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映画「首」感想

 ずっと楽しみにしていた北野武監督の最新作映画「首」を観てきました。

 結論から言うと、最高の映画体験でした。

 北野監督作品はほぼ全部見ていて、「アウトレイジ」シリーズが大好きなのですが、軽々とその素晴らしさを超えてしまいました。

 以下、感想ですが、ネタバレやストーリーにふれる部分があるので、未鑑賞の方はご注意ください。


感動ポイント その1:異世界感がある

 今回一番感動したポイントは「我々の住むこの時代」と全く違う「異世界」を覗き見た感覚です。

 死生観と倫理観が現代人と違いすぎるため、日本を舞台にしていながら、まるで異世界です。
 
 信長は言うまでもなくイッちゃってますし、秀吉は敵将の切腹を「さっさと死ねよ」とどうでもよさげ。家康陣営は影武者を備品扱い。
 作中では割と常識人ポジションの光秀ですら、憂さ晴らしの処刑を娯楽にしています。
 作中で殺人に罪悪感を抱いたのは、茂助だけでした。人命が軽すぎます笑

 そもそも、戦国武将なんてものは人殺しや強盗のプロなわけで、アフリカで暴れているワグネルの10倍くらいたちの悪い集団なはず。
 美化して現代人風に描くことは間違っているだろ、といつも思っていました。
 我々の感覚では理解不能レベルの悪い奴らが跋扈している世界観がうまく作れていたと思います。

(余談)
 リアリティを追求しすぎて、物語として成り立たないのは論外ですが、日本の時代劇ってあまりにも現代的な価値観に寄せすぎていません? 
 お歯黒みたいな現代人からしたら違和感しかない風習はなかったことをする割に、喋り方だけ中途半端な時代劇語を喋らせる矛盾とか。 
 「首」では、時代劇語ではなく、ほぼ現代語で喋っていたのも好感がもてました。
 「拙者」とか「ござる」的な時代劇語って嘘っぽくて芝居臭くなるから嫌いなんですよね。
 

感動ポイント その2:あっけない死

 北野監督作品といえば、あっけない死のシーンですが、こういう由来があるようです↓

北野監督が初監督作『その男、凶暴につき』から34年、貫いてきたのが「“死”をドラマにしたり、劇場型にしない」というスタンス。北野監督は、死の演出について「アメリカの海兵隊がベトコン(南ベトナム解放民族戦線)を撃ち殺す映像を見た時のショックがスゴかったからだろうね。あれを見た時に、人が人をこんなに簡単に殺すのってありかよ? って思ったし、生きている人間が考える“死”と実際には呆気ない“死”の違いを痛感して」とベトナム戦争の影響を強く受けたと語る。
 「それもあって、初期の作品から“死”をドラマにしたり、劇場型にはしてこなかった。生死の問題はそれだけでものスゴいことだから、飾り立てない。 映画やテレビがよくやる大袈裟な“死”はその痛さや残酷さをかえって疎外していると思っていたので、ほかのどうでもいいシーンはこってりやって、“死”は呆気なく描く。そこは昔から変わってないね」

https://www.cinematoday.jp/news/N0140159

 「映画やテレビがよくやる大袈裟な“死”はその痛さや残酷さをかえって疎外している」
 名言ですよね。血色の良い若い女性がよくわからん病気でドラマチックな恋の末死んでしまう作品とか虫酸が走ります。死の感動搾取(造語)ですよ。

 ドラマチックな死を演出しようとした信長が、文字通りその途中でぶった斬られたところは、あっけないというか爽快でした笑

 現代を舞台にしてしまうと、人間の死が重いので「死」をブラックジョークにしたり、コントにしにくいと思うので、そう考えると死生観が軽すぎる戦国時代を選んだのは素晴らしい選択でした。

感動ポイント その3:秀吉がビートたけしすぎる 

 秀吉が「たけし軍団の殿・ビートたけし」過ぎました。

 「勘兵衛、なんとかしろ」「突撃して死んでこい」とか、秀長に小芝居させて裏で笑いを堪えてるところとか、わがままに無茶振りして楽しむところはたけしさんそのものでしたね。

 秀吉、秀長、勘兵衛の三人が揃うと漫才の掛け合いのようになるところも最高でした。 

感動ポイント その4:メンヘラすぎる恋愛脳武将

 物語の始まりとなった荒木村重の乱も、光秀を自分のものにしたい信長の嫉妬ゆえの村重冷遇がきっかけです(きっかけとなる出来事がしょうもないのは北野監督作品あるあるですね)

 その村重も天下を取る取らないの土壇場で「俺は妬くぞ」とか、「実は昔から好きでした」と光秀に言われて狂喜しちゃう信長とか。

 男らしさの究極みたいな武将が、メンヘラ恋愛脳な行動をしているギャップが最高でした。
 お笑いは落差やギャップがあればあるほど面白いので、さすがお笑い芸人でもある北野監督ですね。

感動ポイント その他

 衣装美術が素晴らしかったです。ただ、素人なのでどうすごいかは文章にはできません。

 合戦シーンは迫力はありましたが、予算の都合なのか、かなり誤魔化して撮ってるんじゃないかと思いました。妙に近い距離のカメラワークが多いというか。
 とことん、かっこいいゴジラを見せてやるって気合を感じた「ゴジラ−1.0」とは正反対に感じましたが、人間ドラマが主題なので気にはなりませんでした(逆にゴジラは人間ドラマが邪魔でした)

 「首」の良くなかった箇所は一つだけで、斎藤利三と服部半蔵の空中忍者バトルです。あれなんだったの…??あと、なかなか死なない般若の佐兵衛も草でした。

まとめ


 今年観た映画だと「怪物」が一番でしたが、「首」も素晴らしかったです。素晴らしすぎて、パンフレットと原作小説も買いました。

 アウトレイジ 最終章だけはややがっかりだったのですが、今後も北野監督作品は素晴らしい作品が生まれていきそうで楽しみです。

 (北野監督、サブスク解禁してください…)

 ご拝読ありがとうございました!

 追記:原作を読んで、2回目見に行ってきました。2回目を観終えての感想です↓




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