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2021年10月の読書まとめ

読書アプリで簡単なあらすじ・感想をまとめていますが、それに収まりきらなかったこと、そこから派生して考えたこと・実践してみたことをまとめてみました!今月はこの3冊です!

1.『藁を手に旅に出よう』で本の読み方を考える

スピンオフや新訳系の物語が好きでよく読むのですが、本書はよく知られている寓話を元に働き方を考える一冊です。

紹介されている寓話は「うさぎとかめ」「桃太郎」とメジャーな作品ばかりです。皆さんも小さいころに読んだように、これらの寓話にはそれぞれメッセージが込められています。例えば、「うさぎとかめ」だったら「最後まで手を抜いちゃいけない」とか「諦めずに頑張れば勝てる」といったものがよく言われているものではないでしょうか。ですが、本書ではちょっと違います(詳しい内容を知りたい方はぜひ読んでみてください)。

このように一風変わった視点で寓話を読み解いていくのですが、これを著者は「積極的誤読」と表現しています。

寓話というのは、一般的には強いメッセージ性があります。たとえば、『アリとキリギリス』であれば、「勤勉に働くことの美徳」というメッセージが裏側にあります。このように第三者が決めたメッセージを、わかりやすいストーリーを通じて受け止める、というのが寓話の通常の使い方です。
しかし、そんなメッセージ性の強い寓話でさえ、いろいろな読み方(積極的誤読)ができるのです。当事者として考え抜けば、自分なりのメッセージを読み解くことができる(本書あとがきより)

これを受けて自分の読書を振り返ってみると、「まだ自分には早いなぁ」とか「その立場になったことが無いから分からないなぁ」と、表面的な部分でしか本を読めていないことが多かったなと思います。ただ単純に筆者が伝えたいメッセージを受け取るだけでなく、自分の立場に置き換えるとこの本からは何が学べるのか、どういうメッセージを受け取れるかということを考えていけばもっと実りある学びになると気づかせてくれました。

何かの本で「So what」を考えるというのがありました。「何らかの出来事があった。だから何?(So what)」とその出来事が自分にとってどういう意味か考えるというものです。今回の積極的誤読とこれがつながって「So what」を問う意味が腹落ちしました。

2.『マリア・プロジェクト』で発展を妨げる感情を見る

私が大好きな作家・楡周平さんの小説で、体外受精や代理母出産、臓器移植をテーマにした一冊です。テーマとしてはかなり扱いが難しいものだと思います。その中でも、本書に出てくる科学者が言うセリフに技術の発展とそれを妨げる人の感情の関係を感じました。

「科学の進歩を感情でしか理解できない連中がごまんといるのです。これだけ単純な理屈がどうして分からないのか腹立たしい限りです。」

違法な方法で人体実験を繰り返す組織の人物が言っているのですが、彼らとしてはその実験によって重い病気やケガで苦しむ人たちを救うことができると信じています。ですが、世間の人々は倫理的にダメ、人の命を粗末にしているといった感情でその実験を非難し、科学者は「実験の有用性をきちんと把握していない!」と憤りを抱えています。

小説での内容は人の命や人権が関わる難しい問題でどう着地すればいいのかはっきりと明言はできませんが、これほどまでではなくても似たようなことはよくあると思います。例えば、会社で新しいシステムを入れたくて上司に打診したとき、理由が「よく分からないから」「なんとなく嫌だ」というので却下されることがあります(実際の場では表面的にもっとちゃんとした理由で言われるとは思いますが)。それを導入することで、確実に楽になる、スピードが上がると言っても、上の人の感情論でダメになることがある。
小説の内容と問題の大小はありますが、何かを推進する際に人の感情というものを置いてけぼりにすると、物事が進んでいかないんだなと感じました。

3.『護られなかったものたちへ』で「分からない」を考える

映画化もされた本書ですが、そのコピーが「あなたにこの物語の犯人は分からない」というものでした。

一言に「分からない」と言ってもいろんな種類があります。単純に答えを知らなくて分からないのか、問いに対する答えがいろいろあってどれがこの場にふさわしいか分からないのか。特に後者は議論が分かれるところだと思います。

例えば、ある人が上司に怒られてむしゃくしゃして空き缶を蹴ったら、家の窓ガラスが割れてしまった。このとき、悪いのは一体誰でしょうか。空き缶を蹴った人なのか、その人がむしゃくしゃする原因を作った上司なのか、そもそも空き缶をポイ捨てした人なのか。「風が吹けば桶屋が儲かる」じゃないですが、いろいろな出来事がつながって何かが起きたとき何が原因なのかよく分からなくなります。

何か問題が起きるとその問題を起こした直前の行動に対して解決のアプローチをしがちですが、視野を広げてみるともっと大きな問題が隠れているかもしれません。その人個人の技量不足ではなく、仕組みが間違っているとか、その人じゃない部署の人の対応がまずかったとか。もしそうだとすれば、この問題はこれからもずっと起き続けることになります。

近視眼的に問題解決を行うだけでなく、もっと広い視野で問題を把握し解決の打ち手を行って、問題そのものが起きないような仕組みづくりが必要だなと思いました。

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今月はこれら3冊を紹介しました。これ以外にも素晴らしい本はたくさんあります。
皆さんがステキな本と出会い、良い読書ライフを過ごせるよう祈っています。