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なんとなく不調を感じていても、診察で異常がなければ健康?

翔泳社から発売中の書籍『「アジャイル式」健康カイゼンガイド』のお知らせです。

著者はアジャイル実践者&スポーツプログラマーの懸田剛さんと、保健師&看護師&産業カウンセラーの福島梓さん。健康改善のための方法が紹介されている本書ですが、アジャイルという言葉は聞き慣れないかもしれません。これはソフトウェア開発でよく使われる手法です。

例えば、noteのようなサービスに大がかりな機能を追加しようとすると、計画から機能実装までかなり長い期間が必要です。ひととおり開発してからミスやバグを修正しようとすると、その長い計画を全部見直しながら修正していかなければならず、「こっちを直したらあっちで不具合が……」となかなか改善が進みません。

なので、計画を短期間の目標ごとにいくつも区切り、各区間の作業中に都度ミスやバグを発見しては改善していく手法のほうが効率よく、着実な開発が可能になります。これがアジャイル開発です。

本書では、このアジャイル開発のやり方を健康改善に役立てるためのノウハウがまとめられているというわけです。

また、病気を治すというよりも、「うっすら体調が悪い」「なんとなく不調の日が続いている」といった「診察では異常なしでも元気だとは言えない」状態を改善していくことに主眼が置かれ、健康に関する基礎知識も豊富に解説されています。

皆さんもそうした体調不良を感じてはいないでしょうか。もしかしたら、改善しようとしているのにうまくいかない・続かないといった悩みがあるかもしれません。

本書はそんな方が「元気だ!」と自信を持てるようになるガイドブックです。よければ試してみてください。

この記事では、本書から少し内容を抜粋して紹介します。

↓↓以下抜粋↓↓

健康と不健康の境目

少し考えてみたいのが「健康と不健康」の線引問題です。

「うっすらと体調が悪い」状態は、果たして健康でしょうか?それとも健康ではないのでしょうか?

「うっすら体調が悪い」とは、そもそも「健康な状態=体調がよい状態」がわからない、ということでした。うっすらでも体調が悪いので「健康ではない」気もします。しかし、病院に行くほど悪くもないため「健康である」と言える気もします。

それでは、病院に行って医師の診察や健康診断などを受けて「異常なし」なら健康、「異常あり」なら不健康となるのでしょうか。それとも、即通院という状況でなければ健康なのでしょうか?

そうやって考えていくと、健康か不健康かの境界をどこで決めればよいのかもわからなくなってきます。この線引きは、意外と難しいのです。


心と身体を分けない

身体に気をつけていさえすれば健康であるか、というとそういうわけでもありません。「病は気から」という言葉もありますが、心の問題は身体に大きな影響を与えています。

2021年の自殺者数・自殺者率の統計によると、自殺者率は全体の死因の16.8%にものぼります。また男女差を見ると、女性の自殺率が11%なのに対し、男性の自殺率は22.9%です。つまり、男性は女性の倍以上も自殺しやすいという結果になっています(厚生労働省自殺対策推進室、警察庁生活安全局生活安全企画課「令和3年中における自殺の状況」)。

たとえ身体が健康であっても、心が病んでいると自殺という結末を選んでしまうかもしれません。もちろん心が健康であっても、身体が不健康では病気に苦しんだり、亡くなってしまったりすることもありえます。

つまり「身体が健康」とか「心が健康」というように切り分けてしまっては、本当のその人の健康状態は見えてきません。身体と心を不可分な全体として見た結果をその人の健康状態としてとらえなければなりません。

アジャイルと健康

ここで、筆者らの出会いを簡単に紹介します。

懸田はIT エンジニアとして、アジャイルが日本に紹介された2000年から研究・実践・指導してきました。福島もアジャイルを実践し、社内のアジャイル導入支援や教育コンテンツの作成などに携わっていました。

