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那須雪崩事故、引率教諭実刑判決に関わる雑感


那須雪崩事故、実刑判決

2017年3月、大田原高校の山岳部は茶臼岳での登山活動中に雪崩に巻き込まれ、生徒、引率教員を含む8名が死亡する事故が発生しました。

先日、この事故に関して部顧問であり、引率教諭の3名に禁固刑の実刑が下ったニュースが報道されています。

 公判では雪崩の予見可能性が主な争点となり、被告側は積雪は15センチ程度との認識だったとし「雪崩は予見できず、3人の行為と事故に因果関係はない」と無罪を訴えていた。
(中略)
雪崩に関する知識を持つ3被告は危険を容易に予見できたと指摘した。共同して危険を回避する義務があったにもかかわらず、事前に十分な情報収集をしないで漠然と計画を変更し、訓練の安全な範囲も明確にしなかった過失があったと認定した。

雪崩の予見可能性が争点となったようですが、教諭側の主張は認められず訓練計画の杜撰さからの過失であることが認定されたようです。

教員としての感想

この事件、そして判決に関して現役教員の立場からすると有罪は当然だろう、という感想しかありません。

私は登山活動に関しては全くの素人ですので専門的知識は持ち合わせていません。しかし雪山に入ること自体が命の危険を伴う行為であることぐらいは想像に難くありません。

自身だけで登山するならばまだしも、生徒引率を伴う部活動においては最大減に注意を払う環境下であると考えるべきです。何もかも教員が悪かった、というつもりはありません。しかし事故当日は天候が荒れており、練習内容を変更し支尾根での歩行訓練であったとしても危険性を軽視したとしか見えません。

この事故に関して検証委員会報告書でいくつかの指摘がなされています。連絡体制や通信機器管理の不備、緊急連絡体制の未整備などがその中に上げられています。

正直なところ、教員側の本件において庇うような言説は難しいでしょう。

部顧問制度の問題

とはいえ部顧問制度の問題が存在するのも事実です。今回、禁固刑の判決が出た教員は登山経験者ということですが、事故の犠牲になった教員は登山の素人だったということです。

こうした登山、山岳部などの専門的な知識が必要な部活に対して素人の教員が顧問についているというのは明らかに異常な事態です。

しかも付け加えてこの人事に対する責任を校長や教育委員会などが責任を負っていないというのもその異常性を顕著に表しています。

少なくとも人死にまで出している案件に関して、人事権者がその責任を負っていないというのはあまりにも理不尽でしょう。

進まぬ地域移行

部活動の地域移行の話題は全国的に問題となっていますが、目下のところ高校部活動は蚊帳の外です。

あの議論は主に中学校を中心とした話題であって、高校のことを念頭にしたものではありません。

しかし本件のように知識や経験のない教員が望まぬ部活動の顧問になり、事故によって処罰を受けることが表面化すればますます部活動顧問の引き受けてが減少するのは間違いないでしょう。

在籍する生徒の活動の充実以前に、安全性を担保するためにスポーツ指導の専門家の育成と充実、部活動への配置を進めるべきではないでしょうか。

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