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MBA教授のベストセラーが教える、やりたくない仕事を楽しくやる方法

仕事の時間を楽しいと思える人は少数派かもしれません。一般的には、仕事の時間は幸せではない時間に含まれるからです。

しかしそれでも、仕事には人生の多くの時間が費やされます。だとすれば、仕事の時間をできるだけ楽しく幸せな時間にしたいと考えるのは自然なことです。

UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)アンダーソン経営大学院のキャシー・ホームズ氏は、ベストセラーとなった著書『「人生が充実する」時間のつかい方 UCLAのMBA教授が教える“いつも時間に追われる自分”をやめるメソッド』(邦訳、翔泳社)で、やりたくないことを楽しくやる方法を解説しています。

本書では、仕事が楽しくないならどうすれば仕事を楽しくできるかを考えることが大切だと書かれています。充実感を得るには、幸せだと感じられる時間を作ることが欠かせません。そして、幸せでない時間を減らすことも同様に重要です。

今回はその方法が紹介されている「第4章 やりたくないことを楽しくやる―やる気を高める方法」の一部を抜粋して紹介しますので、仕事を楽しくしたいと思っている方は空いた時間をちょっと使って試してみてはいかがでしょうか(「時間をつくるには、時間を使おう」が本書のキャッチコピーです)。

◆著者について
キャシー・ホームズ Cassie Holmes

UCLAアンダーソン経営大学院教授。時間のつかい方と幸福度の関係性を専門とし、主要な学術誌のほか、エコノミスト、ニューヨーク・タイムズ、ウォールストリート・ジャーナル、ワシントンポストなどに論文や記事が掲載されている。


仕事だって楽しくなる

仕事をしながら過ごす時間は、1日のうち最も幸せでない時間に含まれるのが一般的です。アメリカの労働者のうち、仕事に満足しているのはわずか半数であり、仕事に夢中になるという人は3分の1しかいません。多くは仕事が嫌で、就業中は時計をにらみながら帰宅時間を心待ちにしているのです。

しかし目覚めている時間の半分以上を仕事に費やす場合、人生のあまりにも長すぎる時間を、なんとか耐え忍んで過ごすことになってしまいます。仕事は仕事、と区切りたいところですが、仕事での不満は職場だけにとどまりません。研究によると、仕事に対する満足度は仕事以外の時間にも影響し、人生全体の満足度を左右する主な決定要因となることがわかっています。

仕事時間が人生のここまで大きな部分を占めるとなると、こうした時間をもっとよい時間にすることが非常に重要です。でも、どうすればよいのでしょうか?

キャンディス・ビラップスという女性の話をしましょう。彼女は仕事について研究者に聞かれたとき、こう答えました。

私は患者さんのことが大好きなんです。病気の人たちが大好き。私には、病気の人にしてあげられることがたくさんあります。なぜなら私自身、気分がすぐれないときや手術を受けなければならなかったとき、仕事があったからこそ乗り切れたからです。冗談を言って、楽しく、元気に、前向きに過ごす。この職場にいて一番楽しいと思うのはそこです。ここは、すごく活気があります。実は私、ここを「希望の館」だと思っているくらいです。

キャンディスの職業が何か、出勤を毎日心待ちにするくらいの仕事が何か、わかりますか? 気分の落ち込みや体調不良も乗り越えるくらい、前向きになれる場所がどこだか、想像できますか?

キャンディスは、がんセンターの清掃員をしています。「希望の館」や「活気がある」職場だと表現したのは、実は命に関わる病に苦しむ患者が化学療法を受けに来る場所なのです。体調をかなり崩している患者さんや、心配や不安を抱えているであろう家族の人たちに囲まれて、キャンディスは日々仕事をしています。

そして、一緒に働いている医師のような立派な肩書きはありません。治療の副作用による嘔吐物の掃除をしなければならないこともよくあります。一見したところ、キャンディスの仕事はポジティブどころではありません。

ところがキャンディスはなぜか、仕事の時間を満喫しています。たいていの人は1年も持たずに辞めてしまうこの仕事を10年以上続け、心から楽しんでいるのです。理由は、自分がなぜこの仕事をしているか、わかっているからです。「患者さんの日々を明るくすることで人の力になる」という目的です。

キャンディスが仕事のなかに見つけたこの目的は、正式な職務内容を大きく超越しています。キャンディスは、病院の床をきれいに保つことに加え、病院の空間を輝かせています。患者や家族の人たちと冗談を飛ばし合い、居心地のよい空間を作り、氷、ティッシュ、ジュースなどを手渡しています。患者や家族、さらにはその治療の責任を担う医者や看護師を、心から気遣っています。

