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【魔女と獣とふたり旅】時つ風と悠久の宿り木1/5【リプレイ】【完結済】

「今日は良い風ね! 何かいいことがありそう~!」

気の赴くままに風に乗って飛ぶ少女が一人。上機嫌に鼻歌を歌いながら、びゅんびゅん飛んでいく。

此処は瑠璃色の大地。一握りの存在にだけ与えられる魔法。風の魔女であるシルヴィは、その自慢の魔法で空中散歩を楽しんでいた。

ーー制御?

そんな言葉は、彼女の辞書には無かった。

上空の景色

「飛ぶのがこれっていうのがちょっと惜しいけど…」

乗っているのは家にあった古ぼけた物干しざお。いったいいつから使われていたのか…家に他に棒状のものが無かったので適当にひっつかんできたものだ。

「まぁいっか!」

それよりも気持ちよく飛ぶ方が大事だ。ただ、その勢いに使い古しの木の棒が耐えられるだろうか?足元の棒に若干亀裂が入っているのも気づかない。

「よいしょーっ!」

調子に乗って一回転しようとしていた。
 
GM
君は”選ばれた存在”だ。才能があったから選ばれたのか、選ばれたから才能が生えたのか…それは今は大きな問題ではなかった。難なく、華麗に一回転を決める事に成功する。
 
シルヴィ
「今日はなんでもできそう!」
 
GM
ーー何でもできそう。君がそう言った瞬間、空の彼方…何やら黒の粒々が見える…様な気がする。
 
シルヴィ
「ん?あれ、なんか…?」

視界の端に黒い粒がうつった気がした。でもまだ距離も遠く、あまり自分には影響がないだろうと飛行を楽しむことにした。
 
GM
君は無謀にも危機を前にし、それを脇に置いて今を楽しむ。…だがそれは一瞬でやって来てしまった。
 
大ガラスの群れ
「ガァァアアアア~~~~!!!」
1d100羽  (1D100) > 72羽!

1羽だけでも大変だというのに、迫ってくる大群は50を超えていた。
 
シルヴィ
「えっえっ!!きゃぁっ!」
気づくのが遅れ、回避が間に合わない。
 
大ガラスの群れ
「ガァァアアアア~~~~!!!」 ×72! @
 
シルヴィ
なんとか旋回しようとするが、古い物干し竿はこんなときに限って言うことをきいてくれない。

「きゃぁぁーーーー!」@
 
GM
そして、キミの精神に追撃を掛ける様に聞こえた 『バキッ』という音。君は思わず物干し竿を見る。
 
シルヴィ
「へっ?」

足元にあるはずの一本の棒は、無残にも中心から二つに分かれていた。
 
大ガラスの群れ
「お! なんやそれ!」 カラス1
「なんや 邪魔くさい!」 カラス2
「いいじゃねーか! 巣作りにつかえそー!」 カラス3
「ガーァァアア ギャギャ!」 ×3
 
シルヴィ
「えっちょっ、待って、だめ!」

鳥言語で会話を試みるも、焦っていてうまくいかない。そうこうしているうちにもカラスは元・物干し竿に群がり強奪しようとする。ならばと身体を浮かせられるような魔法をと思うが、周囲のカラスの大群で風がきちんと読めない。奮闘むなしく、自分の体が重力を感じ始めたのが分かった。
 
GM
キミの身体は重力に従い
遥か下の地上へと落ちてゆくーー
 
シルヴィ
「…きゃぁぁぁーーーーーっ!」
 
ーーーーー
一方その頃、下界
 ーーーーー
樹精
「………。」
「………あ。」
「………………。」

手を上に伸ばし息を吸いこむ。その象っただけの身体に、どれだけの感覚があるのだろうか?

「……………いい風……」

生命の力強い息吹を感じさせる大樹。その頂に彼女はいた。いつもと変わらない日常、日向ぼっこ。
ーーーーー
GM
一方その頃、落下中のシルヴィはというと…
意識を失ってしまえば、良かったもののばっちりと残っている。風の守護を心の底から憎んだかもしれない。
 
シルヴィ
「空なんかっ…飛ばなきゃ…」

さっきまで楽しんでいた飛行を否定しかけるが、口をつぐむ。自分の油断が招いたことだ。とはいえ痛いのも嫌だし、ましてや死にたくもない。なんとか集中して落下の衝撃を弱めなくては。頭ではわかっているのに、恐怖で思考がまとまらない。意味はないと思いつつも大きく叫んでいた。

「誰かーーーー!助けてぇぇ!!」

ーーーーー
一方、下界では
 ーーーーー
樹精
「…………あ。」
何かに気づく

「…………ん。」
顔に落ちた葉っぱを払いのけた。
ーーーーー
GM
シルヴィ、君が上空から森に突っ込んだその時だった。視界の片隅、涙でぼやけて見えにくいが君はそれを確かに捉えた。樹の頂に誰かがいたのだ。まだ、軌道を修正する事ぐらいはできるかもしれない。

その時、キミはーー
 
シルヴィ
樹に突っ込んだことで多少衝撃は軽減される、と思ったとき、人影が目についた。

このままだとぶつかるーーー?!

