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「40-16÷4÷2」ができない大学生を笑うな、という話


「40-16÷4÷2」ができない大学生

SNSなどで一時期話題になったのが「40-16÷4÷2」ができない大学生についてです。

大学生の10人に1人が間違ったという話もあるようです。

このことに関しては多い言説がゆとり教育の弊害だ、というものです。

リンク先でもそこを切り口として論じているようです。

 「ゆとり教育」で教科書から四則混合計算が激減
 2002年から始まった「ゆとり教育」では、算数・数学に関して、内容、授業時間などが大幅に削減された。

この続きには教科書の記述に不十分があるなど細かい説明を加えていますが、主張としては「ゆとり教育」やそれ以後の算数教育をその原因としてとらえているようです。

またコメント欄の多くにもそれと同様のものが見られます。

「40-16÷4÷2」は簡単か?

大学生の10人に1人が間違うことを問題とする以上、この問いは難しくない、というのが前提条件として存在します。

しかし、果たして本当にそうでしょうか。

そもそもこうした複雑な計算はある一定の時期に集中して行っているだけで、年齢が上がってからも繰り返すものではありません。

当然ながら大学生だけでなく大人であってもこうした問題を間違う可能性は低くないはずです。

私自身、数学教員という仕事していればこそ自信をもって解答できますが、うっかりすれば手前の引き算に気を取られて後ろの割り算部分の順序間違いをする可能性は十分にあります。

教育が間違っているから、ではなく「勘違いしやすい」問題である

この問題に関してリンク先の著者は以下のように書いています。

それは、「40-16÷4÷2」の計算は間違っても、高校数学の多項式の微分積分は意外と多くができたことであった。

 それどころか、高校数学IIIの範囲である自然対数のeが関係する微分積分を分かっている者もいた。(リベラルアーツ学群には、文系・理系を決めることなく幅広く学んで入学してくる者が多くいる。)

 なぜ、こんなことが起きるのか原因を探ってみると、要するに、日本の算数教育の現状に問題があるという結論に至った次第である。

教育の問題でこうした間違いをしやすくなる、ということだそうです。

私は現在の算数教育に関して、掛け算の順番指導なども含めて懐疑的なスタンスですが、この問題の成否に関しては算数教育の問題として考えるべきか疑問に感じます。

私自身はゆとり一歩前の世代ですが、この問題は「勘違いしやすい」もので、どう考えても間違いを誘発させる意図があってのものだとしか思えないからです。

割り算が足し算引き算よりも優先なのは多くの人は分かっています。

しかし、割り算が二つ重なり、その直前に引き算を置かれると「勘違い」の可能性は格段に上がります。

恐らくですが、この問題を間違えた人の多くは、落ち着いて考え直せば間違いを訂正できるのではないでしょうか。

この問題への正しいアプローチは「勘違いしやすい計算は分数化すると間違いにくくなる」なのではないでしょうか。

$${40-16÷4÷2 \rightarrow 40-16× \frac14 × \frac 12}$$

このやり方であれば間違う可能性はほとんどなくなります。

もちろん算数の数式処理をしっかりとマスターすることに越したことはありませんが、次元の高いことを学ぶことで見通しをよくすることも算数や数学を学ぶ意味の一つではないでしょうか。

数学に興味がない、離れていく人々

残念ながら大人になってから数学を全くと言っていいほど利用しない人が世の中には存在します。

業務的な理由だけでなく、苦手感から機械任せにする人もいます。

そうした人を作らないようにするのが数学教育の意義であるのはもちろんなのですが、一方でそうした人たちは一定数存在するということを諦めることも必要だと感じています。

恐らく多くの人たちは数学や算数に興味がない、というのが実際のところなのでしょう。

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