こうした人たちの力になるのが好きだし、得意でもあります。彼女のユーモア、温かさ、前向きな性格のおかげで、病院が明るくなります。仕事に見出した最終的なゴールは、キャンディス自身の価値観や長所と一致しているのです。

これは極端な例であり、キャンディスは徳の高い人ではありますが、仕事に目的を見出すことで恩恵を受けられるというのは、誰にも広く当てはまります。たとえ完璧な仕事に就いていなかったとしても(正直言って、完璧な仕事などありません)、自分の価値観(自分にとって大切なこと)、強み(得意なこと)、情熱(好きなこと)と仕事とを一致させることにより、モチベーションが上がり、仕事がうまくこなせるようになり、さらには仕事や人生全般に満足度が上がることを裏付ける証拠は、増え続けています。

自分にとって大切だと思える明確な目的があり、得意でもある仕事を持つのが理想的です。とはいえ、必ずしも理想通りとは限りません。キャンディスのエピソードがなぜとりわけ役に立つかというと、仕事の種類にかかわらず、自分がなぜその仕事をしているのかを自覚し、そこに意識を向けることで、日々の仕事をもっと楽しめるようになることを、このエピソードが物語っているからです。

さらに、仕事の目的がわかれば、就業日の予定を組み直したり微調整したりして、仕事時間をもっと楽しいものにできるかもしれません。

組織行動学者のジャスティン・バーグ、ジェーン・ダットン、エイミー・レズネスキーは、これを可能にするツール「ジョブ・クラフティング」を開発しました。自分の職業や仕事内容を見直し、仕事時間の過ごし方を変えることで、その仕事の最終目的(あなた自身が決めた目的ややりがい)に近づ
けるようになるためのツールです。

学生たちが仕事の時間をもっと幸せにできるよう、そして1日のほとんどを占める仕事時間をもっと充実させられるよう、私は自分の講座でもジョブ・クラフティングの課題を出しています。これまで数百人という学生にこのプロセスを指導してきて(さらに自分自身でも行って)わかったのは、最も効果を発揮する要素が二つあるという点です。

その二つとは、目的を見つけることと、人とのつながりを増やすことです。それぞれ詳しく見ていきましょう。

仕事の目的を見つけよう

あなたが今の仕事をしているのは、なぜですか? あなたの同僚や、その職業に就いている一般的な人について聞いているわけではありません。あなた自身がなぜかという意味です。またここで言う仕事とは、広い意味の仕事です。

つまり、あなたが時間、労力、才能を捧げている領域のことです。今やっている仕事になるかもしれませんが、それは職業である可能性もある一方で、お金が支払われるものとも限りません。専業主婦(夫)の子育ても間違いなく、ここで言う仕事に当てはまります。

「なぜ」と聞かれたときの即座の答えがもし「お金を稼ぐため」だった場合、ぜひもっと高次の目的――「なぜ」をさらに突きつめたときの答えとなる理由――を探してみてください。これは、あなたのため、つまりあなたの長期的・短期的な幸せのためです。様々な職業や職位、所得水準の従業員を調べた研究では、仕事の最大の目的として「お金を稼ぐ」を挙げた人は、仕事でも人生全般でも、満足度が著しく低いことがわかりました。

自分にとって仕事に対する(給料をもらう以上の)目的、やりがいが何かを知ることで、どんな仕事にも必ずある嫌な面に遭遇しても、長く続けたり、モチベーションを持ち続けたりできるようになります。

キャンディスを例に取ってみましょう。ときに本当に大変な日もあります。患者さんががんとの闘いに敗れたとき、キャンディスはつらい気持ちになります。それでも、その患者さんや家族の病院での経験を少しでもポジティブなものにしたとわかっているため、前に進めるし、仕事に対する思い入れがいっそう高まります。

まったく別の職業ですが、ライリーという女性もまた、よい例です。パーソナル・トレーナーをしているライリーの仕事は、クライアントのためにトレーニングの計画を立てて実行することです。しかしライリーは、自分の目的がそれ以上のところにあると思っています。クライアントがもっと自分自身を好きになり、もっと強く、もっと人生に自信が持てるようになるのを手助けすることが、彼女の最終的なゴールなのです。

自分には何もできないと言い訳するクライアントに対し、何ができるかを気付かせます。これが、彼女にとっては喜びなのです。とはいえ、仕事のすべての面が大好きというわけではありません。

カメラの前に立ってワークアウト・ビデオを作り、オンラインに投稿してマーケティングしなければいけないのが嫌でたまりません。でも、サービスの宣伝や動画制作は、事業を続けるために必要です。

そのため、気が乗らないこうした作業をする際には、このおかげでより多くの人にリーチできる――もっと強く、もっと自信を持つために、より多くの人を手助けできる、と思い出すようにしています。嫌なタスクでも、それだけの価値があるのです。

