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これからの恋愛の話をしよう――石田月美・二村ヒトシ往復書簡

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対話7-B 心の穴の、その先へ(石田月美)

対話7-B 心の穴の、その先へ(石田月美)

二村ヒトシさま

この往復書簡も幕を閉じます。あっという間のようで密度の濃い時間を、この連載の中で過ごさせて頂きました。二村さん、いつも生意気な私の書簡に丁寧にご返答くださり、本当にありがとうございます。

この連載を始めてつくづく分かったことは、否定するのは簡単だが、肯定しつつその先を考えるのはいかに大変かということです。

前半戦では、私から心の穴への問題提起をさせて頂きました。そして後半戦で

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対話7-A これからの恋愛論(二村ヒトシ)

対話7-A これからの恋愛論(二村ヒトシ)

石田月美さま

この往復書簡の連載で、月美さんの知見と筆の力によって、僕の考えはずいぶん更新されたように思います。本当にありがとうございます。

『なぜあなたは「愛してくれない人」を好きになるのか』に「恋とは、相手を“得る”ためにするものではなく、自分を“知る”ためにするもの」と書きましたが、これからは、

「恋愛(や結婚)は、いまの自分であり続けるためにするのではなく、自分が“変わる”ためにする

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対話6-B 他者を受け入れる心の余白(石田月美)

対話6-B 他者を受け入れる心の余白(石田月美)

まず、二村さんの問題意識を私なりに整理させてください。

二村さんは、そもそも恋愛を始めるために動くことがうまくできず、恋愛を始めることができない男性について、次のようにおっしゃいました。

つまりこの問題は、恋愛ができない男性は女性に対する恐怖心から支配的になったり暴力的になったりする、ということだとも解釈ができます。そのような男性も一部にはいらっしゃるのかもしれません。であるなら、やはり心の穴

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対話6-A 欲望と信念と矛盾と「見ること」と非モテ(二村ヒトシ)

対話6-A 欲望と信念と矛盾と「見ること」と非モテ(二村ヒトシ)

石田月美さま

なるほど。

たしかに「あなた」が主語のときも「わたし」が主語のときも、「べき」を使わないほうが人の心は苦しまないですね。

「べき」を使わないべき、などと書いてはアホですから(僕はつい書きそうになります)、「べき」を使わないほうが恋愛を考えるときに(なにを考えるにも)有効だと表現するのが、読者にとっても書き手にとっても有効でしょう。

わたしが「してほしい」のに、それを、あなたが

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対話5-B 「女性はどうすべき?」とは(石田月美)

対話5-B 「女性はどうすべき?」とは(石田月美)

二村ヒトシさま

私の生意気な書簡に対し、いつも丁寧にご返答頂き痛み入ります。私の文章が二村さんのおかげで解体され、よりわかりやすくなり嬉しく思っております。

と、二村さんからご提言を頂きましたので、今回はそのことについて考えていきたいと思います。

べき思考の罠実は、私は今まで書いてきた原稿の中で「〜べき」という表現を使ったことがありません。なぜなら、「〜べき」という言い回しの裏に「正義」の圧

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対話5-A 男性がすべきこと(二村ヒトシ)

対話5-A 男性がすべきこと(二村ヒトシ)

石田月美さま

小さな主語こと「かつてあった愛嬌を失った男」とは、もちろん精神肉体あらゆる部位において日に日に老いを自覚していく僕自身のことなんですが、そんな僕がどうしたら愛されるのかという自分ばっかり見ている切迫した問いは一蹴され、より多くの男性読者に役に立ちもちろん僕にも完全に役に立つ「シスヘテ男性が女性から愛してもらうためには」に関するアドバイスを月美さんからいただきました。ありがとうござい

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対話4-B 自分ばっかり見ていないで相手のことをよく見てください(石田月美)

対話4-B 自分ばっかり見ていないで相手のことをよく見てください(石田月美)

二村ヒトシさま

二村さん、本当にありがとうございます。どんどん「心の穴」の解像度も上がり、また「心の穴」のロジックが進化を遂げているように感じています。それを間近で目撃することが出来、嬉しくもありスリリングでもあります。アップデートされた「心の穴」はどこに辿り着くのか、今から楽しみです。

今回の書簡で二村さんから頂いたご質問は「かつてあった愛嬌を失った男は、女性から愛してもらうために、どうやっ

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対話4-A 中年や初老の男性が愛を伝える方法について教えてください(二村ヒトシ)

