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【2024上半期】読んだ本・マンガなど【10選】

 2024年もちょうど半分過ぎました(2024年7月2日がちょうど折り返しらしいです)
 ということで、上半期に読んだ本・マンガで読んで良かったものを紹介していきたいと思います。



正欲

 「バキ童チャンネル」という芸人さんのyoutubeチャンネルがあり、そのなかで「魚がビチビチ跳ねる様に性的興奮する方へのインタビュー」という内容の動画があり、これが衝撃でした。

 その動画中で紹介されていたのが「正欲」という小説です。

 ネタバレしてしまうとまずいので、内容については割愛します。ただ、上記の動画のような人から理解されない性癖を持った方たちの物語とだけ。
 
 多様性が叫ばれて久しい昨今ですが、「理解可能な多様性」に焦点が当たる一方、「理解不能な多様性」「不快な多様性」に対してはどうでしょうか?
 そう問いかける作品でもあり、マイノリティのなかでもさらにマイノリティである人たちの孤独を描いた作品でもあります。

 マイノリティである人たちと書きましたが、「孤独」でありながら「繋がり」を求めるという行為は人間が生きていくさま、そのものでもあるので、自分と関係ない誰かの物語とは感じませんでした。

 とてもいい作品で、人生のベスト小説トップ10には確実に入る名作でした。内容はまったく違う小説なのですが、辻仁成先生の名作「海峡の光」を読んだ時とかなり似た感動がありました。

ニセモノの錬金術師

 こちら、「東京入星管理局」という面白い漫画を書いている窓口基先生がXで絶賛していたので購入。

 よくある異世界転生ものかと思ったのですが、そんなにゆるい作品ではありませんでした。

 もともとはKindleにて0円出版されていた作品だったようで、その原作を読んで驚愕。
 (原作は無料なので、興味を持たれた方はぜひ↓)


 ハンターハンターばりの大迫力頭脳バトル漫画であり、デスゲームものでもある異色作でした。
 ただ、原作はラフ画、ネーム状態で書かれているので、読みにくいし分かりにくいところが多々あります。
 それでもキャラの書き分けはキチンとされているし、最低限の状況が分かる構図にしてあります。「プロはやっぱすげえや」と思わせてくれる作品でした。
 漫画はストーリーとキャラが素晴らしければ絵は二の次でもよいのです。

 で、その素晴らしい原作を商業クオリティ(作画は原作者と別の漫画家さんです)でリライトされたのが本作です。

 あの名場面がこの作画クオリティで見れるのかと今から楽しみです。
 原作を鑑みると、たぶん3巻くらいからより加速度的に面白くなっていくと思います。

全員死刑

 実行した犯人一家4人全員が死刑判決を受けるという結末を迎えた、大牟田4人殺害事件。
 その加害者の一人であり、殺害実行犯でもある一家の次男が書いた手記です。加害者本人が書いているということで文章にライブ感があります。

 一家4人全員が死刑判決を受けた重大事件ですが、あっという間に4人もの人を殺害し、あっという間に全員捕まるという事件です。スピード感がとんでもないです。躊躇という言葉がありません。

 行動原理、思考の軌跡がメチャクチャすぎて、できの悪い漫画でももうちょっとマシだろうと思わされました。まあ、死刑以外ありえないよね…。

 胸糞の悪い事件というより、「どれだけ人間は短絡的になれるのか?」と、異世界人を眺めてる気分になりました。

 ちなみに、映画化もされています。ただ、内容や演出の面で著者と監督がかなり揉めたようで、いまも著者が怒っているそうです。


くらしのための料理学

その道40年、集大成にして入門の書。
私たちの一番身近にある「料理」。生きていくうえで欠かせないからこそ、毎日の食事を作ることにプレッシャーや負担を感じてしまう。しかし、料理の「そもそも」を知り、暮らしの意義と構造を知ることができれば、要領よく、力を抜いて「ちゃんとできる」ようになる。日本人は料理を、どのように捉えてきたのか。古来より受け継がれてきた美意識や自然観、西洋との比較などを通して私たちと料理との関係性をひもとく。料理を通して見えてくる「持続可能なしあわせ」「心地よく生きていくための道筋」とは何か。NHK「きょうの料理」でもおなじみの著者が、いまの日本の料理のあり方を考え抜いた末に提示する、料理と暮らしの新しいきほん。

