見出し画像

「高専」の魅力と闇


話題になる「高専」

最近、「神山まるごと高専」など、通常の中等教育機関とは異なるの独自教育を行う「高専」に注目が集まっています。

私自身も高校受験時に高専を選択肢に入れた時期がありましたし、今現在自分が中学生ならば高専へ進学する選択をした可能性はかなり高いと考えています。

カリキュラムやその独自性、高等学校の違いなどが魅力的に見えるからです。

では実際の高専とはいかなる場所なのでしょうか。

「高専」=「高等専門学校」

「高専」とは「高等専門学校」という日本独自の教育機関です。

高等専門学校(こうとうせんもんがっこう)は、後期中等教育段階を包含する5年制(商船に関する学科は5年6か月)の高等教育機関であり、学校教育法第70条の2により「深く専門の学芸を教授し職業に必要な能力を育成することを目的」として設立された日本の学校 。一般には高専(こうせん)と略される。 学校教育法を根拠とし「深く専門の学芸を教授し、職業に必要な能力を育成する」ことを目的とする一条校である。

知らない人に分かりやすく例えるならば高等学校に短大がくっついた5年生の学校、ということになります。

ただ、基本的には中等教育機関ではなく高等教育機関であり、大学と同じカテゴリーに分類されます。

そのため前半の3年間は制服がある学校も多く、一見すると高校のように見えますが単位の取得など大学に近いシステムを採用しています。

日本に存在する高専は2023年時点で58校(国立51・公立3・私立4)あり、そのほとんどは工業系の学校となっています。

これは戦後の教育改革において職業教育の充実を図ったこと、工業系の高度技術者を早期育成する狙いがあったためと言われています。

「高専」の魅力

高専の魅力は早くから専門的な学習を行えることです。

一般的な高校の場合、数学や理科などは文科省が指定した検定教科書を用いて学習します。

大学入試もこの教科書の範囲から逸脱することはないため、原則はその範囲内での学習と演習を繰り返し行います。

そのため受験勉強範囲内に学習がたこつぼ化してしまい、広がりのない学習に時間を使うケースが増えます。

一方で高専はあくまでも高等教育機関のため、そうした検定教科書は存在しません。

大学で学ぶような専門の教育の基礎教育を高校入学時点からスタートすることができるのは大きなメリットです。

実際、3年次に大学編入をした高専生とプロパーの学生を比較すると、専門科目の学力は高専生の方が高いことが多いようです。

こうした学習面以外にも、就職先が充実している、大学へ編入できる(一般的な大学入試をスルーできる)といったメリットは高専の魅力でしょう。

「高専」の闇

一方でその裏返しとしてデメリットも当然存在します。

こうしたデメリットは「高専」の闇などと呼ばれ、ネット上にも体験談などが散見されます。

その中で語られるのは主に以下の2点です。

  • 女子が極端に少ない

  • 単位の修得が厳しい

まず女子が少ないことに関しては工業系の学校であり、かつ技術職を志望する層がメインとなる学校であるため仕方ない部分があります。

とはいえ最近は女子の志望者も増加しているようです。

とはいえ、それでも半数以上は男子であるという状況は変わらず、これに抵抗を感じる方は進学すべきではないでしょう。

もう一つは単位に関してです。

高専の場合大学と同じで授業を受け、試験で60点以上取ることで単位を修得します。

普通高校のカリキュラムと比べても高度な専門科目を高校時点から学習し、その試験も高校内容と比較しても難しいと言われています。

数学の場合、線形代数などを大学に進学するよりも早く学ぶことになります。

そのため留年が一般の高校に比べてその率が高いことが特徴と言えるでしょう。

こうしたデメリットを知らないままに受験して後悔をする人が一定数存在するようです。

可能性のある形態

高専の最も大きな特徴は大学受験をしないで高等教育を受験できる点です。

高校受験が大学受験の勉強に際して無駄を発生させるのと同様に、高等教育を受けるに際して大学受験もまた大きな時間の無駄を作ります。

もちろん、その機会にしっかりとした学習習慣や基礎学力を定着させることもできるのですが、一般には大学受験の学力と高等教育や研究に関する内容は直接的にはリンクしません。

そうした点からも、一部のエリート選出機関となりやすい難関大学とは全く異なるアプローチで研究を発展させる土台が存在するのが高専と言えます。

日本の将来を考えた上で、こうした別ルートの存在は多様性を担保し、様々な成長の可能性を高める仕組みではないかと思うのです。

現在、高専進学者は一学年に1万人しかいない限られた選択です。こうした選択がより広がれば、日本社会成長の起爆剤の一つとなり得るのではないでしょうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?