教員免許の2種を4年制大学に拡充するより、教育実習を無くす方が免許取得のハードルは下がるのではないか
小中学校の教員不足が問題となる中、文科省はまたもやピントのずれた施策を思いついたようです。
従来は4年制大学では1種免許しか認めていませんでしたが、これを短大などで取得する2種免許の取得を可能とし、取得単位数を減らすことで免許取得者を増やすことを狙ったようです。
インセンティブの低さがそもそもの原因
教員不足の根本的な問題はそもそもが、教員という職業のインセンティブの低さに原因があります。
長時間労働、残業代無し、無償の部活動休日出勤などコンプライアンス軽視の姿勢や、保護者対応や形式的な提出書類など増え続ける業務、増加する負担とは逆行するように低下する職業ステータス、権威、社会的信頼性。
いかに終身雇用が約束されていたとしても、若い人が望む職場でなくなっているのは明らかです。
まずもって解決すべきは根本的問題であり、免許取得の要件を下げたから効果的だとは到底思えません。
免許取得の最大の負担は「教育実習」
実は教員免許取得の最も大きな負担は、取得単位数の量ではありません。
私自身、実際に取得したときのことを考えても、日本国憲法や教科指導法、教育学概論といった教職単位の取得の手間は確かにありました。
しかし、決して真面目とは言えない私のような学生でも、それほど苦労をすることはなく単位を揃えることは可能でした。
(教職科目の担当である教育学部の教官は「君たちが免許をとると教育学部の学生が試験に受からないから困る」と嫌味を言っていましたが。)
免許取得の最も大きなハードルは実は「教育実習」です。
教育実習は1年前に内諾をとり、その後通常は大学4年の6月ごろに2~4週間、実際の学校現場で実習を行います。
実習時期は受け入れ校の都合で決まりますし、この間は就職活動も原則禁止されます。その前後にも事前説明や事後指導など拘束される時間が少なくありません。
理系の場合はこの間の研究が滞りますし、文系の場合は就職や論文スケジュールに影響が出るため、大きな負担となります。
加えて、小中学校の教員免許は介護実習体験が1週間加わります。
こうした実習が免許取得のハードルになっているのは間違いありません。
ちなみに、民間企業で働いている人が教員免許を取得する場合も、この教育実習は大きなハードルとなります。通信大学で免許を取る場合でも実習をする必要があり、実習先を自分で探す必要があるケースも多いため、働きながら免許を取得するのは非常に難しくなっています。
このハードルを取り払い、「教育実習」を無くすことが一番の免許取得者増加に寄与するのではないでしょうか。
(これに加えて、理科の教員の場合は「実験単位」が大きなハードルになっています。理学部の場合、専門以外の科目の実験授業を3種類取る必要があり、これが原因で免許取得を断念した知人が多数います。)
教育実習無しで現場に立てるのか
この主張に対して、「教育実習なしで教壇に立っても務まるのか」という反論が当然想定されます。
しかし、これについての回答は一つです。
「教育実習ありで教壇に立っても務まるわけがない」
ということです。
教員の仕事は多岐にわたり、2週間そこらの実習で何かが変わるわけがありません。
多くの一般企業は入社後に、OJTなり、研修期間を設定して社員を教育します。
ところが、学校は学生時代の教育実習しかしていない新卒教員を生徒の前に一人で立たせています。
この状況は極めて異常な事態です。
そもそも公立の場合、1年目は基本的に試用期間と定められています。試用期間の職員に十分な教育もせずに、ベテランと同じ立場で顧客の前に立たせる業界は学校以外に存在しないのではないでしょうか。
優先順位はあくまでも待遇改善が上
こうした参入障壁を下げること自体は決して効果が無いとは言えないでしょう。
しかし、根本的な解決としては待遇改善が優先すべきであるとは思います。
参入障壁を下げることは、流入する人材の「質」の低下も十分に考えられるからです。
とはいえ、現状の人材不足を解決するという意味では、最も免許取得のハードルとなっている「教育実習」制度にメスを入れるべきだとは思うのです。
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