商品紹介より引用

 レシピ本ではなくて、料理とは?人間とは?社会とは?といったレベルから優しく説いてくれる思想書というか哲学書というか、そういう本です。
 たとえば、洋食と和食の違い、それらが生み出された背景、なんかは非常に興味深かったですね。
 読んでよかった、意識の変わる良書でした。

 ただ、注意してもらいたいところは、この本は完全に土井先生の「思想書」なので、共感できない人にはまったく共感できない可能性があるということ。
 ネトウヨや日本ホルホル民ほどではありませんが、やや日本人を特別視する思想が感じられ、少しだけ違和感がありました(世界に類を見ない日本民族、みたいなやつです)
 あと、最初に書いた通り、レシピや料理に関する技術的な記述はほぼありません。

薩摩義士伝

 「棒を持った人が勢いよく飛び出てくる画像」で有名なマンガ。

 あのシーン、飛び出してきたのは実は下級武士で、示現流において猿叫と呼ばれる(ゴールデンカムイの鯉登少尉でおなじみ)気合を込めた声とともに木の棒で木を打ち込む鍛錬に向かうシーンです。
 鍛錬であるとともに生活の困窮によるキチゲを発散させるという意味合いもあり、ただのオモシロシーンではありませんでした。

 そして、本編もまた救いようのない悲しみに満ちた話です。

 江戸幕府が薩摩藩を経済的に疲弊させるべく、すさまじい費用と多くの人材を投じねばならない治水工事を命じるという実際の歴史をフィクションを交えて描いています。
 中抜き上級国民と虐げられる末端というのは日本の伝統なのかもしれません。

 圧倒的な劇画力と残酷な歴史の事実が合わさって、最高の作品になっています。

ほったらかし投資術

 私はかれこれ5年ほど投資しているのですが、もっと早くこの本に出会っていたらと思います。

 個別株とか、米国株とかいろいろ手を出してみましたが、結果を見れば歴然。投資信託が一番成績が良かったのです笑

 結論、投資対象をeMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)にするだけ、という話です。ただ、その結論に至るまでの解説というか理論が非常に勉強になります。

 五年経って、自分の投資結果を見るとこの本の言う通りだったなという感想です。

ガガガガ

来るべき未来など持ちえぬ現代(いま)、ただ、ここにある地獄こそが理想郷(ユートピア)だ! 「奪(ギ)られた薬(スリ)を奪(と)り返して来い!!」指令を受けた拳銃(チャカ)使い・ベニマルと正体不明の助っ人・レーイチが乗り込んだ最低の街・朧燈(ロートー)地区――。 無法ながらも勢力の均衡が保たれていたはずのその街は、とある新興勢力の台頭により、危険地帯と化していた! 頽廃(たいはい)した工業地区に巻き起こる、無法者どもの凄絶ブッ殺し合い!!

商品紹介より引用

 表現規制が今より遥かに緩かった時代の古き良き「ヤンマガ」です。長い休載や連載移籍などにより完結まで長い時間が掛かりました。
 私もリアルタイムで集めていたのですが、なかなか完結しないことに業を煮やし売ってしまい、後悔していました。

 いつだったか、電子書籍にて最終巻が出たとの情報を得て、また買い直そうと思っていたもののなかなか…。しかし、メルカリでふと検索してみるとプレ値ではない価格で出品されていて即買い。
 状態もよく、最高の買い物ができました。このマンガは装丁も凝っていて、カバーが新聞紙を薄くしたような紙で出来ていてこれが繊細なんですよね。

芸術的な装丁
カバー下も抜かりない


 出品者さんがきれいに保管していたようで、破れもほぼなし、日焼けも少しだけという良品でした。
「ドロヘドロ」というマンガもかなり装丁が凝っていて所有の満足感があるのですが、こちらもかなり満足感あり、かつアーティスティック。

