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ビールを知れば、もっとビールが好きになる。日本ビール検定(ビア検)の公式テキストが発売

日本ビール検定、通称「ビア検」をご存知でしょうか。

一般社団法人日本ビール文化研究会が2012年から実施している人気の検定で、ビールの製造方法や歴史、文化、味わい方など、ビールに関する幅広い知識を問われます。

ビール好きが自分の知識を試してみたり、ビールについて深く知ることでビールをもっと好きになったり、よりおいしく飲めるようになったり。

ちょっと興味が湧いた方におすすめの公式テキストが、4月22日(月)に発売となった『知って広がるビールの世界 日本ビール検定公式テキスト(2024年4月改訂版)』(翔泳社)です。

ビア検のキャッチコピーである「知って広がるビールの世界」をもとに、ビア検の3級と2級で出題される問題に合わせてビールの知識を解説しています。

※ビア検には3級、2級、1級があり、1級は本書掲載の内容だけでなく、さらに広く詳しい知識が求められます。

今回、本書の「Part2 ビールの歴史」から現代日本のビールや市場を取り上げたパートを抜粋して紹介します。

容器戦争やドライ戦争などを経て、発泡酒や第3のビールが生まれ、さらにクラフトビールブームに至った現在のビール事情についても紹介されています。過去問と合わせて、ぜひお楽しみください。


現代の日本のビール

1970年代以降の主な出来事としては、生ビール化、中味多様化、容器戦争、ドライ戦争、地ビール解禁、発泡酒登場、新ジャンル登場など。94年以降は総需要の減少が続きますが、機能系やノンアル、クラフトなどのセグメントは拡大傾向にあります。

生ビール化から容器戦争へ

「キリンラガー」で過半のシェアを獲得した麒麟麦酒に対し、1967(昭和42)年「サントリー純生」、1968(昭和43)年「アサヒ本生」、1977(昭和52)年「サッポロびん生(現在のサッポロ生ビール黒ラベル)」と、3社はびん詰の生ビールで対抗します。

このラガー対生という構図をベースに、1980年代に入ると家庭用小型樽やワンウェイびんによる飲用シーン拡大を狙った新容器の開発が進みます。この容器戦争は、次第に奇抜さや可愛らしさを競い合うようになり、本末転倒との批判を受けるようになりました。

中味の多様化からドライへ

容器戦争は80年代中盤で一段落し、80年代後半は、中味の多様化が進みます。各社から、地域限定、季節限定、ライトビール、麦芽100%、プレミアムビールなど新しい味と香りの新製品が次々に開発されました。

その中で1987(昭和62)年にアサヒビールが発売した「アサヒスーパードライ」は大ヒットとなり、翌年に各社が追随してドライを発売。しかし、このドライ戦争は結果としてアサヒビールへの追い風となりました。

そこで各社は一転して第2ブランドを模索し始め、1990(平成2)年に「キリン一番搾り生ビール」が大ヒットとなります。

一方で、戦時中から競争防止のために統一されてきたビール価格に、大きな変化が訪れます。1990(平成2)年、ビール各社は「希望小売価格は参考価格である」と告知し、希望小売価格は強制ではないことを示しました。その結果、1994(平成6)年に大手流通チェーンがビールの値下げを発表し、次第に自由な価格設定をする販売店が増えました。

しかし、ビール市場は1994(平成6)年をピークに縮小していくことになります。

地ビールの解禁

1994(平成6)年、細川内閣の目玉政策である規制緩和により、ビールの製造免許に必要な年間最低製造数量が、2,000klから60klに引き下げられ、町おこしなどを目指して小規模の醸造所が数多く生まれました。いわゆる「地ビール解禁」です。

北海道のオホーツクビールと、新潟のエチゴビールが最初に誕生した地ビールです。それらに続き、新規参入が急増。小規模醸造所は一時は300か所を超え、「地ビールブーム」が起こりました。「地ビール」という名が示す通り、多くは町おこしの観点での事業展開が行われていました。しかし、2003年頃にはブームは沈静化します。

地ビールメーカーの淘汰が進む中、2004年からEC事業を本格化し成功をつかんだのが、よなよなエールを販売するヤッホーブルーイングでした。これを1つの契機とし、自らの手で個性的なビールをつくりたいという醸造所が増え、2010年代前半から地ビールは「クラフトビール」という呼称で再び人気を得ました。

クラフト(craft)には「手工芸品」「職人的技巧」といった意味があります。地ビールが地域性に着目した用語であるのに対して、クラフトビールはビールの個性や職人技に着目した用語と言えます。現在も小規模醸造所は増加を続けており、その数は2023年時点で800か所を超えています(きた産業調べ、発泡酒製造免許を含む)。

発泡酒の登場

発泡酒は戦時中に軍部が命じた代用ビール開発に始まり、昭和30年代までは低価格を訴求して広く販売されていました。その後の生活レベルの向上により日陰の存在になりましたが、バブル崩壊による価格破壊で突如復活します。1994(平成6)年の「サントリーホップス〈生〉」発売以降、各社が追随しました。

1996(平成8)年に1度目の発泡酒増税が行われましたが、長引く不景気で低価格の発泡酒の成長は続きます。1999(平成11)年から毎年増税が検討され、業界あげての反対運動がニュースとなりますが、ついに2003(平成15)年に2度目の増税が行われました。その後も発泡酒戦争は続きますが、第3のビールの登場によって、価格優位性よりも低カロリーなどの機能性訴求が主力になっていきます。

