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酔わない人生なんて、つまらない!?

10月某日。地球沸騰の時代と言われた記録的な猛暑の夏も過ぎさり、2023年もあと少しとなりました。みなさんの今年の目標達成率はどのくらいですか? わたしの場合は例年みじめな結果に終わってしまうのがつねですが、今年は珍しくいい感じになりそうです。 

「ソバーキュリアス(Sober Curious)」という、あえてお酒を飲まないライフスタイルが広まってきました。わたしもそのブームにあやかって、それまでほぼ毎日飲んでいた!お酒を今年のお正月からやめてみました。

とは言え、今夜は「何食べて・何飲もうか!?」というマインドに長年汚染されていた脳は、そう簡単には言うことをきいてくれないのですが。 

酔わない人生なんて、つまらない……。

生活に何かもの足りなさを感じてしまうのは、お酒をやめて初めて味わった感覚です。原因の一つは、それまでアルコールによってドーパミン(快楽に関する神経伝達物質)が分泌されることに慣れきってしまったこともあるのではと思っています。

日々淡々と過ぎていく毎日がつまらなく、侘しさがどうにもつのります。ときどき無性にドバーっとドーパミンを放出したくなります(お酒を飲まない方には何のことやらといった感じでしょうが……)。

 作家、町田康さんは「そも人生は楽しいもの、または楽しむべきもの。」(原文ママ)という認識こそが飲酒の原因であると、著作『しらふで生きる 大酒飲みの決断』(幻冬舎)で語っています。そして、人生は楽しくないものという認識をどうやって改造するかについて、こう言っています。 

『自分は特別な人間ではない→つまり普通の人間→普通、人生は楽しくない』の過程を何度も繰り返すより他ない。

昔の日本人は、お祭りや冠婚葬祭など特別な日を「ハレ(晴れ)」、それ以外の普通の日を「ケ(褻)」として暮らしにメリハリをつけていたようです。空の色や街路樹の色どりなど、昨日とは少しだけ違う小さな変化を見つけるように意識すると、「ハレ」でなくても「人生は面白い・美しい!」と思えるようになってきました。 ドバーっとじゃなく、ジワジワっとドーパミンが出てくる感じです。

「お酒を飲まなくなって一番よかったことは?」と聞かれたら、迷わず「本を読む時間が増えたこと!」と答えるでしょう。町田さんも同書の中で、引っ越しのたびに持ち歩いていたが、30数年1度も開かなかった『折口信夫全集第十二巻』を読んでいるというくだりがあります。

いまだに黄昏時になると何かやり残しているような不安な感じになりますが、秋の夜長、仕事に関係のないミステリー小説をゆっくり読み進められる幸せは、なにものにも代え難いものです。

(編集部 倉橋)

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