見出し画像

全国学力テストの結果から見えた「英語を話す教育」の限界

全国学力テストの極端な結果が話題になっています。


「話す」試験の結果があまりにも悪い

英語の「話す」試験の結果は正答率12.4%、6割の生徒は全問不正解というあまりにも極端な結果となっています。

これは全国の中学校で実施された試験であり、試験のレベルは学習指導要領の内容に基づいて生徒が習得すべき力を測定するものとなっています。

にも拘らず、半分以上の生徒が全問不正解というのは習得状況が極めて悪いことを端的に示しています。

そしてこの結果が示すものは、試験問題の内容が難しかった、という単純なものではありません。

学習指導要領に示された内容通りに試験を行ったが、大半の生徒が全く身についていなかった、ということです。

つまり、指導要領の設定に大きな間違いや現状からの乖離が存在するということです。

「中学英語が難しい」問題

新課程が始まる前から英語の内容が難しすぎるのではないか、という指摘はありました。

文法事項、現在完了や受動態などは中3から中2へ、仮定法や原形不定詞、仮定法などは高校から中3に降りてきたことで、文法の学習事項が大幅に増加しました。

その上、話せる英語の習得を目指して原則、英語の授業は英語で、という形を中学校でも導入しました。

この方針がどう考えても一般の中学生には難しすぎるのは明らかですが、どうやら英語教育の専門家は全国で、一律で実施可能と考えたのでしょう。

そしてその結果がこれです。

試験を受けた6割の生徒が全問不正解。

中学英語を最低限学ぶという形式をとれる段階にいる生徒でさえ、全体の4割しかいないということなのです。

日常的に英語を使わない環境では教育効果は低い

日本において日常的に英語を使用しなければならない職業の人はそれほど多くありません。

日本の企業の多くは国内市場をターゲットとしたビジネスを行っています。もちろん国際市場への展開を行っている企業もありますが、中小企業や地方の企業では少なく、都心部に本社を構える一部の企業がほとんどです。

小中高生の場合は大人よりもさらに顕著で、基本的な教育は全て母語で学ぶことが可能です。

さらに世界でも少ない、母語で高等教育を受けることが可能(というよりも基本的には母語で高等教育を受ける)なため、日常に必要である、という切羽詰まった事情が存在しません。

すなわち、子供から大人までほとんどの人は英語を使わなくとも生活が成り立つ環境で暮らしています。

そうした環境の中で、英語を「話す」というスキルを高めることは英語の授業だけで可能とは到底思えないのです。

英語を使える、という能力の変化

さらにAIの普及によって英語を使うことの重要性は低下しました。

オンタイムでの翻訳も可能となる中で、果たして会話レベルの外国語の習得がどこまで意味を持つのでしょうか。

実際、英語を使う環境になりさえすれば多くの人は話せるようになる、というのは多くの人間が指摘する経験的事実です。

現状の日本の英語を使わなくても快適に暮らせる環境を崩してまで英語を使う環境を導入し、英会話スキルの習得を目指す価値があるのかどうか、私は疑問です。

今回の全国学力テストの結果から見えたことは、日本の現在の環境下における「英語を話す教育」の限界ではないでしょうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?