ずっと出世させてなんぼ
本当の仕事の成果とは
人生100年時代ともいわれる今。
大部分の人がこれからも「仕事」をしていくことは間違いないだろう。
ならば、少しばかり「仕事の成果」について考えてみるのもいいのではないだろうか。
仕事の成果は仕事の結果のみで判断されてしまいがちである。
仕事の結果とは、その「仕事自体」がどう評価されたかである。
私は現在、建築設計を生業としている。当たり前だが、図面を描き、お施主様に納得して頂き、工務店に橋渡しし、工事が問題なく行われるよう監理し、お施主様にお引き渡しして、アフターメンテナンスをすることが仕事である。
これらを確実に行えばお施主様に文句をいわれることはない。それに、雑誌に載るような仕事をすれば、設計事務所としてはこれ以上の成果はないだろう。
しかしである。それだけで「満足いく仕事の成果」といえるだろうか。
例えば、歯科クリニックの設計の依頼を受けたとする。
誰もが入りたいと思うようなカッコいいクリニックを設計し、お施主様にも喜んで頂き、雑誌にも掲載された。一見なんの問題もないように見える。
しかし、本当に重要なのはその後なのである。
一番の仕事の成果とは、そのクリニックがこれでもかというほど繁盛することである。そして、さらにその歯科医師が出世し、継続的に売り上げを伸ばし、2号店、3号店を出店するまでになることである。
では、お施主様を出世させる仕事とは、どのうように行えばよいのか。
その方法を論理的に説明するのは容易ではない。実際にこんな間取りで、これくらいの広さで、こんな外観でと具体的な形で説明するのは困難である。
しかし、これだけはいえるのではないだろうか。
「遠い将来まで想像力を働かせた仕事をしなくてはならない」
建築設計はいってみれば「箱をつくるだけ」の仕事である。
その箱をつくる仕事でお客様を出世させるとは、なかなか難解な大技である。
しかし、人間に与えられた想像力という偉大な力を最大限に利用し、お客様の遠い将来まで見据えた仕事をすることは可能であると思う。
それは結局「長い時間愛され、使われる建築を設計する」ということに集約されると私は考えている。
長い時間愛され使われる建築は、完成した当初だけではなく、継続的に人を呼ぶ。その結果、お施主様の継続的な出世につながるという訳である。
困難ではあるが理想は高く。
でないと仕事は面白くならない。