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【魔女と獣とふたり旅】時つ風と悠久の宿り木2/5【リプレイ】【完結済】

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メインフェイズ 開始
最初のスポット 『枝の上』
魔女の子の手番スタート
ーーー
 樹精
「…………ん………?」
ゆ~~……っくりと、首を傾げる。

「……ってことは……」
樹精の視線はシルヴィへと向けられた。
 
シルヴィ
「なっ…なに…?」
同じように視線を向ける。
 
樹精
「……おいしくない?」
瞳の色がワントーン昏くなったような気がした。
 
シルヴィ
「そもそも食べ物じゃないっ!」
瞳の変化は気になるが、そこは譲れない。
 
樹精
「………そっか……」

その瞬間、ツタの拘束が緩められ

「…………ん…カラス………落ちてこないかな………」

樹精の視線がゆっくりと上空に戻っていく。ツタに巻き付けられ、釣り上げられていたシルヴィは当然……

現在の高さ8m。自然落下が始まった。
 
シルヴィ
「えっ」

やっぱり助かってなかった。上空よりはマシとはいえこの高さは無事では済まない。このまま緩んでしまっては結果は明白だ。

一応まだ巻き付いているツタを必死で掴む。自分の体が抜け落ちそうになりながら力いっぱい叫ぶ。

「そんなっ…カラスなんかより美味しいものいくらだって食べさせてあげるわよっっ!!」

食べたことは無いが、野鳥を焼いただけのものよりアップルパイやはちみつたっぷりのパンケーキ、花の蜜やハーブを使った紅茶の方が美味しいに決まってる!

そもそも自分よりカラスを優先ってどういうことだ。落とされたら危ないという気持ちもあるが、様々な気持ちが混ざりあいそう叫んでしまった。

「だからっ…この高さは危ないからここからは落とさないで!!」

ツタに自分から巻かれに行くなんて初めての体験だった。
 
GM
ツタに開放されながら。しかし君はそれに精一杯抗いもつれながらも、確実に地面に近づいていくそして、一縷の望みを掛けて叫んだーー

1d10 地上までの高さ (1D10) > 4

地上まで4センチ。鼻に土埃が入ったかもしれない。少し遠くなった頭上から呑気な声が聞こえた。

「………え?」
 
シルヴィ
「……」
不思議なテンポの、このツタの主に文字通り振り回されている実感はある。とはいえ、いったんは危機を脱した。またしてもぐるぐる巻きになってしまったが、慣れとは恐ろしいものである。そのまま会話を試みる。

「美味しいもの、食べたいんでしょ?」
 
樹精
「…ん。」
心なしか、無言の間隔が狭い。
 
シルヴィ
安堵と呆れのため息を短くつく。

「甘いのがいい?それともお肉が好き?」

ツタで支えられているのを利用して、くるっとツタの主の方へ体を向ける。

「言ってくれたら作れるものは作るわよ」

助けてくれたお礼なのか、作るから助けてほしいのかよくわからないが

「でも私が怪我したら作れないからね!」

クギは刺しておこう。
 
樹精
「……。」
キミの言葉を聞き届け、ゆっくりと頷いた。

「……ちょっと…待ってて…」
樹の住人は、その両の手を自身が座る太めの枝にピトッ……と付ける。

「……ん~……っと……」
樹精は少し力んだ。次の瞬間、キミの身体に巻き付くツタの1本1本が意志を持つかのように、その形状を変えとぐろを巻き、キミがちょうど足を乗せられるぐらいの面積となる。

