めはじめるのである。

最近の若い人達が車を買うよりも、楽しい体験にお金を払うのを見ていると、それも頷ける。

きっと、ヤコブセンの建築は再び注目を浴びるに違いない。


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