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LGBTの人が就活・転職で「自分らしく」を実現するには?

働き方の多様化や労働人口の減少、ダイバーシティの推進など、この数年で社会のあり方が根底から見直され始めています。

多くの企業では求める人材の採用が難しくなり、求める人材を惹きつけるために様々な工夫がなされるようになってきました。多様な人材を受け入れ、柔軟な働き方を取り入れる流れも加速しています。

そうした中で社会的マイノリティへの視線も変わり始め、LGBTへの理解も少しずつ進んでいます。LGBTの人が働くにあたって、自分らしく安心して仕事ができる職場の選択肢が広がっていると言えるでしょう。

働くことや就活・転職に関する情報の量、収集手段も増えています。ですがその一方で、どの情報が正しいのか、何を参考にどうやって実践すればいいのか分からないという悩みを持っている方もいるかもしれません。

そんな方に一度読んでいただきたいのが、翔泳社の『自分らしく働く LGBTの就活・転職の不安が解消する本』です。

本書はLGBTの就職支援サービス「JobRainbow」を運営する星賢人さんが執筆。よく寄せられる疑問や悩みに1つずつ丁寧に回答し、どのように活動を進めればいいのかを提案した1冊です。

◆著者について
星賢人( ほし・けんと)
株式会社JobRainbow CEO。東京大学大学院情報学環教育部修了後、「全てのLGBTが自分らしく働ける社会の創造」を目指して起業。Forbes 30 under 30 Asia 2018のSocial Entrepreneurs部門で日本人として唯一選出。現在は35万人超のユーザーを抱える就職支援サービス「JobRainbow」を運営。

本書では自己分析から始め、業界・企業分析、エントリーシートの書き方、面接の受け方など「どうすればいいの?」と多くの人が疑問に思う点を網羅的に解説。また、カミングアウトをすべきかどうか、職場の人とどのように関係を構築すればいいのか、不当な扱いを受けた際の対処法についても説明しています。

星さんは「LGBTであることは、採用や職場の中において何らマイナスになるような事柄ではありません」と強調します。また、理想の職場で働くには、キャリアプランとライフプランを描いておくことが大切とも。

今回は本書から、そんな星さんが就活・転職をするにあたって必要な心構えについて語ったパート「自分らしく働く」を抜粋して紹介します。少しでも皆さんの不安を和らげ、働きやすさをサポートできればと思います。

以下、『自分らしく働く LGBTの就活・転職の不安が解消する本』の「Chapter1 就活・転職の基礎知識」から「自分らしく働く」を抜粋します。掲載にあたって一部を編集しています。

自分らしく働く社会に近づいている

LGBT、さらには働き方を取り巻く社会全体の環境は大きな変革期を迎えています。少子高齢化に伴い、労働力が不足する中、求職者の数を求人数が上回る状態が就活でも転職でも続いています。

結果として企業は、女性の活躍推進や外国人、障がい者、そしてLGBTなど多様な人材を積極的に活用すると同時に、私服勤務やリモートワーク、フレックスタイムなどを導入し、柔軟な働き方を認めつつあります。

私が就活生だった頃は、3月に就活サイトがオープン、真っ黒なスーツに黒髪の就活生が直筆のエントリーシートをもって合同説明会に一斉に参加していました。しかし今後、こうした一斉採用の就活ルールは廃止されていく予定です。

企業は通年にわたって私服OKの面接を実施したり、インターンシップなどの就労体験を提供することで、就活生・転職者のニーズに寄り添いながら、より多くの人材を惹きつけようとしています。

人材の流動化はますます加速し、誰しもが一度は転職活動を経験することになるでしょう。この“ 超” 人材不足の時代に、多様な人材や多様な働き方を受け入れられない企業は、もはや就活生・転職者から選ばれず、結果として経営も立ち行かなくなってしまうことが明白となりつつあるのです。

このように、LGBTへの社会的理解が進むのと同時に、働き方そのものの多様性が認められるようになり、LGBT の就活生・転職者にとっても、より自分らしく安心して働ける仕事の選択肢が着実に広がってきています

「自分らしく働く」とよく耳にするようになりましたが、「自分らしく働く」とはどういうことでしょうか?

