「Kumamoto Education Week」で部活動の話が出ないという欺瞞
「Kumamoto Education Week」
この記事がアップされるであろう1月の下旬、1月20日から28日までの一週間、熊本市では「Kumamoto Education Week」なるイベントが市内の各地で行われています。
このイベントは今回で3回目で、熊本市の教育委員会が主催して熊本市のこれからの教育、あるいは日本の教育について専門家や子供たちの意見を交えて話し合い、その内容を共有しようという試みです。
ほとんどの内容がオンラインでも配信されており、ライブだけでなくアーカイブとしても視聴することが可能です。
このイベントだけを見れば熊本市は輝かしい未来と希望にあふれた学校環境が実現しているのではないか、と認識する人もいるのではないでしょうか。
室伏スポーツ庁長官、来熊
イベントの中にはゲストを読んでの特別授業の開催などもあったようです。
熊本市立向山小学校では室伏広治スポーツ庁長官が先生として特別授業を行ったようで、その動画もアップされています。
さて、ここで気になるのはスポーツ庁と部活動の地域移行に関してです。
スポーツ庁は近年、文科省に代わって部活動の地域移行推進を行ってきました。
上のリンク先のサイトを見れば一目瞭然ですが、スポーツ庁は地域の部活動指導者が競技指導を行うなど地域が主体となった活動を推進する立場なわけです。
そのスポーツ庁の長官が来たとなれば当然ながら部活動に関するディスカッションなども当然企画されているはずです。
部活動に関する話が…ない?
アーカイブとして挙がっている企画ページと動画、それにこの後に行われるディスカッションなどを見ていきます。
「お金の教育」、「新時代の教育」、「夢がふくらむ学校づくり」、「幸せな学校」、「家庭学習」、「まちづくり×教育」様々なお題があげられています。
私もその中のいくつかは視聴しましたし、学ぶことも少なくありませんでした。
しかし、これらのどこを探しても肝心な話題、昨今熊本市の教育行政における大きな話題の動画が無いのです。
部活動の話題と熊本市では部活動を地域移行しない、という話がです。
熊本市は部活動の地域移行を行わない
これは以前記事にも書きましたが、熊本市は「部活動改革検討委員会」なる教育長の諮問機関によって部活動を学校教員が現在の形で継続するという方針がすでに打ち出されています。
この方針は明らかにスポーツ庁のサイトや広報で示されている内容とは異なるものです。
今回の「Kumamoto Education Week」なるイベントで、この点についてのディスカッションを行うのではないか、と考えるのは極めて自然でしょう。
まして地域移行を推進する官公庁のトップが直々に熊本市を訪れているのです。
熊本市の部活動継続方針に関しての激論が室伏長官と遠藤教育長の間で交わされるだろうと期待するのは自然なことでしょう。
しかし、無いのです。どこにも。
それどころか、今回のイベントでは部活動(特に負の側面)の話をする場所すら一切存在しないのです。
方針に自信があるのならば表に出て話すべき
私は部活動地域移行に賛成ですし、受益者負担は当然だと考えています。、部活動指導者には相応の謝礼や手当を出すべきでというスタンスですし、その業務を教員の奴隷労働で賄うべきではないという立場です。
しかし当然ながらそれに反対の意見もあるでしょう。現行の部活動環境が生徒たちにとって理想的であり、教員の労働条件よりも子供たちの部活動を優先すべきである、という意見などはその典型です。
こうした意見の対立がある話題だからこそ、部活動改革検討委員会の委員は、市民の前でその是非について議論すべきだったはずです。
教員の8割近い人が「したくない」と答えるものを現行のまま存続させるという方針をとる以上、公の場で説明をするべきです。
しかし、どうやらそのつもりは熊本市教育委員会にはないようです。
結局のところ、この「Kumamoto Education Week」なるイベントが市教育委員会の見せたいものだけを見せる見本市に過ぎないことが露呈したということなのではないでしょうか。