ぶつかるという可愛いものではないかもしれない。自分のせいで人が巻き込まれるなんてごめんだ。自分は魔女だ。力がある。それによって結果的に人を傷つけるなんて絶対に嫌だった。

今ならまだどうにかできる。一気に頭が冷え、集中する。今は風に乗る道具はないが、なんとか体をひねり空気の流れを変えることはできそうだ。

「危ないっ!!」

目下の人影に声をかけつつ、枝葉の方へ体をずらす。自分の体が細い枝を折っていく音を聞きながら、うまくいったことを願ってきつく目を閉じた。
 
GM
選民思想…優越感…後悔…それらは死の間際では、何の効力も持たなかった。動であるキミと、静である樹の住人が宙ですれ違う。
 
樹精
「…………あ」
そんな呑気な声が聞こえたかもしれない。
 
GM
このまま大地にぶつかり、その身が砕け散ると思われたその瞬間。君の体はツルでグルグル捲きにされ、地上まで残り…
1d100 (1D100) > 85
85㎝といった所でキュキュキュ!と止まった。
 
シルヴィ
「っ!…んぇ?」

いつまで経っても衝撃が来ない。目を開けてみると、自分の体が落下を止めている。落ちる途中で枝葉が絡んだのかと思っていたが、ツタが巻かれているようだ。

「ん?んん??」

混乱する中、そっとツタを視線でたどってみる。

樹精
「…………ん。」

無表情でパチパチと瞬きを繰り返す。

「…………埃……か……」

若干不機嫌そうに目をこする。キミの事は視界に入っているが全く意に介していないらしい。

シルヴィ
「えっと、あの…」

自分と相手の状況の温度差で戸惑ってしまう。ツタで繋がっているのに別世界のようだった。

「ねぇ!このツタ…あなたがやってくれたの?」

まさか偶然とは思っていないが、確認はしておきたかった。
 
樹精
「…………………ん?」
視線が初めて合った。

「………ん。」
首を傾げ、そして頷いた。
 
シルヴィ
「あっやっぱりそうなんだ…」

不思議な子だな、と思うが悪意は無さそうだ。何より自分を助けてくれた。

「あのっ!助けてくれてありがとう!」

極力顔を向けて言う。まだぐるぐる巻きなので体勢が変えられない。
 
樹精
言葉を交わせた。君がその事実に安堵した、次の瞬間。

「………おいしそう」

猟奇的な言葉が無表情な口から飛び出した。
 
シルヴィ
「へぇっ!!?」

助かってなかった。新たな死の危険を察した。

「あた、あたし食べても美味しくないんだから!」

なんとか体を動かそうとする。しかし、あの落下を止められるくらいの強さのツタは微動だにしない。
 
樹精
グググ…とゆっくり釣り上げられていく。やがて同じ視線の高さに来ると、樹の住人の口が開いた。

「………この地域は……」
「…よく…オオガラスが…落ちてくる」
「…丸焼き…おいしい………」

相変わらず無表情で、食事への期待を呟く。

「……けど……? なんか形が……違う?」

ゆっくりと首が傾いた。ハテナマークが見えたかもしれない。
 
シルヴィ
このままでは丸焼きにされる。状況は完全に把握した。

「あたしはカラスじゃないっ!人間よ!にーんーげーん!」
 
樹精
「にん…げん…………?」

必死過ぎるキミと ポカーンと小さな口を開く彼女
こうして 正反対すぎる2人は 出会ったのであった。
  
ーーー
予兆フェイズ 終了
キーピース 『樹の住人…?』 獲得
魔女の子は 魔力を1 獲得してください
魔獣は シナリオ値と同値の 絆ポイントを獲得してください
 system[ 樹精 ] 絆 : 0 → 2
 予兆フェイズ 処理終了

第2話へ続く(URLは下記!
https://note.com/shochan919/n/ncc7510f7e680

登場人物

シルヴィ:風の魔女の子。PLさん。
GM:ゲームマスター。本リプレイ著者のしょーちゃんが担当。
樹精:魔獣。GM兼任でしょーちゃんが担当。データ的には最後の守護者。

5回に分けて、リプレイ投稿しました!
このセッション分は完結させました!

キャラの立ち絵、描いちゃいました。載せちゃう。
(無断転載禁止)

シルヴィさん。風の魔女(魔女の子、PLさん担当)
後日、着色した
樹精さん(魔獣、GM担当)

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