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理由と根拠の違いから考える本質【小論文の真髄】 ◆無料公開中◆ 

《概要》 

 一般的に普段の会話ではあまり違いを意識しないかもしれませんが、「理由」と「根拠」は大きな意味の違いがあります。特に小論文のみならず、プレゼンテーションやディスカッションでは理由や根拠の説明は非常に重要ですから、この機会にきっちりと頭に入れておきましょう。

 またそこから派生して、今回は英会話、英作文、また英語長文読解における「理由」と「根拠」の考え方についても詳しく解説しています。日本語と英語の両面から見て、相乗効果で使いこなせるように伝授していきます。

 さらに、【8】以降ではビジネスシーンにおけるケーススタディを通して、理由と根拠、エビデンスについて詳しく解説しています。ぜひご確認ください。


《主な対象者》  

対象度 ◎

 高校入試: 作文・小論文、英語

 大学入試: 小論文、ディスカッション、プレゼンテーション
       英語長文読解、英作文、英論文、英会話、口頭試問

 大学院入試: 小論文、ディスカッション、プレゼンテーション

 大学大学院: レポート作成

 就職試験: 一般就職試験、公務員試験、教員採用試験、医療系試験

 企業試験: 昇進昇任試験

 企業: ディスカッション、プレゼンテーション、ビジネスシーン


対象度 ○

 中学校入試: 作文・感想文




【1】 理由とは  

 「理由」とは「ある一定の事実や資料に基づいて行われる解釈や推論のこと」を表します。解釈や推論ですから、何かの事象に対して自分自身がどのように考えるのかという自分個人の判断を表しています。簡単な日本語で大きく分けて言えば「わけ」といったところでしょうか。
 例えば、「どうして電車ではなくバスで行ったの?」と尋ねられた時に「バスのルートには綺麗な桜の木が見える道路があるから」といった回答が「理由」「わけ」にあたりますね。自分個人としてどのような考えがあってその選択をしたのかという源になるものです。


【2】 根拠とは  

 「根拠」とは「原因となる客観的な事実や資料そのもの」を表します。何かの事象に対して世間一般的に見てどのように考えるのかという社会からの判断を表しています。簡単な日本語で大きく分けて言えば「証拠」といったところでしょうか。
 例えば、「どうして電車ではなくバスで行ったの?」と尋ねられた時に「この時間帯の電車は乗り換えが必要でその乗り換え時間を加えて考えると乗り換えが無いバスの方が短時間で目的地に行けるから」といった回答が「根拠」「証拠」にあたりますね。社会から見てどのような選択が合理的で最適なものなのかという事実や資料になるものです。


【3】 理由と根拠の相違点  

 これらのことから、理由と根拠の相違点はこのようになります。

理由 = 主観的解釈・推論
根拠 = 客観的事実・資料


【4】 小論文で重要なのはどちらか  

 小論文やプレゼンテーション、ディスカッションは、作文や感想文のように、個人的な経験や感情の蓄積を書いていくというものではなく、あくまでも自分自身の考え方に対して客観的な証拠を用いてその正当性を証明していくというものです。
 つまり、似たイメージを持つ「理由」と「根拠」の中で、小論文やプレゼンテーション、ディスカッションに必要なのは「根拠」の方だとわかりますよね。バスから見る桜並木が綺麗で、そのためにあえてスピードや確実性重視の電車ではなく桜の景色重視のバスを選択する、その「理由」についてはもちろん何ら問題がないわけですしとても素敵なことですが、それはあくまでも自由な自分自身の経験や感情を書いていく作文や感想文といった種類のものだといえます。小論文やプレゼンテーション、ディスカッションで必要なのは、自分1人に個人的に当てはまるものではなく客観性を保った証明ですから、経験や感情の話ではなく、一般社会においてどのような人でもある程度納得ができるような説明をしていく必要があるということです。


