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これからの建築とロマネスクの光

果たして歴史は、本当の意味で、進歩・発展しているのだろうか


ロマネスク建築が好きだ。

ロマネスク建築は、地味で大人しい。大きな窓はないし、中はこれでもかというほど暗い。しかし、心の奥底に訴えてくる。とても身近に感じる。

ヨーロッパを旅した時、一つのロマネスク建築と出会った。

イタリアはフィレンツェの「サン・ミニアート・アル・モンテ教会堂」。1018〜62年頃、初期キリスト教時代の箱型のバシリカ式教会堂だ。

冒頭はその地下室の写真である。

そこには無口だが心に染み入ってくる光があった。1000年以上もの時間、この場所で、物言わず、ただ見つけてもらえるのを待っているようだった。


ロマネスクとは、ゴシックの一つ前の時期の様式である。

ロマネスク建築とゴシック建築は「民家」と「高層ビル」に置き換えることができると思う。

ゴシック建築は、とにかく高く明るい。現代の高層ビルと似ている。

ゴシック建築は12世紀の中頃、建築の中心舞台が都市へと移った時代の建築である。記憶に新しい屋根が消失したパリ大聖堂(ノートルダム寺院)に代表されるように、圧倒的な高さを誇る。そして大きな窓とステンドグラスが特徴で光に満ちている。今にも天に昇っていきそうだ。

対して、ロマネスク建築は、小さくて暗い。ひと昔前の民家に似ている。

ロマネスク建築は、地域に根ざした建築だ。その土地で採れた材料、その土地の伝統に基づく意匠など、土着的な色が濃い。私は、初めてフランスの「ル・トルネ修道院」を観た時、日本の民家と同じ印象を受けた。何か、地面から生えているような感覚だった。


今、日本の都市も建築も変わらなくてはならない。

高層ビルからロマネスク建築に戻れと言うつもりはない。

しかし、果たして建築は1000年という、気の遠くなるような時間を経て、本当の意味で進化してきたのだろうかと疑問に思ってしまう。

ロマネスク建築は心に染み入ってくる魅力があり、ゴシック建築は崇高な魅力がある。

しかし、日本の民家は魅力的だが、高層ビルは胸が詰まってしまう。

ロマネスク→ゴシックも民家→高層ビルも、同じ技術進歩による建築の変化のはずなのだが、なぜか高層ビルだけが魅力的とは言い難い。

現代という時代はやはり、何かを置き去りにしてしまったようだ。

ロマネスクもゴシックも民家も未だに残っている。それは、高層ビルがこれらを越えることが出来ていないからではないだろうか。

いや、越える越えないの話ではないのかもしれない。

しかし、歴史は必ず進歩、発展していくということを信じるのであれば、建築もまた、必ず進歩、発展していかなくてはならないのではないか。

少なくとも、これからの建築を考えるのであれば、先ずは歴史に学ばなくてはならないことは必至だ。






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