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東京都スクールカウンセラー「一斉解雇」問題に見る雇用制度問題と、文科省と教育委員会の教諭職以外の軽視の姿勢


東京都スクールカウンセラーの一斉解雇

東京都は本年度末に都内のスクールカウンセラーの3割を解雇するニュースが流れています。

今回の問題の原因は東京都が2020年度より会計年度職員(単年度採用の非常勤職員)の雇用に関して、連続で「公募によらない任用は、4回を上限とする」という規則を設定したためのようです。

しかし、記事によれば往々にして多くの自治体では回数をリセットし、再度1回目という形で公募、任用の手続きを踏むようですが東京都の場合は一斉解雇をして3割程度を入れ替える予定になっているとのことです。

また採用、不採用を決める基準も不明確であり現場からも疑問の声が上がっているとい記事にはあります。

学校における会計年度職員制度

学校組織において、そこに勤務する職員は永続的に雇用される正規職員とその年度のみの限定的雇用となる会計年度職員の二種類に分けられます。

正規職員は基本的に定年時まで永続的に雇用が確定した職員であり、いわゆる日本的終身雇用制度で働く職員です。

一方で会計年度職員はその年度のみの採用となる職員で、臨時採用ともよばれ、常勤講師、非常勤講師などの職位が存在します。

今回のようなスクールカウンセラーもまた会計年度職員となっています。

現在の学校システムは正規雇用の職員だけでは人員が圧倒的に不足しており、それを補うために用いられるのが会計年度職員です。

特に病休や産休など、現場での人員の不足を補うために用いられる制度となっています。

会計年度職員頼みの学校現場

上述のように、現代の学校においては会計年度職員の存在が不可欠です。仮に会計年度職員がいなくなってしまえば現場は大混乱に陥ると言ってよいでしょう。

そもそもがどうして会計年度職員が必要なのでしょうか。

十分に正規職員を雇い配属をさせておけば単年度契約の職員が必要という状況はそこまでないはずです。

しかし公務員の場合、一度採用すると定年まで解雇が難しいため大幅に増員をするというのが難しいのです。

また学齢が一律で決まっている学校という制度の場合、小学校、中学校の入学者は出生数から正確に割り出せるため、現在において必要だからと採用数を増やせば、十数年後には人余りになるのが目に見えています。

したがってその雇用の調整弁として会計年度職員を活用しているのです。

現在、全国でも問題になっている教員不足に関しても、実際には1倍を切っているところは無く、正規の教員自体は不足していません。

不足しているのは正規教員の代替要員であり、雇用の調整弁としての会計年度職員なのです。教員志願倍率の低下はこの会計年度職員の数に大きな影響があるために教員不足が顕在化したということになります。

正規教諭以外の軽視

学校教員の世界において、公立学校の正規の教諭は非常に恵まれた労働条件の下で働くことができます。

もちろん本来受け取るべき残業手当を受け取っていなかったり、部活動などの業務を時間外に抱えたり、様々なクレーム対応などの問題は存在しそれらを改善することは急務ではあります。

しかしそれ以上に会計年度職員である常勤、非常勤講師やスクールカウンセラーの雇用環境、勤務条件は劣悪です。

今回のスクールカウンセラーのような例もありますが、産休や病休代替の場合は中途半端な時期で契約が終わってしまったり非常に不安定な労働環境におかれています。

そして弱い立場であるこうした非正規職員を守るどころか、使い潰し、その存在を軽視しているのが文科省であり教育委員会なのです。

正規教諭を叩くのではなく

こうした非正規職員の扱いを例に上げて、正規教諭は恵まれている、残業代のことを言うなんて贅沢だ、といった批判をする人がいます。

しかし、そうした足の引っ張り合いの結果こそが現代における教育崩壊、採用試験の志願倍率の低下の原因ともなっています。

正規教諭と非正規職員の職務をしっかりと分別し、労働法規を順守した上で、教諭職以外の正規化や地位向上を目指す必要があるのではないでしょうか。

家庭環境や役割、地域との関わり方が昭和、平成と大きく変わりつつある現代において、スクールカウンセラーとスクールソーシャルワーカー、養護教諭の増員や常勤、常設化が現代の学校における最優先事項ではないかと思うのです。

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