【5】 英語:Cause/BasisとBecause/Since  

 ここまでで学習してきた「理由」や「根拠」は英語でも異なる使い方をします。

 「理由」は英語では、reasonやcauseです。特に日本人はreasonを真っ先に思い浮かべるでしょう。ただこのreasonという言葉には「理由」「わけ」といった感覚だけでなく、「理性」や「道理」、「判断力」「思考力」「分別」といったように「理」という漢字を中心にさらに抽象的な大きな意味も含んできます。ですから「理由」といった日本語の感覚に近いのはむしろ「cause」の方かもしれません。つまり、「理由」は「原因」という、その結果に対する元=源を指すということです。
 そうです、「cause」だからこそ「because」という言葉に派生されるわけです。ですから、理由を述べるときの「なぜなら」は英語ではbecauseです。

 「根拠」は英語では馴染みがないかもしれませんが、basisやgroundです。basisはbaseですから、「基礎」を表し、groundはグラウンドですから、まさに「土台」を表します。話をする際の大前提となる「基礎・土台」のことを表している、つまり一般社会に共通する価値観を持って客観的な「根拠=根っこにある拠(よ)りどころ」になるわけです。
 そうです、こちらはもう基礎土台となる部分の前提の話をしていますから、原因を表すbecauseではなく起点を表すsinceやasです。since 2011 のように、「〜以来」といった意味のsinceについてはみなさんイメージができると思いますが、これはまさに事柄の起点を表していますよね。つまりすべてのベース、始まりの場所を指しているわけです。2011年という客観的などの人でもわかっている「年」という事実を起点として考えていくわけで、それがまさにこの「根拠(根っことなる拠りどころ)」に当たるわけです。

理由 = cause → because
根拠 = basis, ground → since, as

 このように考えるとbecauseとsince, asの使い方も「理由」と「根拠」から正しく選択できるようになりますね。


【6】 小論文で意識すべきこと  

 結局のところ、小論文やプレゼンテーション、ディスカッションにおいては「理由」ではなく「根拠」の方を強く意識して書いていく必要があります。ただし、これは「理由」の方を書いてはいけないということではありません。例えば、桜が綺麗だからバスの方を選んだという事例においても、桜の季節にその区間の電車利用率が大きく下がり、ちょうどその分のバス利用率が上がっているデータを手にしている場合、これは個人的な「理由」がスタートでありながらも立派に「根拠」にもなってきます。ですから、「理由」それ自体を書いてはいけないということではありません。あくまでも「根拠」は絶対に入れるように意識を強めておきましょうということです。「理由」に対して客観性を加えて「根拠」にすることもできるというわけです。

 小論文やプレゼンテーション、ディスカッションにおいてはまさにこの「根拠」という部分がコアになります。ただただ意見を述べるだけであったり、さらには他の意見を批判するだけであったりしては論文は成立しません。自分の意見が他者の意見と比べてどのようになっているのかという証明をする、まさにその「根拠」の部分が最も重要だということです。その部分を大切に学習を進めていきましょう。


【7】 志望理由書で意識すべきこと  

 上記のように小論文では基本的に「根拠」を述べていくことが何よりも文章の軸となります。それに対して志望理由書は、まさに今感じられているように「志望 "理由” 書」なわけで、こちらは「根拠」よりも「理由」の方を重視して書いていく必要があります。もちろん証拠資料を入れておいた方が説得力のある文章になり、読み手(採点者)としても納得のできる状態になりますから、「根拠」もしっかりと書けるに越したことはありません。しかし、志望理由書においてはそのような客観的事実・資料よりも主観的解釈・推論も重視されるということです。まさにそれは受験者の人間性や意気込みを検査したいという思いから来るものです。
 ですから、小論文と志望理由書は似て非なるもので、どちらもまったく同じような書き方で書いて良いというものではありません。その点はあらかじめ深く理解をしてから対策を進める必要があります。志望理由書はさらにその後の面接や口頭試問、ディスカッション等にも大きく影響を及ぼす重要な書類になりますから、適当に書くのではなくしっかりと適切な対策をして提出することを強くお勧めします。


【8】 ビジネスシーンでの「理由」と「根拠」  

 ここまでで学習してきた「理由」と「根拠」はまさにビジネスシーンにおいても非常に重要になってきます。なぜなら、企業の意思決定をする場面において主観での「理由」と客観での「根拠」では大きく戦略が変わってくるからです。ここで少し事例を使って考えてみましょう。

