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【題未定】選挙を知らない若者の低投票率――教科書には載っていたが、君は読まなかった【エッセイ】

 先週の日曜日、衆院選の投開票日を迎えた。結果に関してこの場で議論するつもりはないし、政治的主張をするつもりもない。ただやはりある選挙上の問題に関してだけは触れておきたい。その問題とは若者の投票率の低さに関してだ。

 若者の投票率が低いことは明白な事実である。今回の衆院選の細かなデータは未発表であるが前回の第49回の衆院選のデータでは20代の投票率は36.50%と、全年代別で最低、一方60代は71.38%最高となっていた。20代の若者は3人に1人しか選挙に行っていない、そしてその逆が60代ということになる。明らかに若者の投票率は低いと言えるだろう。

 若者の投票率が低いことには複数の要因がある。一人暮らしで地域との関係が希薄であり政治が生活に結びついていないこと、公的扶助や福祉などの制度を利用する機会が少ないためなどが考えられるだろう。こうした当事者意識の無さが政治的無関心の原因であるのは間違いない。

 また家庭環境の問題もあるようだ。これは若者に限った話ではないが、SNSでは「親が選挙に行かなかったために行く習慣がない」という本人や知人の話を見かけることがある。確かに選挙に行かない親の姿を見て、日曜日に投票所へ行く習慣は身に着きにくいだろう。

 若者の政治参加は中長期的な政治課題であるのは事実だ。しかし一方で若者の政治的無関心を殊更に批判することもあまり気乗りしない。衣食住がとりあえず揃う時代において、自分の食い扶持だけを考えればよい人間が社会や政治に関心を持つ方が難しいだろうとも思うからだ。

 とはいえ、若者の政治的無関心に関して気に食わないことが無いわけではない。それはこうした若者の行動の理由として「学校で政治や投票について教えてもらってない」という発言をする人間の存在である。こうした人間は若者自身、あるいは彼らの擁護者の中にも存在する。

 まずもって確認しておくと、日本の教育制度において中学校では社会の中で公民分野を取り扱う。その中には当然ながら投票や選挙について学ぶ分野も含まれている。また高校では「公共」という科目を履修する。こちらはさらに深く政治制度について掘り下げる。

 こうした学校の授業や教科書はしっかりと聞いて学ぶだけでも選挙制度の確立から始まり、社会契約論、三権分立など現代における最低限の知識が獲得できるように作られている。例えば「直接国税を15円以上納める25歳以上の男子」とは日本における最初期の選挙権付与の条件であるが、この響きを聞いたことのない人は少ないはずだ。

 したがって、政治や選挙に関して学校で習っていないという発言は大きな間違いである。学校では学ぶ機会はふんだんに存在したし、それらの情報が載った教科書や教材も手にしていた。習っていないと主張する人間は授業を聞かず、本を読まずにいただけなのだ。そしてそうした怠惰な人が大人になり、候補者や政党を調べ、休日に投票所へ足を向けることもないだろう。

 若者の投票率が低いのは必然である。これを上げる工夫は必要であるが、高齢者よりも低いという前提に立った議論が求められるのも事実だ。むしろ何よりも解決すべきは学校で習ったはずの政治、選挙、民主主義に関してを習っていないから知らないと嘯く無責任な人間の方である。そうした他力本願な主張で自己正当化を恥じることのない人格こそ、投票しないことよりもよほど社会にとって害悪になり得ると危惧するのだ。

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