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【魔女と獣とふたり旅】くさび石となまけた龍と溶岩湖(1/10)【TRPG/リプレイ/完結済】

「小さき者よ」

地獄に迷い込んでしまった一人の少女がいた。
彼女は今、灼熱の吐息に包まれている。
この地獄を創り出している存在…紅き龍の声が轟く。
 
「ここは我が領土」
 
足元に落ちたツルハシを一瞥する。ピンッと爪で器用に弾き飛ばした。
 
「侵しただけでは飽き足らず、我が宝を盗もうとするとは」

ギロリ…と鋭い眼光が向けられる。
 
「その行い…万死に値する」

褐色の肌に癖のある銀の頭髪。澄んだ深緑の瞳を宿した少女、スフィーネ・アッシュヤードは、小さく小さく縮こまって、肩を震わせながら叫んだ。
  
「ごめんなさい~!!悪気はなかったんです~!!ここのカワイ子ちゃん達……鉱石達が!とても魅力的だったので~~!!」

地面に頭を擦り付けるように平伏する。それはそれは綺麗な土下座だったーー……
 
ーーー
予兆フェイズ、開始
ーーー

遡る事数刻前ーー

「お前に足りんもんを外で勉強してこい。」
 
ある朝のことだった。君が信頼を寄せる師匠は、唐突に告げる。

ーー出ていけ、と。

スフィは、自身に足りないモノが何なのか…そのとっかかりすらない状態で唯々、鉱石を採掘していた。
 
「はぁ~...何が足りないっていうのかな師匠は...。アタシの魔石ちゃん達はこんなに優秀なのに...。」

採掘の手を止め、一つ袋から取り上げた。自身が加工した魔石は周囲の光を反射し、キラキラと輝いている。

「にしても...……あっついよここ!!」

魔石を掲げながら叫ぶ。が、その声は虚しく岩壁に吸い込まれていった。

「やっぱり、熱吸収用の魔石作っといて良かったな...暑いけど。」

スフィは土の力を持つ魔女だ。属性で言えば地属性。周りに鉱石が溢れるこの場所は、第六感が働きやすい場所なのだろう。視線の先には巨大な火口。噴火が永遠と繰り返され、幾つもの雷が発生し、魔力が溢れ出していた。

彼女は経験上、知っていた。
力が溢れる所、魔力あり。
魔力ある所、我が子(鉱石)あり…と。
 
「......。」

視線を火口から外さず、彫刻刀収納ベルトに吊り下げた魔力探知用魔石を手に取る。

「...どうかな、タンちゃん。あっち。」

深い緑色に輝く魔石を火口へ向け、話しかける。
 
「呼ばれたッ!」

鉱石を魔石たらしめる魔法陣がきらりと輝く。この暑さを物ともしない、元気で無邪気な声が響く。

「うーんどうだろ?わっかんないけど~ヤバい事が起きてる場所はさ?派手な報酬もあるって訳よ!」
「う~ん...そっか...。」

IQが低そうな声に少しガッカリしつつも、言わんとしていることは理解できた。
 
「ビビビ!あー!ねぇ!いま!失礼な事!考えた!?考えたでしょ!!愛してよ!ありのままの私を!」
「なぁ~もう、ごめんごめんって!ありがと!アイシテル!!」

乱暴にベルトへ吊し直した。
 
「あぁ~……」

賑やかな魔石の声が遠のく。適正な音量となった声で、ん~…と唸りながら話を続ける。

「あそこに向かって…?…魔力が沢山…?」

自身を使ってキラリと光を反射し道を指し示す。スフィの目の色が得物を狙う猟師のそれへと早変わりした。

「……あそこだね!!!?待っててよ~!カワイ子ちゃん達~~!!!」

駆けるスフィの腰元で魔石が呟く。

「ん~?…でも…なんだろ……この魔力は……。…ま!いっか!」
 
かくしてスフィは好奇心のままに火口へ向かってしまうのであった。

……そこが、地獄だと知らずに……

――
予兆フェイズ、終了
キーピース : 好奇心は猫をも殺す 獲得
魔女の子は 魔力を1 取得してください
system[ スフィ ] 魔力 : 0 → 1
魔獣は 絆Pをシナリオ値と同値分獲得してください
――

ーーーー
第2話は以下のリンクからどうぞ!良かったら「💛」も押して行ってください~!

紅き龍。 画像は七三ゆきのアトリエ様(https://nanamiyuki.com/)より
https://nanamiyuki.com/archives/4962
(色を変えさせていただいております)


土の魔女、スフィーネ・アッシュヤード。モモクルが可愛い。
五百式立ち絵メーカー様より(https://picrew.me/image_maker/625876)


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