筆者ら2 人が出会ったのはアジャイル研修コンテンツの作成プロジェクトでした。アジャイルによって製品をどのように作り上げていくかという研修を一緒に作り上げ、実際に提供していたのです。

その後、福島は会社をやめ、産業保健師を目指して大学に入り直し、看護の勉強・実習を重ねて念願の保健師となりました。一方懸田は、地方移住をきっかけに生活習慣や自身の健康を見直してさまざまな試行錯誤を繰り返して人生が大きく変わりました。

ともに異なる道のりで健康に向き合い、再び出会ったときに、健康とアジャイルというまったく異なる両者について、大変似通った見解を持っていることに気づきました。

健康とアジャイルの関係

両者に共通するのは、環境に適応しながらよりよい状態に向かい続けるプロセスです。

アジャイルは、顧客に価値あるプロダクトの提供を目指し、少しずつ作り、フィードバックを受けながら改修していくプロセスです。一方、ポジティヴヘルス(第2章)などの健康の概念も、よい状態に向かって身体のフィードバックをもとにそのときできることを試行錯誤し、環境に適応していくプロセスや考え方、能力です。

ITシステムのような人工物ですら、アジャイルのような有機的プロセスで作り上げられていきます。私たち自身が有機体そのものであり、環境の変化に適応して調和を取り続けていかなければなりません。筆者はこの方法を、これまでなじんできたアジャイルから借りてアジャイル式と呼ぶことにしました。

具体的には何をするの?

アジャイル式健康カイゼンでは、目指したい未来像や目標を設定し、そこに向けて試したいアイデアを選び、一定期間で実験して評価することを繰り返していきます。そして定期的に目標に到達したかを省みて、変更の必要があれば目標や未来像も随時変えていきます。


ビジネスの世界で「PDCA」という改善プロセスの用語を聞いたことがある方も多いかもしれません。計画を作り(Plan)、それを実施して(Do)、結果を検証して(Check)、次の改善アクション(Act)を決めて、再度計画を立てる、という流れです。専門家がクライアントの健康改善を進めていく際にも、上記のようなプロセスが基本となっています。

しかしここで紹介するアジャイル式では、専門家の力も借りますが、基本はあなた自身で、自分のライフスタイルをカイゼンしていくことになります。そのため「計画」「実施」「結果」のように重くなりすぎないように、「アイデアを試して、実験を繰り返す」というカジュアルさを重視しています(具体的なプロセスの詳細は第7 章で解説します)。

アジャイル式に失敗はない

アジャイル式では「失敗」は存在しません

試してみて、うまくいかないことはあるかもしれませんし、自分に合わないこともあるかもしれません。しかしそれらは「失敗」ではなく「学び」と考えます。うまくいかなかったなら「うまくいかないやり方がわかった」という学びなのです。

現代は社会全体で意図せず不健康になる状況を作り出していますし、誰もが仕事や生活で必死に生きています。そのため、その中で自分に合うやり方や習慣を見つけだすのは、決して簡単なことではありません。そういう大変な状況で、何かやったときに自分自身で「失敗」という評価判断をしてラベリングし、自己肯定感を下げることにはまったく意味がありません。

地球上の生物は、長い年月の中でそれぞれの環境に適応する形で進化してきました。私たちも、人生という短い時間の中で、その時々の状況に適応し、調和を生み出していく必要があります。

人生の中で、私たちはさまざまな実現したいことに出会いますが、健康的なライフスタイルはその実現のために必要な要素です。

健康的なライフスタイルを生きるにあたり、きっかけは専門家を含めていろいろな人が与えてくれます。しかし、最終的には、自分自身で実験を繰り返しながら、あなたの状況にフィットしたライフスタイルを見いだしていくほかありません。

そう考えてみると、アジャイル式健康カイゼンとは、単に健康的な生活を実現するだけでなく、自分の人生を作り上げる大きなプロセスの一部なのです。

さぁ、あなたも、アジャイル式健康カイゼンに飛び込んでみましょう!


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