見出し画像

そこにあるのは、夢と憧れとロックンロール



私には憧れ続けているライブがある。
『横浜ロマンスポルノ'06~キャッチ ザ ハネウマ~』。ポルノグラフィティが初めて行ったスタジアムライブだ。2006年9月、横浜スタジアムで開催された。

私が彼らのことを知ったのは、それが開催される少し前のこと。私は当時小学5年生だった。(出会いについては話すと長くなるので、また別の機会に書こうと思う。)田舎で暮らす小学生の私にとって、横浜という街はとても遠い場所であり、もちろんそのライブには行かなかった。


中学生になって本格的にポルノグラフィティを好きになり、初めて買ってもらったのが、その横浜スタジアム公演のライブDVDだった。

===================


このライブは、私の中の伝説であり、青春だ。本当に何度も見た。どのくらいかというと、МCをそっくりそのままアテレコできるくらいだ。


ホイッスルの号令でスタートしたライブ、1曲目は『タネウマライダー』(曲名が最低で最高)。良く晴れた青空に伸びていく昭仁さんの長い長いロングトーン。初めてのスタジアムの舞台の上で、少年のように目をきらきらさせてギターをかき鳴らす晴一さん。


そこにいたのは、いかしたロッカーであり、憧れのステージにはしゃぐギター少年たちだった。夢の景色を見つめるふたりの姿は、なんだか眩しかった。


夕方になり、だんだんと空の色が変化するのに合わせ『夕陽と星空と僕』『何度も』といったしっとりとしたバラード曲が演奏される。完全に日が落ちる頃に演奏されたのは新曲『Winding road』。

美しいバラードたちの余韻に浸っていると、いつの間にか真っ暗になったスタジアムの空に光線のような光とドラムの音が響き渡り、『Report21』や布袋さんの楽曲カバー『POISON』などロックナンバーが続く。


スタジアムから見える空までが、ポルノグラフィティのライブの一部だった。強いて言うなら、めったにライブで演奏されないレア曲『天気職人』の歌い出しをすっぽり忘れてしまった岡野さんにだけはちょっとだけ不満だったけど、そのハプニングすらも愛おしく思えるくらいに、そのライブの全てが好きだった。


極めつけだったのは『プッシュプレイ』。スタジアムで歌われるために作られたかのような曲だ。


耳を塞いでる奴らにまで
聞こえるように馬鹿でかい音で
「その拳突き上げろ」と唄う
あのロッカー まだ闘ってっかな?

プッシュプレイ/ポルノグラフィティ



歌詞に出てくるスタジアムを熱狂させるロッカーとポルノグラフィティが、私のなかで重なった。私の思い描くロッカー像といえば、スタジアムでこの曲を歌うポルノグラフィティの姿となった。いつしか、横浜スタジアムでプッシュプレイを聞き、拳を突き上げることが私の夢の1つになった。


またこのライブを皮切りに、ポルノグラフィティはその後、度々横浜スタジアムでのライブを開催することとなる。彼らにとっても、横浜スタジアムは大切な場所になったことは間違いないだろう。


(ちなみに広島出身の彼らは広島カープの大ファンで、MCでごりごりのカープトークをしたり、カープコラボのグッズを販売したりしているので、いつか横浜DeNAベイスターズさんに怒られやしないかひやひやする。いつも暖かく迎え入れてくださっている横浜の皆さんはめちゃめちゃ懐が広いです。本当にありがとうございます。)


===================



そんな横浜スタジアムに私が初めて行くことができたのは、それから8年後のことだ。『神戸・横浜ロマンスポルノ’14~惑ワ不ノ森~』。1塁側の後方スタンド席だった。まだまだ残暑厳しい9月のはじめ、熱気のこもった客席に立ったときの感動は忘れられない。

大きな球場がたくさんの観客で埋まった光景は、上から見ると圧巻だった。広すぎるスタジアムでは、前の席と後ろの席で聞こえてくる音に時差があるようだった。波打つように拳が上がり、黄色い歓声が跳ね返るみたいになって聞こえてきた。初めてこの光景をステージから見た気持ちはどんなだったろう、と、8年前の横浜スタジアムの彼らに思いを馳せた。


そして、その2年後には『横浜ロマンスポルノ’16~THE WAY~』にも参戦した。ポルノグラフィティのライブとともに、横浜での楽しい思い出が増えていく。横浜は、私の大好きな街のひとつになった。


ただ、どちらのライブでも『プッシュプレイ』は演奏されなかった。


===================


その後、私が初めて生演奏の『プッシュプレイ』を聴くことができたのは、2019年に行われた、デビュー20周年記念の東京ドーム公演だ。ライブDVDに夢中だった中学1年生が、約13年の時を経て社会人3年目になり、やっと聴くことができた。


1曲目に演奏されて、まさかの事態に脳内が追いつかないまま、泣きながら拳を突き上げた。待ちに待った瞬間だったのに、舞い上がりすぎて、正直いまいち記憶がない。


20周年記念のライブは、演者と観客の思いがぶつかり合い、煽り煽られ、高め合うような素晴らしいライブだった。今まで何度もライブというものには足を運んできたが、歓声や歌声で地響きがするような体験をしたのは生まれて初めてだ。


ライブも終盤となり、本編ラストに演奏された新曲『VS』。20年歩んできた彼らの思いが詰まった曲だ。アウトロに差し掛かり、ああ、終わってしまう、と思った瞬間、聞こえてきたのは『プッシュプレイ』のイントロのフレーズだった。なんと最後にもう1度、ワンフレーズだけ歌ってくれたのだ。


最高のライブを演り切り、満員の東京ドームの真ん中で、金色の紙吹雪が舞い散るなか幸せそうに「あのロッカー、まだ闘ってっかな?」と歌うポルノグラフィティは、あの日の横浜スタジアムでの姿みたいに、きらきらと輝いて見えた。


彼らはまた一つ、夢の景色を見たのかもしれない。「私はこの姿が見たかったんだ」と思った。そこは東京ドームだったけれど、あの日の横浜スタジアムにも連れて行ってもらったような気がした。ポルノグラフィティは、私にも、夢の景色を見せてくれたのだ。



===================



私にとって、横浜スタジアムは、夢と憧れとロックンロールの詰まった、特別な場所だ。


なにやら禍が終わった日には、また横浜スタジアムでポルノグラフィティと一緒に大声をあげ、拳を突き上げたい。


#好きなスタジアム   S H O


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?