ビジネスを哲学する|13. 目的って何だろう?
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「交換条件つきの約束」をすると、〈慣性の法則〉が強くはたらく。
たとえば、カフェの紹介記事をネット公開するために、「交換条件つきの約束」を交わした3人。10回20回と同じ約束をくり返さなくても、2、3回も同じ約束をくり返せば、また同じことをやるという暗黙の了解がはたらくことになりそうだ。つまり、〈慣性〉が早めに生じることになりそうだ。
カフェの写真を撮る人がいて、レビューを書く人がいて、記事をアップロードする人がいる。2、3回「また同じことをやろう」と言ってやってくれば、また同じことをやるということを暗黙の了解にして、「次はどこのカフェにする?」などと言い始めてもおかしくない。
それはなぜだろう?
「無条件の約束」(交換条件なしの約束)との違いは、それぞれの人にとってのモチベーションだけでなく、共通の目的があるという点だ。「カフェの紹介記事をネット公開する」という共通の目的。
目的というものは、モチベーションよりも持続しやすい。
これは1人の人にとってもそうだ。たとえば、「大学に入る」という目的をもったとして、そのために勉強をする。目的がそのまま変わらなくても、勉強を続けるモチベーションを維持することは難しい。目的は持続しやすく、モチベーションは持続しにくい。
目的とモチベーションは、別々のものなのだ。
目的は、未来に実現したい理想。モチベーションは、そこに向かうために現在必要となる原動力。
目的とモチベーションは別物なのに、目的があるとモチベーションも維持されて当然と思われがちだ。だから、目的がそのままで、モチベーションが維持できないと、人は「どうしてだろう」と困惑して落ち込んでしまう。
そこでは、目的とモチベーションがごっちゃにされている。
共通の目的があると、約束に生じる〈慣性〉が強くなる。それは、目的があると、モチベーション維持を見込むようになるからだ。つまり、共通の目的があると、各メンバーのモチベーション維持を見込むようになるからだ。そう考えることができる。
そこでは、目的とモチベーションがごっちゃにされている。もっと言えば、目的がモチベーションになるというふうに取り違えられている。
組織には、メンバーに共通の目的がある。目的があるからといって、モチベーションが維持されるとは限らない。それなのに、目的があるからモチベーションも維持されているだろうと見込み、「また同じことをやろう」という合意を飛ばしてしまう。ふたたび約束をするという段階を飛ばしてしまう。(自信ではなく、目的によって、相手のモチベーション維持を見込むようになる。)
そうして、約束は〈慣性〉によって続いていく。こうなると、組織で働きづつけているのに(共通の目的のために役割を果たしつづけているのに)、モチベーションはすでにないという状態が生じうるようになる。
モチベーションに比べて持続しやすい目的。
目的とは案外おそろしいものなのかもしれない。
「目的の為に生きる奴はな、嫌でも我慢強くなるもんさ。」
(ヒグマの大将、映画『ぼのぼの』、1993年)
つづく
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