夏休みは子どもを成長させるⅢ
短い夏休みが終わる。
川遊びで車の中でぐったり眠っていた子ども達。
家に帰って夕食を食べると復活していた。
「最後の夜だから、カブトムシのオスを絶対採りたい」
二人は意気込んでいた。
「まあ、風呂に入って来い」
「ハイ!」
そう言って風呂場へ向かっていった。
「なんとかして、採らなあかんなぁ」
カブトムシがいそうな場所を何か所か考える。
風呂上がり
「さあ、行くか?」
「行こう!」
少年二人と元少年で車に乗り込む。
先ずは、前夜カブトムシのメスがいた場所へ。
樹液が溢れるクヌギの木には、カナブンとコクワガタだけだった。
「いないねえ」
20時を過ぎて暗くはなっているが、少し早い感じした。
「違う場所へ行こう」
車の停めた場所に戻ると、別の家族が虫かごを持って歩いてきた。
「今夜はライバルが多そうだね」
週末の夜だから仕方ない。
車を運転していると
「やっぱりオスは採れないかなぁ」
「どうかなぁ」
「採れないことないよ!」
「そうやなぁ!神さまに祈れ」
すると、何を考えたのか歌声が後部座から聴こえてきた。
♪神さま どうかどうか 一匹だけでいい
カブトムシをつかまえさせてください♪
どこかで聴いたメロディーだと思ったら米津玄師のorionの替え歌だった。あっという間に車内は大合唱になっていた。
次の場所に着くと、人の気配がない。
「これはイケるんちゃうか」
「ホントに」
三人で森の中へ入っていく。以前、カブトムシをつかまえた木に着く。LEDライトを木に照らすがカブトムシらしきものはいない。
「んーあかんな」
「いない」
「もう一本だけみてみよ」
そう言ったが、たぶん無理かもしれないと思っていた。
いそうな木をみつける。クモの巣が侵入を阻んでいた。クモの巣をはらい、ライトを照らすと黒く光るものが。
「オイ!いたかも」
「エー!」
ゆっくりと近づくと、そこには立派なツノをつけたカブトムシのオスが樹液を吸っていた。
緊張しながら、短いツノをつかんで少年二人に
「ゲットしたぞー」
「うわー!ヤッター!」
森の中で三人で叫んでいた。
飼育ケースに入れて少年二人は
「カッコイイねえ!」
「やっぱり神さまが叶えてくれた」
「ホンマやな感謝やな」
まるでマンガのような結末だった。
自宅に帰って三人で乾杯した。
私はビール、子どもはカルピス。
「カブトムシおめでとう🎉カンパイ」
「カンパイ」
久しぶりに感動した。カブトムシ採りでこんなに興奮するなんて、子ども達のおかげだ。
次の朝、
「おはよう」
と声をかけると
「おはようございます」
なんとなく元気がない。
疲れたのか、ぐらいに考えていた。
朝ごはんもあまり食べない。
「どうした?疲れたか?」
「そんなことない」
「帰る準備しなきゃ」
二人には、お別れの時間が迫ってい。
「お昼にはお母さんが迎えにくるって」
どんどん言葉数が減っていった。
お母さんが迎えにきた。
「あっという間にだったね」
「そうだね」
「また、来たらええ」
「本当に」
「うん」
お母さんの車に乗り込んでガラス越しに手を振っていた。車が走り出すと
「バイバイ」
息子も目一杯、車が見えなくなるまで手を振っていた。
振り向いた息子は
ポロポロ涙を流していた。
ふと忘れていた、あの日の感情を思い出した。
こっちまで泣きそうになった。
夏休みは子どもを成長させる。
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