本書では、「自分らしく働く」ことを大きく次の2つの軸に分けています。

①就活・転職時や職場で、セクシュアリティがマイナスにならないこと
②理想のキャリアプランとライフプランを最大限実現すること

高い給料をもらうこと、素敵なオフィスで働くこと、自由な服装で働くことなど人によって「自分らしさ」は異なりますし、働き方に求めるものは違ってきます。

就活・転職時や職場でセクシュアリティがマイナスになることはあるのでしょうか?

LGBT であることは、採用や職場の中において何らマイナスになるような事柄ではありません。個人のセクシュアリティが仕事の能力に直結することはないからです。厚生労働省は「公正な採用選考の基本」の中で、採用側はLGBT等性的マイノリティを排除しないことを明確にしています。

ですが、「LGBTであることが採用の合否に不利な影響を与えるのでは?」「カミングアウトをしたら職場で仲間外れにされるのでは?」という不安もよく耳にします。

実際「カミングアウトをしたら内定取消にあった」「ゲイを馬鹿にするようなホモネタが日常的にある」「自分の望む性別で働けない」という声が私たちのもとに寄せられているのも事実です。

一方で、より積極的にLGBTに対して平等な職場環境づくりを行う、いわゆるLGBTフレンドリーな企業も増えつつあります。たとえば、異性婚だと得られる家族手当や結婚休暇などを同性パートナーにも適用したり、トランスジェンダーの性自認に伴ったトイレや更衣室の施設利用を認めたり、最近では性別適合手術の休暇を付与する事例もあります。

これらは、決してLGBTを特別扱いしているわけではなく、平等な制度や環境づくりをしていこうという企業意識の現れです。このような企業や職場環境で実現するLGBTの「自分らしく働く」とはどういうことかという具体的なイメージがわかない人も多いと思うので、いくつか例を挙げてみましょう。

LGBTが「自分らしく働く」要素
●採用面接でカミングアウトをしても不利に扱われない
●自認する性別で面接を受けることができる
●同性パートナーと婚姻関係にある人に対する結婚祝い金や家族手当の付与があり、転勤の際にパートナーのことを考慮してもらえる
●戸籍の性別ではなく、自認する性別でトイレや更衣室が利用でき、性別適合手術の際には休暇を申請することができる
●ホモネタなどのLGBTに対する差別的言動がほとんどなく、異性愛を前提とした恋人や結婚に対する詮索もされない
●カミングアウトをしていても、いじめや差別がなく、普通の人間関係を築くことができる

もちろんこれらの例のように、すべてが整っている企業は多くはありませんし、取り組みを進めている企業であっても部署によってばらつきがあります。カミングアウトをしない人や、パートナーがいない人にとってはあまり関係ないとも思うことかもしれません。

「カミングアウトをするのかしないのか?」「いつするのか?」「LGBTフレンドリーな会社を選ぶのか?」「自分のやりたい仕事を選ぶのか?」といった部分の見極めは難しいだけでなく、その場のなりゆきで行動してしまった結果、後悔している人もたくさん見てきました。

そこで、本書では「自分らしく働く」をキャリアプランとライフプランを組み立てながら実現する方法を紹介しています。

キャリアプランとライフプランなんて考えたことがありません。描く必要はありますか?

自分らしく働くうえで、どのようなライフプランを描くかは、ロールモデルが少なく人生計画が立てにくいLGBTだからこそ、重要です。そもそもどのような人生を歩みたいかによって、職場でカミングアウトをするか・しないか、どのような軸で企業選びをすべきなのかといったキャリアプランが大きく変わってくるからです。

もちろん、理想のプランを描けたからといって、すべてを実現できることは
稀です。そもそも条件に合う企業が存在しなかったり、第一志望の企業と合わないこともあります。

ただそのときに軸のあるプランがあれば、職場に求める優先度を調整しながら、最大限自分に合った企業を見つけることができ、結果として自分らしく働くことにつなげていくことができるのです。

「自分らしく」が「自分勝手」にならないように気をつけよう

ここで気をつけてほしいことは、「自分らしく」を「自分の好きなように」、「自分の理想」を「自分の理想通りに」と解釈してしまうと、自分勝手な考えになってしまうことがあるという点です。

企業で働く限り、常に「成果」を出す必要があり、それができる人材を企業は求めています。

逆にいえば、仕事において「LGBTだから」は、いい訳や何かをあきらめる理由にもならないということです。

セクシュアリティを理由にいままでつらい経験をしてきた人にこそ、これからはセクシュアリティを理由に何かをあきらめることなく、挑戦してほしいと願っています。


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