シルヴィはと言うと、ツタによって子猫の様に首根っこを摘ままれながら、その不思議な光景を目の当たりにしていた。
 
シルヴィ
「ねぇ、ちょっと…持ち方…」

持っているという言い方で良いのかどうか。まぁ先ほどから自在にツタを扱っているんだし手足のようなものなのだろう。

「ここに立てってこと?」

ツタでできた足場を指さす。
 
樹精
「……ん。」
コクリと頷いた。
 
シルヴィ
頷くのをみて、足場へと恐る恐る立ってみる。思いのほかしっかりしていて安定しそうだ。久しぶりに足をつくのが地面ではないのが不思議な心持ちだ。

「…立ったわよ」

それにしても、本人よりツタを見ている方がわかりやすいだなんて。やや腰が引けるのは仕方ないが、しっかりと乗ってから声をかけた。
 
樹精
蜘蛛の糸の様に垂らされたツタをピンと弾きながら、呟いた。

「……つかむ?」

食べ物が絡むと人(?)は優しくなれるらしい。

シルヴィ
「えっ…」
ツタと本人を見比べて、そっと掴んでみる。

「うん…ありがと…?」
戸惑いはあるが、気づかいは嬉しい。やっぱり優しいのかも?と思いつつツタを掴んだ。
 
樹精
君が掴んだのを視認すると、両の手を枝から剥がし、右手の人差し指をクイっと曲げる。するとツルがゆったりと巻き取られ、樹精が座っている枝と同じ高度まで来た。

樹精の棲み家らしいそこは、クッションも何もなく、長年座られているであろう枝の樹皮が若干剥がれているだけの場所だった。

「……ん。」
近くの大きめの葉っぱをむしって、自身の隣にパサリと置いて

「……んん。」
トントンと叩いた。
 
シルヴィ
「座っ…て、いい、のね…?」

好意的かは判断しかねるが、これまでの行動をみるにとくに悪意があるようでもない。素直に招かれるにしたがって横に腰をおろす。

「こんなに高いところ…」
空を飛ぶのとはまた違う感覚だ。比較的安定するように体勢を整える。

「えっと…初めまして、って言ったらいいのかな?」
ようやくきちんと顔を合わせられたのだ。挨拶は大事だ。

「私はシルヴィ。…助けて?くれて、ありがとう」
結果的にね、助かってるからね!
 
樹精
シルヴィが名乗り、感謝の言葉を述べ…られる前に樹精はキミに顔をグイっと寄せた。挨拶って何だろう。

「……シルヴィ………」
コクリと頷く。 瞳に光が差す。

「…カラスより…美味しいもの…って……何……?」
相当に食欲が旺盛らしい。
 
シルヴィ
「え……っと…」
急な近さに驚くが、瞳は何よりも雄弁だった。
 
樹精 ギラギラ
 
シルヴィ
おなかのすいた小動物のようだ。顎に手を当てて少しだけ考える。前に作った、作れるものは何だったかな…?
 
樹精 ジリジリと距離が詰められていく・・・
 
シルヴィ
「ちょっと!近い!落ちる!」
太い枝に座っているとはいえこの勢いで来られたらひっくり返ってしまう。

「教えるから!ちょっとだけ離れて!」
ツタの主の肩を適切と思われる距離感までぐいっと押す。

「もー…」
 
樹精 パチクリ。 キョトンとしている。
 
シルヴィ
「…ふふっ」
「あのね、ちゃんと教えるし、作ってあげるからそんなに慌てないで」

なんだかちょっと可愛らしく思えてきた。小さな子供を相手にしているようだ。

「うーんとね、甘いのだったらアップルパイとかパンケーキ、スコーン、マフィン…色々あるけど、生地を甘くしちゃうのもできるし、後でジャムを乗せても美味しいのよ」

「食事だったら…そうね、ミートパイとか、シチュー、ハンバーグなんかどう?あと、オムレツやキッシュだったら具材次第でたくさんの味が作れるわ!」

「飲み物ならフルーツティー、ハーブティー、カプチーノ……苦いものが大丈夫だったら、甘いおやつにストレートティーやコーヒーなんかも合うんだから!」
 
樹精
料理の名前が読み上げられる。そのたびに、瞳の輝きが増していく。その反面、いつまでたっても半開きの口、角度の変わらない眉…顔の表情は全く変わらなかった。

シルヴィ
「作るのだって楽しいのよ!パン生地なんかほっといたらすっごくふくらむんだから!」

表情は読めないが、瞳の輝きが増していくので興味を持っていると判断する。するしかない。

「だから、あたしをちゃんと家に帰さないといけないんだからね…」

ひとしきり話し、重要なポイントを告げてちらりと隣の人物を見る。
 
樹精
君が “作る” “家に帰さないと”。そう、言葉を吐く度に、瞬きを一つ二つ。瞬きに伴って瞳の輝きが消えていく。

「………もし…かし…て……」

クゥーーーーとお腹が鳴る。瞳孔が揺れる。ついでに側頭部から伸びている枝の先端も少し揺れた。

「……今………ない……?」 @
 
シルヴィ
「えっ…」
一気に雲行きが怪しくなった。

「え~…っとぉ…」冷や汗ダラダラ

正直、無い。当たり前だ。さっきまで遊んでいただけなんだから。

(何か…!何かないの…!)
必死にポケットを探る。
 
樹精 「……」ジィイイ… (〇 〇)
 
シルヴィ
小腹がすいたときのためのクッキーが出てきたが割れてしまっている。

(もしかしたら…)
「ねぇ…この木って、花とか実とかって…ある?」
 
樹精
「…?」 震えが止まる
「…私は…ここから動かない……だから……知らない……」
「…けど……」 @
 
シルヴィ
「…けど……?」@
 
樹精
「……いっしょに……探すことは……出来る…」 @
 
シルヴィ
「!探してくれるの!?」

とりあえず目的を説明しなければ何を探したらいいかもわかるまい。ポケットからぐしゃっとなっているクッキーを取り出して見せた。

「これにね、甘い蜜や樹液、実とかを混ぜたらおいしいものができるのよ」
「一緒に探しましょ!ねっ!!」

シルヴィの命や如何に…!

第3話に続く!
https://note.com/shochan919/n/n0c71144f4083

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