対話4-A 中年や初老の男性が愛を伝える方法について教えてください(二村ヒトシ)

前回、「心の穴っていう言葉が大きすぎてまずいのは、三つのことをまぜこぜにしちゃってるからだ」と書きました。

まぜこぜにしてしまった三つとは、下記です。

心の穴ができた原因

心の穴(と二村が名づけたもの)→ 感情や欲望の「くせ」、無意識に抱いてしまっている信念

心の穴が生むもの → 無意識の信念によって、ついやってしまう「当人にとって良いこと」と「当人にとって悪いこと」

ご指摘を受けて、こ

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ハーフタイム-B このまま死んでいくのかな……?(二村ヒトシ)

ハーフタイム-B このまま死んでいくのかな……?(二村ヒトシ)

石田月美さま

この連載での月美さんからの指摘に対して「俺のせいじゃないよ」とボヤきたいというか抵抗したい感情があります。俺は何に対して抵抗しているんだろう。

それと同時に「俺は俺の書いてきたこと、やってきたことの解像度をあげないと(てきとうなことを言ってないで自分の嘘を自覚していかないと)なにも変わらないまま、このまま死んでいくんだろうな」という感情もあります。

変わらないといろいろヤバい。

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ハーフタイム-A 二村さん、新しい恋愛論を!(石田月美)

ハーフタイム-A 二村さん、新しい恋愛論を!(石田月美)

二村ヒトシさま

前回の書簡では、二村ヒトシの真骨頂を見せていただいたようで改めて感服しております。変化を恐れず、誤りを認め、助けを求める。これは誰にとっても必要なのに、誰にでも出来ることではありません。その振る舞いを見せていただけたことが非常にありがたいです。私の方も、今まで以上に真摯に向き合った対話を心掛けねばと、身が引き締まる思いです。

そこで急なご提案で誠に恐縮なのですが、次から書簡の順

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対話3-B それはインチキ自己肯定かもしれません……(二村ヒトシ)

対話3-B それはインチキ自己肯定かもしれません……(二村ヒトシ)

石田月美さま

女性に向かって「君の心の穴がね……」と聞いたふうな分析を述べながらチンチンを勃てながら近づいてくる男性に対し、その女性が、

「そうやってチンチン勃てながら私の心の穴の話をしているのは、君が私を愛したいからではなく、私の性的魅力のせいでもなく、私を分析することで私に精神的に侵入して優位に立ちたいという君の心の穴のなせるわざだね。私じゃなくても女なら誰でもいいんでしょとは言わないけ

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対話3-A 二村さん、いいんですか?(石田月美)

対話3-A 二村さん、いいんですか?(石田月美)

二村ヒトシさま

前回、二村さんの書簡にて私の問題提起をまとめて頂き、ありがとうございました。折角まとめて頂きましたので、そちらを元に、更にわかりやすくなるよう今回は図を作って参りました。

私は二村さんの恋愛論に対して、「違和感」を覚え「痛み」を感じると、往復書簡の冒頭から述べてきました。また、この往復書簡が抽象的な物言いで終わることなく、実践的であるよう望んでいるというのは、互いの共通意見だと

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対話2-B 「心の穴」とは「心のくせ」なのかもしれません……(二村ヒトシ)

対話2-B 「心の穴」とは「心のくせ」なのかもしれません……(二村ヒトシ)

石田月美さま

月美さんが提示してくださった心の穴という言葉への疑問点というか、その問題点は、 整理すると以下のようなことなのかと思います。

1 「心の穴」とは何を指しているのか曖昧すぎる。ちゃんと定義してほしい。なんでもかんでも心の穴のせいということにしてしまうと、かえってわかりにくい。

2-1 「穴」と表現することは「欠落(心の不完全さ)」を想起させて、人によっては自責の念を抱かせる。自己

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対話2-A 二村さん、ますますわかりません!(石田月美)

対話2-A 二村さん、ますますわかりません!(石田月美)

二村ヒトシさま

二村さん、丁寧なお返事をありがとうございます。
ご自身の心の穴の話までして頂き、二村ヒトシの歴史を垣間見ることが出来たようで嬉しかったです。そして、多くの読者に長年愛され続けているのも当然だと思いました。

しかし、「心の穴とは一体何か」という疑問はますます深まったというのが正直なところです。

二村さんの丁寧なご説明に私の読解力が追いついていないのかもしれません。私はあまり広い

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