自分でつくってみたら何が見える?
煙がゆれる。昔から、カリカリのベーコンが好きで、ホテルの朝食がバイキングなら、お皿に山盛り入れて食べていた。朝食会場に行って、べたっとしたベーコンがでたときは少しガッカリする。パリっと、少し歯ごたえがあるのがたまらない。
「そんなに好きなら、自分でつくれば」
妻の予想外のことばに
「えっ、自分で」
考えたこともなかった。当たり前のように、出されるものを食べていた。
自分でつくれるのなら、やってみよう。
インターネットで調べてみると、作り方がいろいろと書いてある。以外と簡単な感じがした。早速ホームセンターで、燻製(くんせい)を作るスモーカーと燻(いぶ)す木のチップを探して購入する。香りが大事なので、チップの種類は重要だ。桜、りんごなどの木がある。私はクセがなく、自然の香りがするヒッコリーのチップを選んだ。
塩と砂糖を豚バラのかたまりに、すり込んで冷蔵庫で一週間ねかす。そのあと水で塩抜き。手間がかかる。
なんでもやらないと、ありがたみがわからない。これでやっと燻すことができる。チップに火をつけて煙をだす。ゆっくり、ゆっくりとゆれながら肉のかたまりを包んで登っていく。あゝ目に見えないだけで、空気はいつも動いている。止まっているものは、ないなあと感じた。
3時間ほど、煙のなかで燻された肉のかたまりは、年季の入ったアンティーク家具のような、ブラウン色に輝いていた。なんとも言えない、煙の香りが鼻に残る。
すぐにでも食べたいところだが、また一晩冷蔵庫で寝かせる。10日ほどかけて、やっと食べられる。
口の中で煙の香りを食べる。家族も笑顔になる。
それは美味しいに決まっている
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