これまで見てきた通り、意義深さと幸せはつながっています。あなたの仕事の目的――あなたが時間をつぎ込み、(嫌なものも含む)タスクに取り組む究極の理由――を知ることで、モチベーションとやる気、充足感、満足感が維持できるようになります。

目的には、キャンディスやライリーのように自分以外の誰かが関わる必要はありません。人助けによって意義を感じられるというのは一般的ですが、目的となるきわめて価値あるものは、ほかにもたくさんあります。

例えば、プロの写真家として働くマットという男性は、何かを作り出すことがモチベーションになっています。ほかの仕事は「誰にでもできる。僕ならでは、というものがそこにはありません。でも僕が作った作品は僕だけのもので、僕だけがこの世に送り出したのです」と指摘します。

若い黒人男性としてマットは、自分の作品のおかげで、社会での自分の居場所、社会に貢献するものができたと強く感じています。「何かが心に浮かんでも、僕には絵で表現することはできません。でも、それを見て写真に撮ることはできます。こうして、そこに命を吹き込めるのです」

キャリアを確立したマットは今、社会正義の追及も、仕事へのモチベーションになっています。仕事の目的をこう説明します。「きちんと語られていない、あるいはまったく語られていない人々の物語や人生の側面を映し出した画像を作ること。不当に扱われ、のけ者にされている人々の物語です」

マットが目指すところははっきりしています。彼の仕事を通じて、「より多くの人が、自分自身を芸術作品だと見られるようになります。より多くの人が、自分は美しく、価値があり、認められていると感じるようになるのです」。

さらにほかの人からも、そう見られるようになります。マットの仕事の目的はあきらかに、写真(彼の場合、雑誌の特集記事や映画の販促素材でつかう有名人やモデルの写真)を撮ることで生活費を稼ぐという、写真家としての仕事を大きく超越しています。

有色人種の有名人やプラスサイズのモデルの写真を撮ることで、公平性や包摂性という自分のビジョンを実現する充足感を、マットは見出しています。自分の作品を通じて、よりよい現実を作り出しているのです。

ということで、自分にとっての仕事の目的を見極める際には、正式な仕事内容に捉われずに考えてみましょう。また、一般的にその職業に持たれているイメージに捉われてもいけません。

例として、金融業界で働く男性、アレックスのケースを見てみましょう。資産運用会社を所有しているアレックスの仕事内容は、超富裕層の個人客のお金を増やすべく、投資したり貯蓄のポートフォリオを扱ったりすることです。

しかし、何が彼を仕事に駆り立てているのかと尋ねると、お金ではなく、顧客の心の健やかさだとアレックスは言います。とりわけ、離婚訴訟中のクライアントにお金に関するアドバイスができる自分の専門性に、強い思い入れを抱いています。子どもを失うことの次に人生で最もつらいのは離婚だと、アレックスは考えているのです。そして自分の目的は、人生のつらい時期を過ごしている人たちをサポートし、大丈夫だと安心させることだと言います。

大学教授である私の仕事内容は、研究と講義の実施と、学校の管理業務を行うことです。ジョブ・クラフティングのエクササイズを行ったおかげで、教授という仕事に対する私なりの「なぜ」を考えるようになりました。目的として最初に浮かんだ答えは、知識の創造と拡散でした(同僚からヒントをもらいました)。そのため、委員会の一員を務めたり、マーケティング部門の責任者を務めたりといった管理業務は、主な仕事ではないと考えました。

ところが、自分の答えをもう少し考えてみたら、学術界で一般的なこの目的は、本当の意味で私のモチベーションにはなっていないと気付きました。そこで、もう一枚奥の層にある「なぜ」に対する答えを見つけるべく、さらに自問しました。

なぜ私は、知識を作り出し、それを学生たちと共有したいのだろう? もちろん、学生たちがさらに賢くなるよう手を貸したい、という思いはあります。でももっと正直なところ(そしてみなさんも気付いたかもしれませんが)、私が本当に気にかけているのは、彼らの幸せなのです。学生たちには、日々感じる幸福感や、人生への満足度に影響を及ぼすような決断を、うまく下せるようになってほしいのです。

もっと具体的に言うと、私が(よい意味で)寝る間も惜しんで取り組む研究プロジェクトや、ワクワクしながら行う講義は、どうすればもっと幸せになるかという知識が関係しています。

自分が「なぜ」この仕事をしているかという自問をさらに深めていくと、三つ目の層で私の目的が見つかりました。

私が究極的に目指しているのは、(1)研究、(2)講義、(3)管理業務ではなく、(1)幸せの知識の創造、(2)幸せの知識の拡散、(3)UCLAでの幸せの醸成だと悟ったのです。

