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大学の歴史を調べてから大学を選ぶという進路学習:旧帝国大学編

日本に始めて大学ができたのはいつごろでしょうか。

おそらく東大が最も古く、明治時代だということは見当がつくと思いますが、詳しく調べている人はどれほどいるでしょうか。

私は高校で進路指導をしていますが、実際に大学の歴史を調べてまで進学先を考える生徒はほとんどいません。

ところが、稀にそうした歴史を調べる生徒がいることがあります。

その生徒が間違いなく志望大学に合格する、とは言えませんが歴史を知ることでモチベーションを高めて学習に臨むということは多いようです。

特に日本の古い大学や学制は国家発展の歴史とリンクしており、近代日本の軌跡を辿ることで視野が広がる学びにもなると思い、私は生徒にこうした大学の歴史を調べることを勧めています。

帝国大学の歴史

日本で最も古いのは想像の通り東京大学です。その設立は1877年(明治10年)になり「東京大学」という名称で発足します。

その後1886年(明治19年)に帝国大学令に基づいて「帝国大学」と名称を変更します。

この名称変更からも、明治政府がとりあえずで見様見真似で作った大学から、欧米に伍する国家をけん引する人材の育成を目指す方向に舵を切った様子がうかがえます。

1897年(明治30年)に「京都帝国大学」が設立され、「帝国大学」は「東京帝国大学」とさらに名称を変更します。

そして、この後1939年(昭和14年)の名古屋帝国大学の設立まで、全国に帝国大学は設置されていきます。

  • 1886(M10)  東京大学→帝国大学→東京帝国大学

  • 1897(M30) 京都帝国大学

  • 1907(M40) 東北帝国大学

  • 1911(M44) 九州帝国大学

  • 1918(T7) 北海道帝国大学

  • 1924(T13) 京城帝国大学

  • 1928(S3) 台北帝国大学

  • 1931(S6) 大阪帝国大学

  • 1939(S14) 名古屋帝国大学

この設置順を見るだけでも様々なことが読み取れます。

京都帝国大学を設置まで20年の時間がかかっているのに対し、京都から東北までは10年、その次の九州までは4年であることから、東京一極集中の中央集権制がある程度確立したのち、国土の均等開発へ移行したということなのでしょう。

その後は北海道、朝鮮半島、台湾と外地へと開発の方向性を移行しています。

大阪、名古屋は関東大震災による人口移動と重工業化の産業移行に伴う高等教育機関の設置と見ることができます。(いわゆる大大阪時代)

これらの2つの帝国大学は理、工、医学部という文系学部を設置していませんでした。

大学の歴史を学ぶことで学びの意欲を高める

その後、第二次世界大戦の激化で大学設置は頓挫し、以降は戦後の学制改革を待つことになります。

このように日本の大学設置の歴史は国策と常にリンクする関係があり、近代史と密接に関連しています。

今回は旧帝国大学に触れましたが、日本の多くの大学の多くは非常に興味深い歴史を持っています。

もちろん、こうした歴史に興味がある生徒であれば、という前提ではありますが、進路学習において進学意欲を高める効果があるのではないでしょうか。

大学を選ぶということは自分のやりたいことを探すという意味もありますが、それと同時にどのように社会に貢献するかという方法を模索する側面も存在します。

その場所がいかなる目的で建てられ、輩出した人材がどういった貢献を社会にしてきたかを考え直すのも進路学習ではないかと思うのです。

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