 最終5巻は電子書籍のみというのが残念…。そして、全巻一気に読み直しましたが、ここまでハチャメチャなマンガだっけ?という感想。ここまで突き抜けたマンガは「世界一」と言っても過言ではありません

 クールジャパンといえば「AKIRA」とか「攻殻機動隊」のサイバーパンク系や「ジブリ作品」などですが、治安の終わっているヤンキー漫画も世界的に見て稀なジャンルだと思いますし、「ガガガガ」も世界に輸出しましょう。
 

貧乏ピッツァ

17歳でフィレンツェに留学。極貧の画学生時代に食べたピッツァの味が、今でも忘れられない――。トマト大好きイタリア人、ピッツァにおける経済格差、世界一美味しい意外な日本の飲料など、「創造の原点」という食への渇望を、シャンパンから素麵まで貴賤なく綴る。さらに世界の朝食や鍋料理、料理が苦手だった亡き母のアップルパイなど、食の記憶とともに溢れる人生のシーンを描き、「味覚の自由」を追求する至極のエッセイ。

商品紹介より

 マンガ「テルマエ・ロマエ」や「プリニウス」などでお馴染みのヤマザキマリ先生のエッセイ。
 テーマは「食」なんですが、読むだけでいろんな料理や食材とその歴史に詳しくなれる良エッセイです。
 そして、すべてのエピソードが実体験に基づいていて、彼女の面白い人生体験を垣間見せてくれます。

 軽妙洒脱な文章とはこのことかと思わされるサクサク読める文章とともに、「食は自由だ」と思わせてくれます。

ダンジョン飯

 今更ですが、アニメ化を期に一気に電子書籍版を購入。もともと紙の書籍で集めていたのですが、9巻くらいを境に電子書籍派になり、続刊を紙で買うか電子で買うか迷ったままでいたら、いつの間にか完結していたという…。
 物語をきれいに終わらせるってすごく難しいことだと思うのですが、ダンジョンの謎も解けて大団円のラスト。中だるみもなく、ずっと面白かったです。
 キャラクターそれぞれの掘り下げもけっこう深く、物語を通じての成長もしていて、とても良い。

 昔読んだ物語論の本に、物語は分解していくと意外と種類が少なく「行って帰って来る」「依頼を解決する」「変化を戻す」辺りに収束し、そしてその過程で登場人物の内面(ときに外面)に変化が起こる、みたいなことが書いてあって(うろ覚えですいません)、まさにダンジョン飯は全部盛りじゃんと思いました。

 アイデアもののギャグ漫画と思いきや、神話や伝説が語られていたって感じの壮大な物語でした。

殺人出産

「産み人」となり、10人産めば、1人殺してもいい──。そんな「殺人出産制度」が認められた世界では、「産み人」は命を作る尊い存在として崇められていた。育子の職場でも、またひとり「産み人」となり、人々の賞賛を浴びていた。素晴らしい行為をたたえながらも、どこか複雑な思いを抱く育子。それは、彼女が抱える、人には言えないある秘密のせいなのかもしれない……。

あらすじより

 あらすじからいきなり「あり得んやろ」のツッコミ待ちな世界観なんですが、そのあり得ないが現実になったらどうなるか?という物語です。

 4作品が収録されていますが、それぞれタイトルが「殺人出産」、「トリプル」、「清潔な結婚」、「余命」となっています。それぞれすべてが我々が住む世界と違う常識や倫理観・世界観になっています。

 考えてみると、殺人がタブーなのも、一夫一婦制も結構最近の話ですし、国や民族が違えば、それらも常識ではないわけです。

 小説もアニメもマンガも存在しない世界を描くことができます。
 私は「存在しない世界」を見ることができるからこそ、こういった創作物が大好きです。

 この作品も「ありえない」世界なわけですが、ありえないほど異世界感があっていいなと思うわけです。

 リアリティがない、という作品への批判がよくありますけど、リアリティ追求しすぎたらそれはもう現実じゃんと私は思う派です。

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