大げさな話をするつもりはありませんが、このエクササイズのおかげで私は、自分の使命を見つけることができました。このエクササイズは、心の底から大切だと思っている仕事に自分は従事しているのだと気付かせてくれ、そのおかげで、仕事にやりがいと楽しさをもっと感じられるようになりました。

また、目的を特定したおかげで、仕事の時間をどうつかうか――どのプロジェクトや委員会に参加し、どれを断るか――がわかり、役に立っています。例えば、博士課程にいる学生が研究のアイデアを持って私のところに来た場合、それが人の幸せに関する理解を深めるものだと思えれば、私はきっとそのプロジェクトの指導を引き受けるでしょう。

実際に、私の幸福学の講座にもう一つクラスを設けてほしいという要望があったときは、すぐに受け入れました。一方で、SNSをつかった効果的なキャンペーンに関する学生主催の会議に、パネリストとして登壇を依頼されたときは、迷うことなく断りました(私はマーケティング学の教授なので、妥当な依頼ではありました)。

自分にとっての全体的な目的が何かわかったことで得られたもう一つの利点は、特定のタスクの捉え方が変わったことです。タスクが自分の使命にどう役立つかがわかったおかげで、それに取り組むモチベーションが上がり、その時間をもっと楽しめるようになりました

例えば、私はメールの返信作業がどうしても好きになれません。ところが、共同研究者へのメールを「幸せの知識の創出」、学生へのメールを「幸せの知識の拡散」と捉え直すことで、こうしたメール書きが急に、満足度の高い価値ある作業に感じられるようになりました。

さあ、今度はみなさんの番です。あなたにとっての目的、やりがいは何ですか? 難しい質問ですよね。ぜひ深呼吸して、強いお酒か紅茶でもいれて、なぜ自分は今の仕事をしているのだろう、とブレインストーミングしてみましょう。

ある程度納得のいく答えにたどり着いたら、もう一度、問いかけてみます。なぜそれが、あなたにとって重要なのですか? そこで出た答えに対してさらに「なぜ」と問いかけ、より奥深い層へと掘り下げていくのもよいでしょう。

このエクササイズを行う際には、自分の目的として見つけたものは、究極的にはあなただけに大切なものだという点を覚えておいてください。こう考えると、解放感を得られるはずです。

なぜなら、あなたにとっての成功の基準は、人が決めるものではないという意味だからです。あなたは、自分だけの物差しを手にすることになります。その物差しのおかげで、モチベーションが内側から湧き続けるうえ、自分を他人と常に比べて気にすることもなくなります。

幸せでない時間も幸せにする

退屈な仕事に屈してはいけません。仕事の時間がただ過ぎるのを待っていてもいけません。あなたの人生の貴重な時間であり、無駄になんてできません。

これまで信じ込まされてきたこととは異なるかもしれませんが、家事、仕事、通勤をしながら過ごすその時間だって、間違いなくあなたのものなのです。そして、その時間をどう過ごすか、あなたには驚くほどの選択肢があります。

ほんの少しの意図を持って取り組むだけで、一見するとごみ箱に捨てるような時間を、喜びに変えることができるのです。いつもなら日常で最も幸せに感じられなかった時間を、もっとずっと有意義で、人とつながれる、楽しい時間に変えられる戦略を、今のあなたは手にしています。小さな変化ではありますが、その効果は絶大です。

◆本書の目次
第1章 私たちはみな時間貧乏―最適な可処分時間を考える
第2章 時間をつかうことで、増やす―時間的余裕を感じる方法
第3章 幸せな時間、幸せでない時間―最も賢明な時間のつかい方
第4章 やりたくないことを楽しくやる―やる気を高める方法
第5章 幸せな時間をもっと幸せにする―喜びを常に更新する方法
第6章 先のことより「今」に集中する―幸福度を上げ、成果を出す
第7章 時間を費やすべき大切なことは何か?―取捨選択する方法
第8章 カンバスに、1週間を描いてみる―スケジュールの最適化
第9章 人生全体を俯瞰してみる―長い目で見ることの効用

〈エクササイズ一覧〉
・体を動かすエクササイズ
・無作為に親切にするエクササイズ
・時間記録エクササイズ パート(1)
・時間記録エクササイズ パート(2)
・時間記録エクササイズ パート(3)
・睡眠エクササイズ
・五つの「なぜ」エクササイズ
・残り時間算出エクササイズ
・五感をつかった瞑想法
・デジタル・デトックス・エクササイズ
・喜びに満ちた活動エクササイズ
・追悼文エクササイズ
・憧れの年長者から学ぶエクササイズ
・感謝の手紙エクササイズ

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