<事例>
弊社は製造業を営む会社である。新製品の製造ラインが稼動してから徐々に納期遅れが目立ち始め、営業部と製造部の責任転嫁が頻発し始めた。営業部は多くの注文を取り製造部に流したのだが、製造部としてはある程度の余裕は見込んでいたものの、それを遥かに超える受注数になっていた。もちろん営業部は製造部の生産能力情報を理解しているが、自らの給料を上げることに必死な営業部の社員はがむしゃらに受注することだけを考えている。

 この事例において製造部長が営業部長の管理責任を問い、社長に対して営業部長の交代を進言する場合、社長への説明において次の(1)と(2)でどちらの方が納得してもらえるでしょうか。

(1)
営業部長は以前からも非常に優秀な方で仕事熱心な方ではありますが、それが行きすぎてしまうためか、部下である営業社員に対するパワハラやモラハラにあたるような態度が散見されます。それが影響して営業部全体の雰囲気が悪く、社員がそれぞれ個人プレーに走っています。社員同士のコミュニケーションが取れているとは言えず、全員ががむしゃらに注文だけを取っているようです。製造部主催の交流飲み会にも営業部長は参加しません。

(2)
こちらの資料は社内で義務付けられている上司に対するアンケート結果です。この資料によると他部署との比較及び前部長時との比較において、現在の営業部の月別戦略会議時間が大幅に減少し、精神病で休職中の社員の割合が異常に高くなっています。またタイムカード及び経理部資料の分析によると営業部全体の残業時間は以前よりも大幅に増加しています。まさにこのアンバランスな状況は現営業部長の管理監督責任と言わざるを得ません。

 (1)では諸悪の原因が営業部長の人間性の問題で、それによって部の職場環境が悪くなっているため、営業部長を変えることで現状打破を図ろうとしています。それに対して(2)では営業部長の人間性の問題に起因する上司としての管理監督責任についてデータを用いて他部署や以前の営業部長との比較をすることにより、営業部長の不適格性を証明し、営業部長を変えることで現状打破を図ろうとしています。

 まさに(1)では「理由」を述べ、(2)では「根拠」を示しているわけですが、どちらの方が社長は納得をして営業部長の交代を意思決定できるでしょうか。もちろんそれは(2)ですよね。「確かにその通りだな」と社長に思ってもらうためには、個人での感情の蓄積である「主観的解釈・推論」ではなく、誰が見てもそうとわかる「客観的事実・資料」が必要だからです。

 特にこのようなビジネスシーンにおいては「唯一絶対的な正答」というものは存在しないと言っても過言ではないでしょう。営業部長を交代させればすべてがうまく軌道に乗って全問題が解決していくということは実際にはなかなかありえません。むしろ製造部長の方に問題があるかもしれませんし、ただただ営業部の社員が自分勝手な人間の集団だっただけかもしれません。そのように唯一絶対的な正答が存在しない前提で現状打破を図っていく際に、相対評価として何が問題でありどこにメスを入れるのが最も理にかなっているのかという事実を証明していくことが大切です。

 そのためには「理由」を述べること自体に問題はないものの、そこには必ず「根拠」つまり客観的事実・資料を提示しなければなりません。ビジネスシーンでよく言われるエビデンス(evidence)です。


【9】 英語:EvidenceとProofから見るビジネス 

 evidenceは「証拠」と訳されることが多いわけですが、「証拠」といえば英語でproofという言葉も出てきます。これらの違いは、

evidence = 「証拠」の中の1つ
proof = 決定的な1つの「証拠」

です。つまり、ビジネスシーンで言われるエビデンスはあくまでもevidenceであってそれだけでの絶対的な決定力であるproofは必要としません。だからこそ「エビデンス」と呼ばれるわけで、「プルーフ」とは呼ばれないわけです。ビジネスシーンにおけるこのような「根拠」は決定的な1つの証拠でなければならないわけではなく、あくまでも複数の様々な証拠資料を集めておおよその証明ができれば、それで社長の意思決定を促すには必要十分だということです。理系というよりも文系的な発想です。


【10】 小論文.comの受験対策・人材育成  

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