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先輩たちに学ぶ、発達障害の特性を仕事に活かす方法【就活ハック×こだわりさん著者対談】

こんにちは、編集の井上です。

今年1月に刊行した『ちょっとしたコツでうまくいく! 発達障害の人のための就活ハック』(以下、就活ハック)で編集を担当したのですが、そこでの経験を通して「発達障害の人が参考にできる就活や転職の情報はまだ少ない」という課題に気が付きました。

今回、当事者の方の参考になる情報や体験談をもっとシェアできないかと考え、就活・転職事情に詳しいお二人へ対談を打診することにしました。

ご協力いただいたのは、『就活ハック』の著者であり当事者の方との関わりも深い窪貴志さん。そして、当事者目線の体験談をTwitterや書籍『「こだわりさん」が強みを活かして働けるようになる本』(扶桑社)(以下、こだわりさん)で発信されている銀河さんです。

本記事は「ロールモデル編」です。

●ロールモデルってどんな人?
●どんなところが参考にできそう?

などをテーマにお話しています。

※この対談は、現状編、課題と解決編、ロールモデル編の3本立てでお届けします。

対談メンバー

窪貴志さん
株式会社エンカレッジ代表取締役。エンカレッジは、主に発達障害がある人の就職サポートや、発達障害のある学生のキャリア支援を行っている。著書に『ちょっとしたコツでうまくいく! 発達障害の人のための就活ハック』がある。

銀河さん
キャリアアドバイザーとして転職サポートを行う。自身もASD自閉症スペクトラムと診断されている。Twitterでは当事者の視点から「発達障害の特性を強みに活かす方法」を発信中。著書に『「こだわりさん」が強みを活かして働けるようになる本』(扶桑社)がある。

井上(聞き手)
翔泳社の福祉の本編集部の編集者。『就活ハック』の編集を通して当事者の情報不足の課題に気がつき対談記事を企画。

ロールモデルにはどんな人がいる?

──ここまで当事者の方の就活・転職における現状、課題、解決案についてお話してきました。強みや見つけて活かすこと、特性をポジティブな面から捉えていくことが重要ということでしたね。こういう点でロールモデルとなるような方をご存知でしょうか?

窪:まさに銀河さん自身がそうだろうと思います。ご自分のどういう部分を活かして仕事をしているのか聞いてみたいです。

銀河:自分で思うのは、空気が読めないところを活かせているんじゃないかということです。エンカレッジさんの採用に応募したときも、募集されていた内容はマーケティングの募集だったんです。当時マーケティングの知識なんかほとんどなかったのに、エンカレッジさんの仕事にすごく共感して「どうしてもやりたい」という気持ちでご連絡したら、やってみようかと話をいただいて。

他にもTwitterでは「発達障害の特性を強みにする」と発信している人が誰もいなかったのですが、空気を読まず、むしろタブーみたいな空気の中で「とりあえずやってみよう」と行動できたところが自分の強みだと思います。

窪:まさにそうですね。当時のことを思い出すと、銀河さんと初めてお会いしてなにができるかわからなかった。アバウトに求人も出しているし、アバウトに応募してきてくれたし(笑) まさにそこから調整をしたということですよね。

銀河:「こういうことができるんでやります!」とかはすごく言った気がします。

窪:「それだったらうちでこういう仕事があるかな」と仕事を決めていた感じですよね。こういうことは、発達特性の強みと会社の環境がすごく近づいていったシチュエーションだったと思います。

銀河:ただ、窪さんとのケースはうまくいったケースです。逆にうまくいってないケースもすごくたくさんあるんですよ。トライ&エラーで色々なことにチャレンジすることはすごく大事だと感じます。

仕事に特性をどう活かす?

窪:あとは他の方でいうと、絵がめちゃくちゃ上手で手先が器用な人がいます。得意だけにフォーカスすると、仕事は芸術家とかデザインとかそういう発想にいきそうじゃないですか。でもこの方は精密機器メーカーの製造現場で仕事をしています。

精密機器のメーカーではすごく細かい職人の作業みたいなものがあって、色々な回線とかを組み合わせていく高度な作業が必要なんです。物事をすごく詳細まで捉えて絵に起こせたりイメージしたりすることができる、かつそれを実際に手先が器用なので作り上げることができたりするので、そこが精密機器のメーカーで必要とされたというケースがあります。

絵がうまいということを、手先が器用とか物事を詳細まで表現できるというところまで落とし込んでいけると、さらに次の強みを活かせた職場につながる可能性もあると気づきになりましたね。

銀河:私の知り合いでも発達障害の方で社長をされてる方がいます。その方が言うには「色々と興味関心が移りすぎて手を出しすぎたから、周りに合わせられなかった」と。

それって「飽きっぽい」ということなんですけど、だからこそ1つの事業を成功させたら終わりではなく、2つ3つとやって会社を大きくできたんですよね。

窪:そういう意味では、飽きっぽさを興味関心がすごく広いという言い方ができるし、強みを活かしながら新しいことにチャレンジしていける人だと前向きに捉えていける。

もちろんうまくいかないこともあると思うんですけど、他にも「やり遂げることが得意」という人がいますから、自分1人だけじゃなくて周りの人にも得意苦手があってそれがうまく活かせるような関係性で仕事ができればすごくいいですね。

周りの力を借りながら、得意なことを磨いていこう

──最後に記事を見てくださっている方へのメッセージをお願いします。

窪:記事を見られている方の中には、悩みやうまくいかないことによる不安を感じられている方が多いだろうと思うんです。それに関して、すぐに解決策がひとつひとつに見つかるかというと、見つかることもあるでしょうし時間がかかることもあると思います。

そのとき自分1人で物事を解決する力もすごく大切ですが、家族とか友人でもいいですし、専門的な支援機関でも構わないのですが、不安を感じたときや混乱したときには最初は周りの人の力をうまく借りて使ってほしいです。

周りの人に頼ったときに自分に合わないなと思うことがあるかもしれないですが、周りに意見を聞いてみることから物事の気づきが始まることも多いので、不安や困難さの解決の1つの手段として考えてもらえるといいのかなと思います。

銀河:発達障害で困っている方は多いと思います。中には気持ちがすごく沈んでしまったり、「自分にはなにもできないんじゃないか」と感じたりしてしまう方もいらっしゃると思います。

実は私もそうでした。発達障害の人で強みを活かしている方、活躍されている方にお話を聞くと、やっぱり最初は落ち込んでいたという方がすごく多いんですよ。

ただ、そんな状況からでも少しずつ取り組んでいく、得意なことを見つけて磨いていくと少しずつ可能性が出てくると思います。

ぜひ諦めずになんとか自分がやれる道というものを探し出し、そして磨いていくことを通して、人生を充実させて社会で活躍していってもらいたいなと思っています。

──ありがとうございました!

まとめ

●トライ&エラーの精神で挑戦することが大切
●得意なことをもっと掘り下げてみると、さらに強みを活かせる職場につながることもある
●不安なときや混乱したときは周りの人の力を借りよう
●いまできることを少しずつ積み重ねて磨いていこう

対談の様子は銀河さんが運営するD-Life.で公開中






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