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教員の不祥事と犯罪率について

教員の不祥事、特にわいせつ目的などの不祥事が多発しています。

こうした事件報道は後を絶ちませし、この手のニュースが報道されるたびに
「教員は犯罪者集団だ」といった論調で糾弾するコメントなどがSNS上で散見されます。

さて、では実際に教員の犯罪件数は多いのでしょうか。

教員の犯罪率は極端に少ないが…

以下は明星大学の須藤准教授のまとめた資料からの引用です。

教師の犯罪率とその推移 同年齢集団との比較から 須藤 康介 (明星大学)

あきらかに検挙人数から割り出した犯罪率は少なく、一般人と比較すると1/5となっています。

10年前というやや古いデータではありますが、若年層の教員が少ない状況を考えると、そこまで極端に異なる結果とはならないでしょう。

このデータを見る限りにおいては教員の犯罪率は極めて低い、という結論は間違いないと言えます。

性犯罪率が他の犯罪と比較してやや高い

この結果自体は須藤准教授も論文の中で認めていますが、一方で性犯罪率の高さについても言及しています。

教師は極めて犯罪を起こしづらい職業と言える。凶悪犯罪も同じく一般の5分の1以下、しばしば報道される性犯罪も一般の半分以下である。誤解を恐れずに言えば、性犯罪は、周囲に若い異性が多くいる人ほど、起こしやすい。したがって、教師は「環境として」性犯罪が発生しやすい状況にいることは否めない。にもかかわらず、一般の半分以下に発生率が抑えられていることは注目に値する。

教師の犯罪率とその推移 同年齢集団との比較から 須藤 康介 (明星大学)

教員という職業の特性上、若い異性が多いため性犯罪率は増加します。

これは異性が多い環境では誰しもが性犯罪を起こしやすくなる、ということではなく性犯罪傾向のある人間が犯罪にいたる行動をとってしまう可能性が上がる、ということです。

逆に言えば、どんなに性犯罪傾向の高い人間であっても、周囲に異性(あるいは同性かもしれませんが)が少なければ、性犯罪を起こす可能性は低下します。

とはいえ、全体としては教員の一般人と比較して犯罪率は1/5と極端に低いが、性犯罪率は1/2とそれと比べると高い、ということになるでしょう。

犯罪は増加しているか

では、近年になって教員の犯罪は増加しているのでしょうか。

以下のグラフは同じ論文からの引用です。

教師の犯罪率とその推移 同年齢集団との比較から 須藤 康介 (明星大学)

性犯罪率はやや増加傾向にありますが、それは一般人も同様であり、この辺りは性犯罪のカテゴリーが広がった(セクハラの社会問題化や児童ポルノ所持の違法化など)ためではないか、という分析がなされています。

いずれにしても少なくとも10年前の段階では教員の犯罪が増加傾向にあるとは決して言えないのは明らかでしょう。

2023年現在についてはどうか

残念ながらここ数年まで含むデータや資料を私は見つけることができませんでした。

そのため、ここ10年の犯罪率の増加に関しては不明です。

ただ、不祥事数が増えているというのも微妙なようです。

これは埼玉県のデータになりますが、近年の公立教職員の懲戒処分数のデータです。

教職員の懲戒処分増加 埼玉県教委が「研修プログラム」

目に見えた増加傾向は一切見られず、少なくとも同県内においては増加傾向にはないようです。

以上からも、近年の教員不祥事が増加しているという結論を得ることは難しいようです。

しかし、地域社会や保護者からの評価など権威を失った教員という職業は以前よりも厳しい視線に晒されていることは間違いありません。

さらに言えば、コンプライアンスを重視する空気が日本社会にも広まったことで犯罪や不祥事の定義も拡大しています。

しっかりと襟を正すと同時に、時代に即した仕事のやり方を常に意識する必要があるようです。

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