「勤務間インターバル制度」は教員だけではなく、法整備を検討すべき制度

先日、永岡文部科学大臣の記者会見で教員に対する「勤務間インターバル制度」について検討する旨が触れられていました。

日本ではあまり普及していない「勤務間インターバル制度」という制度に関してまとめていきます。

「勤務間インターバル制度」とは

「勤務間インターバル制度」とは勤務終了から、次の勤務開始までの休息時間(=インターバル)を保障、確保するための規制です。

EU諸国では導入されており、11時間の規制が設けられています。

例えば前日に23時まで残業が発生した場合、翌日は10時まで勤務免除となり、仮に業務開始時刻が9時だとしても1時間の免除時間が発生するという仕組みになっています。

株式会社ワークライフバランスが2020年12月に「第2回働き方改革に関するアンケート」によると「勤務間インターバル制度」の効果は「有給取得向上」や「在宅勤務」よりも満足度や離職率に対してより有効である、という回答を得ているようです。

教員の業務に適合するか

この制度自体がワークライフバランスやウェルビーイングに効果が高いといっても問題無いでしょう。

では、果たして教員の業務に適合するのでしょうか。

給特法が施行され、現状も改正がなされていない理由の一つには教員が他の労働者とは異なる性質、働き方であるということがあります。

教員の仕事は個人の業務とスキルアップの境目が難しく、また業務管理をある程度自分で行えるという特徴を持っています。

そのため、民間企業の労働者と比較した場合、自由度が高く業務を時間で縛ることが難しくなりがちで、業務過多かつ残業手当無支給などが近年は問題化しています。

こうした点において、今回の制度は無理やり残業をさせない、という点においては効果は見込めるでしょう。

ただ、現在の学校現場(特に公立学校は顕著)では多くの管理職が労務管理を放棄しており、居残り残業や持ち帰り残業を許してしまっているという現状においてはどこまで政策の有効性が担保できるかは未知数です。

労務管理の厳格化、厳罰化とセットにしなければ、「勤務義務は無いが先生方の生徒への思いと善意で学校に来ている」という逃げ道を残してしまうだけでしょう。

業種ごとではなく、労働法規として一律の実施を行うべき

日本においては現在、この「勤務間インターバル制度」はほとんど普及していません。

厚労省の「令和4年就労条件総合調査」によると、勤務間インターバル制度の導入状況別の企業割合をみると、「導入している」が 5.8%(令和3年
調査 4.6%)となっています。

6%弱の企業しか導入していない状況を見ると、普及は道半ばでしょう。

しかし、民間へ努力義務を押し付けるだけで普及するとは到底考えられず、国の法整備による一律の実施は不可欠でしょう。2024年の4月からバス、トラックなどの運輸業界の自動車運転手に対しては「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」が改正され、11時間のインターバルが事実上の義務化となります。

こうした取り組みは医療業界でも行われています。こちらも2024年の4月から9時間のインターバルを義務化(一部努力義務)しています。

それぞれの業種や業界の取り組み自体を否定するつもりはなく、歓迎すべき改革でしょう。しかし個別の業種が改革を行っていくだけでは実効性が疑わしいのもまた事実です。

仮に特定の業界では基準時間を守れたとしても、立場の弱い業種や零細下請けなどに無理を強いることになりかねないからです。
(そしてそれは顕在化しない)

「勤務間インターバル制度」の一刻も早い法制度としての整備を望むところです。

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