第3のビール(新ジャンル)の登場

2003(平成15)年、サッポロビールが麦芽も麦も使用せず、エンドウタンパクを原料とした新しいカテゴリーのビールテイスト飲料「ドラフトワン」を開発し、九州4県でテスト販売します。翌年に全国発売して大ヒット商品となりました。

その後、各社が追随して第3のビールは急成長しました。第3のビールとは、ビール、発泡酒に次ぐ3番目のビールという意味で、マスコミによる造語です。

現在のビール市場

ビール、発泡酒、新ジャンルを含めたビール類全体の市場規模(大手4社の出荷数量計)は、2023年で約3億3千万箱でした。その内訳は、ビール1億7千万箱、発泡酒5千万箱、新ジャンル1億1千万箱です。ビール類全体の市場規模は1994年のピーク時の5億7千万箱と比べると4割以上も縮小しています。

近年は、健康志向の高まりを背景にカロリーや糖質などを減らした機能系やノンアルコールの市場が拡大しています。機能系は2020~2021年にビール分野で「糖質0」の商品が登場したことで市場が大きく拡大しました。2023年の機能系商品の出荷数量は6,437万箱でビール類全体の19.2%を占めています。

ノンアルコールビール(アルコール分0.00%)市場は2009年の道路交通法改正で急増し、その後も年々市場規模が拡大。2023年年間のノンアルコールビールの出荷数量は2,128万箱の規模にまで達しています。この数字には含まれませんが、アルコール1%未満の「微アルコール」やアルコール3%台の「低アルコール」を訴求した商品も登場しており、ノンアルビール周辺市場も拡大しています。

ビール、発泡酒、新ジャンルの酒税額は、2020年10月、2023年10月、そして2026年10月の3段階の改正を経て、350ml缶あたり約54円に統一されます。これによりビールは減税になることから、ビール大手各社はビール定番ブランドやビール大型新商品への取り組みを強めています。

また、クラフトビールが勢いを増しています。日本の小規模醸造所数は、2023年12月には805か所と5年間で倍以上となりました(きた産業調べ)。クラフトビールの多様な魅力が支持されており、国内ビール大手各社でもそれらに触発された取り組みが増えています。

特にキリンビールは「クラフトビール戦略」を掲げ、2014年にヤッホーブルーイングと資本提携、2015年にはパブを併設した醸造所「スプリング・バレー・ブルワリー」を開業、2017年からは飲食店向けクラフトビール専用ディスペンサー「タップ・マルシェ」を展開。

キリン社以外では、アサヒビールは2021年にスコットランドのブリュードッグと共同でマーケティングに特化した「ブリュードッグ・ジャパン」を設立、サッポロビールは2018年に消費者とビールを共創する「ホッピンガレージ」を開始しています。

今後は、2026年10月の税制改正によるビール減税も追い風になり、分野別にはビールシフトがさらに進み、ビール分野の中では定番ブランドへの回帰や様々な構造変化が進んでいくことが考えられます。

過去問1

ビール業界の出来事を古い順に並べたものを、次の選択肢より選べ。(2級)

A:ドライ戦争
B:地ビール解禁
C:第3のビールの登場
D:容器戦争

❶A→B→D→C
❷D→A→C→B
❸D→A→B→C
❹A→D→B→C

過去問2

1994(平成6)年の「地ビール解禁」で最初に誕生した地ビール醸造所2社のうち、1社はエチゴビールである。もう1社を、次の選択肢より選べ。(3級)

❶木内酒造 
❷オホーツクビール 
❸ベアレン醸造所 
❹銀河高原ビール

過去問3

次のAからCの出来事を、古い順に並べたものを選択肢より選べ。(2級)

A:「サントリー純生」発売 
B:「アサヒスーパードライ」発売 
C:「タカラビール」発売

❶A→B→C 
❷A→C→B 
❸C→A→B 
❹C→B→A

過去問4

「第3のビール」(新ジャンル)カテゴリーとして最初に発売された商品を、次の選択肢より選べ。(3級)

❶ホップス 
❷北海道生搾り 
❸のどごし〈生〉 
❹ドラフトワン

過去問5

日本でノンアルコールビールは2009年以降急増するが、その大きな要因となった出来事を、次の選択肢より選べ。(2級)

❶酒税法の改正 
❷道路交通法の改正 
❸未成年飲酒禁止法の改正
❹ホームブルーイングの解禁

解答

過去問1:3
過去問2:2
過去問3:3
過去問4:4
過去問5:2

◆本書の目次
Part1 ビールの基本

 Chapter1 ビールとは
 Chapter2 ビールの原料
 Chapter3 ビールの製造工程

Part2 ビールの歴史
 Chapter4 ビールの世界史
 Chapter5 ビールの日本史
 Chapter6 日本の酒税法とビール

Part3 ビールの文化
 Chapter7 ビール文化と触れ合う場
 Chapter8 ビール文化を支える団体
 Chapter9 ビールの消費動向
 Chapter10 さまざまなビアスタイル

Part4 ビールを味わう
 Chapter11 ビールのおいしさ
 Chapter12 ビールをさらにおいしく
 Chapter13 アルコールと健康


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